22:ステータスカード
〈エリア:バルス帝国、冒険者ギルド〉
勇者と魔王は戦士長ゲイルに連れられ、バルス帝国冒険者ギルドの扉をくぐる。
ギルドにはバーが併設されており、冒険者たちはみんな酒や料理を囲いながら熱心に今後の計画について語り合っていた。
そして一人の冒険者がゲイルの姿を発見する。
『――おいっ見ろ、ゲイルだぞ!?』
『うぉっ、マジか!? ……ってあれ? 戦士長がフラン殿下の側を離れるとは珍しいな……』
『なんだお前知らねぇのか? フラン殿下とゴール陛下の大喧嘩の話をよ?』
『あぁー、そういやそんなこともあったな……。それで一人ってわけね……』
『ところで……戦士長が連れているアレは新規の冒険者か?』
冒険者の興味がゲイルから、勇者たちへと移る。
『金髪の女に細身の男……? いや、あれは……』
『あぁ間違いない――悪魔だな……』
『ってことは女の方は、駆け出しの調教師か……』
『しかし、ずいぶんとべっぴんな姉ちゃんだなぁ……』
ゲイルは勇者たちを連れて、受付へ向かう。
受付では、少しおっとりとした印象を抱かせる受付嬢が書類整理に励んでいた。
「すまない、ちょっといいか?」
「あ、ゲイル戦士長。いつもお疲れ様です。本日はどうされましたか?」
「この二人にステータスカードを発行してもらいたくてな。『テンカイ』という、遠い異国の地から来たらしい」
「そうですか、かしこまりました」
「あぁ、よろしく頼む」
「それでは準備してきますので、少々お待ちを」
そう言うと受付嬢は、ギルドの奥の方へと歩いていった。
「それじゃウィルにカレン、俺は市中警備に戻る。もし何か困ったことがあったら、バルス城へ来るといい」
「ふむ、助かった。感謝する」
「ゲイルさん、親切にありがとうございました」
ゲイルは武骨な顔に笑みを浮かべ、冒険者ギルドを後にした。
「ゲイルさん、とっても良い人だったねー」
「あぁ、(都合の)いい奴だったな」
少ししてギルドの奥から先ほどの受付嬢が戻ってきた。
「あれ、ゲイル戦士長は?」
「ゲイルさんなら仕事に戻るって、出て行かれましたよ」
「そうでしたか、えーっと……それではステータスカードを発行しに行きましょうか」
勇者と魔王は受付嬢に連れられ、ギルドの中心に描かれた魔法陣へと移動する。
「はい、えーっとここでステータスカードを発行します。その前に簡単にステータスカードについてご説明いたしますね」
受付嬢は、一枚の紙を片手に勇者たちに説明を始める。
「えー、ステータスカードには、自分のステータスと職業が記録されます。ステータスには『体力』『魔力』『筋力』『敏捷性』『耐久力』の五項目に加えて『スキル』があり、各項目はE~Aまでのランクと練度0~99までの練度によって表示されます」
「えっと、『スキル』ってなんですか?」
魔王が疑問を口にする。
「『スキル』はですね、なんというかこう……その人の優れた才能? 能力? みたいなものが表示されます。ですが、基本的には『スキル:なし』の方がほぼ100%ですよ」
「なるほど……」
「サンプルもありますので、こちらをどうぞ」
受付嬢は勇者たちに『サンプル』と書かれた一枚のステータスカードを手渡した。
『氏名:サンプル』
『職業:戦士』
『体力:C 50』
『魔力:E10』
『筋力:C70』
『敏捷性:D10』
『耐久力:D80』
『スキル:なし』
「これがステータスカード……」
魔王が興味深そうにステータスカードをジッと見つめる。
「はい、それは『戦士』のサンプルです。体力や筋力、耐久力が高い反面、魔力や敏捷性が低いですね」
「ふむふむ……」
「ランクDの能力は平均的な冒険者。ランクCで一線級の能力です。ランクBを超えるとそれはもう英雄級の能力となります。――風の噂によるとゲイル戦士長は、『スキル』を持っている上にAランクの能力まであるそうで……流石はバルス帝国最強の御方ですね!」
「あっ、それと――」と受付嬢が説明を続ける。
「『職業』は自分で選ぶことができません。その人の魔力――つまりはその人の本質によって決定されます。といっても、ほとんどの人が『平民』なんですけどね」
――ふむ、その人の本質により職業が決定される……か。それでは自分の職業は『勇者』で決定ではないか。
勇者は壮大なネタバレを食らってしまい、少し気勢をそがれてしまう。
「これでステータスカードの説明は終わりです。では心の準備ができましたら、魔法陣の中央に立ってください」