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旅立ち

「いやですね。最初に言ったじゃないですか。私は暁さんに『神様になりませんか?』と言ったんですよ」


 リースの言った言葉に、俺は呆然としてついつい口から言葉が漏れてしまった。


「はぁ!?」


 俺が予想していた異世界に行くという展開よりも、さらにとんでもないリースの言葉にたまらず大声を上げてしまった。


「ちょっとまて! 神様になるってどういうことだ! そんな簡単に神様になれるものなのか! それになんで俺なんだ!」


 俺の続けざまの質問に対してリースは説明を始める。


「まあまあ、落ち着いてください。ひとつずつ説明しますから。まずは神について説明しましょう。私、全能神リースが神のトップの存在です。そして私の下に上級神と呼ばれる存在がいます。上級神は皆、一芸を極めた者たちですね。たとえば武術神や料理神、音楽神、恋愛神などがいます。」

「神様はリースだけじゃないんだな」

「そうですね。上級神は私の直属の部下といった感じです。そして上級神の下に下級神がいて下級神は一人が一つの世界を管理しています」

「リースの話を聞いて神様についてはわかった。でもなんで人間の俺が神様になるんだ?」


 俺の当たり前の質問に対してリースはにこりと微笑んで答える。


「下級神のほとんどは元人間です。上級神も数人は元人間という神はいます。管理する世界は多く、神はいくらいても足りません。なので神は常に募集中なんです」


 アルバイトを募集する感覚で答えるリースに俺は思わず突っ込んでしまう。


「いやいや。だからってなんで俺なんだよ!」

「暁さんが選ばれた理由は全部で2つあります」


 そういってリースはピースサインを作り説明を始めた。


「まず一つ目は暁さんの魂が神になれる素質があったからです。神になれる素質のある魂は約50億人に1人ぐらいの確率でいてそれが暁さんでした。そして二つ目が無宗教だった。この二つですね」

「一つ目はわかった。俺が運よく50億人の中の1人に選ばれたわけだな。だけど二つ目の無宗教ってのはなんだ? 確かに俺は無宗教だがそれが神になるのに何が関係あるんだ?」


 他の神を信仰していたら神様にはならないのかな。など考えていた俺にリースは答える。


「たとえば、自分が信仰していた神様がいない。もしくは下級神だった場合、信仰の強い人ほど私たちのことを受け入れないことが多いんですよ。信仰のほとんどはその地に住む人々が勝手に作ったもので、私たちは全く関係ないことって結構あるんですよね」


 無宗教の俺にはあまり分からないが、自分の信仰の対象が存在しないと言われたらかなりショックなのかもしれない。


「なるほどな。俺がここに呼ばれた理由はわかった。それでもし俺が神になると言えばそのまま神になれるのか? それとも何か神になる試練みたいなのを受けないといけないのか?」

「なかなか乗り気ですね。暁さんの言った通りまずは試練を受けてもらいます。なかなか厳しく長い道のりですけどね」


 リースの厳しいという言葉に少し緊張してしまう。

 俺は普通の人間で、普通に働いて生きていた。そんな俺が厳しい訓練や痛みが生じるような特訓を耐えられるとは思えない。もし無理そうなら速攻で断ろうと思いつつ、リースに試練の内容を聞いてみる。


「試練の内容とは、暁さんに異世界に転生してもらいレベル1000を目指してもらうことです!」

「異世界に転生ってことは異世界に行けるのか! 異世界ってどんな感じの異世界なんだ? 魔法はあるのか? どうなんだリース?!」

「え?! そっちなんですか! レベルのほうには驚かないんですか?!」


 異世界に行けると聞いた俺はものすごい形相でリースに問いかける。

漫画やアニメの中のような異世界に行けるとなってついつい興奮してしまった。この空間に来た時点で異世界に行くことを想像はしていたが、リースの一言でそれが確信に変わった。


「まあまあ、落ち着いてください。暁さんに行ってもらう世界は、魔法が存在する世界です。魔法があるため科学技術はあまり発展しておらず、暁さんの世界でいうと中世ヨーロッパみたいな感じですね。あと魔物がいるのも科学技術の発展を邪魔している理由の一つです」

「まさに異世界ファンタジーって感じだな! ちなみに、レベル1000ってそんなに難しいことなのか?」

「かなり大変ですね。暁さんの世界にはレベルの概念がなかったので分かりづらいかもしれませんが、この試練を乗り越えられる人はほとんどいません」

「なるほど。それと、この試練ってペナルティーとかはあるんだろうか? 他にも時間制限とか」


 異世界に行けるとしても失敗したときのペナルティーが重い場合は、さすがの俺もあきらめざるを得ない。これでもし、素直に死んだほうがよかったと思えるようなつらい地獄が待っていました。みたいなことになったらと思うと恐怖しかない。

