表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/53

34:危機


<エリア:バルス帝国、街道>


『あ、い、いやだ……、や、やめて……あ、あ゛ぁああああああっ!』

『戦士長、マルコが……マルコがっ!』

「ぐっ……もう助からん! 振り返るな! 進め……進めぇぇえええええ!」


 戦士長ゲイルは手綱を引き、ただひたすらに馬を走らせる。

 背後では一人また一人と部下の憲兵が食われていく。長年同じ釜の飯を食らい、共に泣き、共に笑いあった朋友(ほうゆう)だ。手元の手綱は、強く握りしめ過ぎたために血で深紅に染まっている。

(すまん。――すまんっ!)

 敵は伝説上の生物。どう足掻いても、人間に勝ち目などない。――例えそれがバルス帝国最強の戦士だとしても。


(このままでは――全滅だ。神でも悪魔でも何でもいいっ! 誰か助けてくれっ! せめて姫様だけでもッ!!)



<エリア:バルス帝国、西門>


「……ふわぁあああ」


 勇者は小さな石垣に腰掛けたまま、大きくあくびをする。

 運搬依頼を受注し、冒険者ギルドを出た勇者たちはバルス帝国正門へと来ていた。


「よっ、ほっ――はっ……っと」


 魔王が入念に準備運動をしている横で、勇者はぼんやりと空を眺める。


「……いい天気だ」


 雲一つない、どこまでも続くような青空であった。

 しばらくすると魔王から声がかかる。


「お待たせ、ウィル。もう準備運動はばっちりよ!」

「そうか、後は魔法か?」

「うん、それじゃ使うね――<敏捷性強化(アジリティ・ストレングス)>!」


 魔王が魔法を発動し、自身の敏捷性を強化する。


「これでよしっと。……本当にウィルにはかけなくてもいいの?」


 勇者の体力と脚力を舐めてもらっては困る。魔法の底上げなど不要だ。


「それじゃ行くか」

「うん、絶対に日が暮れるまでに着いて見せるんだから!」



<エリア:バルス帝国、街道>


「えっほえっほ……ふぅ」


 しばらく走ったところで、魔王の息が少し乱れ始める。顔には少しだが、疲労の色が窺えた。魔法――<敏捷性強化(アジリティ・ストレングス)>を使用しながらの長距離走行だ、無理もない。


「大丈夫か、カレン? そろそろ休憩をはさむか?」

「ううん、まだ大丈夫。……それにしてもウィルの身体能力は本当に反則級ね。どうして魔法で強化した私よりも速くて、しかもそんなに余裕そうなの?」


 どうしてと言われても『勇者だから』としか答えようがない。

 二人でそんな話をしているとはるか前方より、馬のいななく声と共にひづめが大地を蹴る音が聞こえてきた。

 ――ふむ、五、六、七……多いな。何の集まりだ?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