インベーダーインベーダー
サブタイが違ったので直しました。
俺が居た元の世界には魔獣何てものはいなかったし、魔法もなかった。
あったのは【侵略者】討伐の為に使われる大量の重火器と【侵略者】に怯える人々。
【侵略者】とは何か、それは全く謎の存在だった。奴らは突然やって来て地球を人類から奪っていった。
奴らは様々な姿をしていた。虎の様な奴もいれば、鳥の様な奴もいる。魚の様な奴らなんかは、重力無視して空中を泳いだりしていた。
そして決まって戦闘力が高い。口から光線撃ったり、猛毒のガスを吐き出したり。
此方から攻撃を仕掛けてもA.Tフィールドみたいな障壁で防がれるわ、やっとの思いで体を吹き飛ばしてやってもすぐさま治癒する奴もいるわ…
【侵略者】には重火器が効きにくい。だからと言って使用を渋るわけにはいかない。なので、【侵略者】と戦闘をする際には気が遠くなる程の金と沢山の犠牲者が出るのは当たり前だった。
「何よそれ…最悪じゃないの…」
話の途中でリトスがそう呟く。
「まぁ、最悪っちゃ最悪だな。この世界みたいに金なしで撃てる協力な魔法もないしな。」
だが、ある戦争中に戦地の兵隊があるものを見た。
それはたまたまだったのだろう、虎型の【侵略者】が放った爪撃が前方を泳いでいた魚型の【侵略者】に当たり爆撃さえも凌ぐ鱗を容易く切り裂いたという。
流石に一発で瀕死という事にもならず、魚型はその一撃で虎型を敵とみなしたのか自ら攻撃を仕掛けた。
両者とも最先端技術を駆使した兵器をものともしない体を持ちながら、互いの攻撃では傷がついていった。
その話を聞いた学者達にはある考えが浮かんだ。
【侵略者】どうしなら容易く殺し合える。
この情報から世界各地では非人道的な実験が行われるようになった。
「そ、それって人体実験ってことですか…?」
ユウが暗い表情を浮かべる。
「そうだね。軍が【侵略者】をどうにか瀕死のとこで生け捕りにして、学者達がそいつらの細胞を人間に植え付けたらしいよ。」
「う、植え付けるって…そんなことして平気なの?」
リトスの表情が青くなっていく。
「そりゃ…ヤバイだろうな」
全く正体もわからないモノを体内に入れて平気なわけがない。
なので、死人が出るのは当たり前で死にはしなくても精神は壊れ廃人といった結果ばかりの実験だった。
「何でそこまで協力者がいるのか気になる。それに、貴方の世界の政府はそんな実験を放って置いたの?」
「被検者の大半は孤児。当時は【侵略者】との戦争で多くの親が亡くなったらしいからな、沢山の孤児が出たらしい。
それに、一回の戦争でかなりの大金を注ぎ込んできた政府からすれば、【侵略者】を圧倒でき尚且つ安上がりの方が助かるだろうしな。」
そう、政府が人体実験に対して行ったのは黙認。
親も亡くなり1人となった子供たち、援助を受けるのも政府の資金からだ。ならば、せめて役に立てと、そんな考えなのだろう。
だが、実験も失敗ばかりでは無かった。細胞を植え付けられ死ななかった者の中には、暴走させながらも【侵略者】の力を扱うことが出来る者も出てきた。
しかし政府が望むのは自分達の命令を受ける兵器だ。力を暴走させ無闇に破壊行動に出れば被害が悪化するばかり、では力が暴走させた者がどうなるか。
簡単な話しだ、単にーーー殺される。
だが、体は【侵略者】の力を引き継ぎ銃撃などは効きにくい。
ではどう殺すのか、それは爆殺。
実験を受ける前に体内に爆弾を埋められ、暴走すれば、それを起爆し木っ端微塵に爆殺する。
「……」
俺の話を聞いてる皆の表情がどんどん暗くなっていく。
…まぁ、聞いてて楽しい話ではないわな。
俺だって軍の記録で過去の実験記録を見つけた時は胸糞悪い気持ちでいっぱいだった。
水を少し飲み、続きを話す。
「…実験開始から半年を過ぎた頃に、実験は進展を遂げた。」
そう、人の身でありながら【侵略者】の力を扱える者が現れた。
初めての細胞所持者は12歳の女の子。
両親を【侵略者】に殺され、施設にいた所を軍の学者達に被検者として連れて来られたらしい。少女は実験を受ける際に両親の仇が取れると喜んでいたらしい。
少女が力を制御できた理由として、【侵略者】に大しての憎しみや怒りが大きな糧となったと実験担当者が綴っていた。
『力』を完璧に制御出来ると判断された少女は軍の訓練をしばらく受け、戦場に駆り出される事となった。
少女のデビュー戦、軍のあらゆる武術を習得した彼女は十数を超える中型【侵略者】を圧倒した。
この結果には政府も学者達も大喜び。
少女はその後も数度【侵略者】との戦争を続けた。
だが、ある戦争終了後、彼女は高熱で倒れた。数日の間うなされ、苦しんだ末に少女はーーー死んだ。
彼女が死ぬ前に言った言葉は軍の記録に残っていた。
ーーー「もっともっと殺したい。パパとママを殺したアイツらは絶対に許さない。私が全部殺して、壊してやる。」
こうして、『力』を手に入れ、復讐に囚われ、憎悪と憤怒に塗れた少女は最後を遂げた。