 恐る恐る質問する俺にリースは答える。


「あちらの世界で暁さんが亡くなられる。もしくは、試練をあきらめられた場合はそのままそちらの世界に残ってもらうことになりますが、それ以外には特にペナルティーはありません。あと時間制限もないですよ。神様になる試験を受けるのをお願いしているのもこちらなので試練自体、強制していませんからね」


 リースの言葉を聞いてほっと胸をなでおろす。


「ですが、もしも暁さんが悪意を持って世界を乱すようなことがあれば、私が罰を与えなければなりません」

「わ、わかった」


 リースの顔はさっきと同じように優しそうに微笑んでいたのに、背筋に冷たいものが走る。リースから言葉にできないような恐怖が暁を襲う。

 リースの言いたいことはつまり異世界で悪事を働くな、神の試練を受ける者の自覚を持て。ということなのだろう。

 この一瞬で自分が話している相手が神なのだと再認識した。


「そろそろ時間ですので、暁さんには異世界に行ってもらいましょう。おっとその前に」


 そういってリースは自分の人差し指の表面を軽くかじり、血を流した。

 リースの行動を不思議そうに見る暁のほうに、その血の流れる指を向ける。


「では、この私の血を舐めてください。私の血を取り込めば暁さんは私の眷属となり、異世界で試練を受けてもらいます。これが神の試練の第一歩目です」


 俺はリースの手を取り、血の流れる先端を舐める。

 特に自分の体に変化が起きる気配はなく、手で自分の体を触っていく。


「眷属になったからと言って特に今までとは変わりませんよ。しいて言えば、神だけが使える力が一つだけ使えるようになります。それは『スキル振り分け』です。頭の中でスキル振り分けと唱えてみてください」


 俺は頭の中でスキル振り分けと唱えてみる。すると目の前に半透明なウインドウが出てきた。そこには俺の名前やレベル、ステータスが表示されている。


「リースこれはいったい?」

「これは『スキル振り分け』といって自分のステータスとスキルを表示してさらに好きなスキルに自分が獲得したスキルポイントを振り分けることができるんです。画面の右上を見てください」


 リースに言われて画面の右上を見ると、そこには9ポイントと書かれている。


「そこに書かれている数字が今振り分けられるポイントです。そのポイントを使って好きなスキルを強化できますよ。あとポイントはレベルが1上がるごとに1ポイント獲得です。」

「まんまゲームのシステムと同じだな」

「そうですよ。だってこのシステムを暁さんの世界に持ち込んだのは遊戯神ですから」


 リースが言うには、世界にある遊びのいくつかは遊戯神が持ち込んだものらしい。そのため、すべての世界に共通する遊びがあったりするみたいだ。


「ならリースのおすすめのスキルとかってあるのか?」

「そうですね。たとえば『鑑定』と言うスキルはどうでしょう。このスキルはアイテムや人物のデータを知ることができるスキルです。最大まで強化すればかなり便利ですよ」


 自分のスキルの一覧を見てみると鑑定の文字がグレー色で表示されている。その他にも料理や掃除、日本語などの文字が鑑定の下に並んでいる。

 鑑定の文字を指で触れてみると画面にスキルを強化するか、と表示される。画面のはいのボタンを押すと鑑定の文字が白色になり『鑑定Ⅰ』になった。そして残りのスキルポイントは8ポイントに減っている。


「では、私に鑑定のスキルを使ってみてください。頭の中で鑑定と唱えるだけで大丈夫です」


 リースを見つめ、頭の中で鑑定と唱える。すると目の前にリースと表示される。


「なるほどな、これが鑑定のスキルか。こういうスキルは必須だよな」

「他にも、いろいろと便利なスキルがあるのであとは自分で探してみてください。おっと、そろそろ時間ですね」


 リースは真剣な表情でこちらを振り向く。


「異世界に行く心の準備はできましたか?」

「そんなのもうとっくにできてるよ」

「これから暁さんには異世界に行ってもらいます。次に会うときは、あなたが試練を突破したときになるでしょう。願わくば、あなたとの再会を願っています」

「あぁ。俺もリースとの再会を楽しみにしてるよ」

「では、暁さん。お元気で」


 リースのその言葉を最後に俺は意識は途切れ、異世界へと旅立っていった。




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