虚無の世界
無。
―ここには何があったの?
隣の女はそう言った。
―ここには何も無かったのだよ。
俺は笑ってそう返した。
―なんで何も無かったの?
隣の女はまた聞いた。
―ある必要が無かったのさ。
笑みを絶やさずそう返した。
―なんで必要が無かったの?
隣の女はしつこく聞いた。
―さあ、わからないな。
俺はおどけてそう返した。
―そうなの。
それっきり、隣の女は黙った。
俺達は静寂に包まれる。
何の音も聞こえず、ただ、立ち尽くす。
―なんであんたはここに来たんだい?
堪えきれず、そう聞いた。
―星に導かれて。
女はすぐに、そう返した。
―あんたは星が、好きなのかい?
少し気になり、また聞いた。
―大嫌い。
女は吐き捨てるように、そう返した。
―なんでそんなに嫌いなんだい?
しつこく、聞く。
―私をこんな所に導くから。
女は髪を弄りながら、そう返した。
―そうかい。
俺は、口を閉ざすことにした。
再び、世界から音が無くなる。
静寂は、俺と女を引き離していく。
ふと、隣を見る。
そこには、誰も居なかった。
読了に感謝を。