マッサージと晩御飯
リトス達が戻ってきたのは風呂場で別れてから2時間と少し経ってからだった。
俺達が何度目かのカードゲームに熱狂していると、テントの扉が開く音がする。扉の方へ目線をやると、ダダダっと何かが一気にソファーの元へと駆けて行く。
「あー、疲れたわ…お腹すいたし…」
空いていたソファーを早々に占拠したのはリトスだった。リトスはソファーにねっころがると一息く。
疲れたのは今の全力疾走があったからじゃね?昼の大型魔獣並みの突進力だったぞ。
そこに、ソファーに近づく者がいた。
「お疲れ様、リトス」
ユウだ。伸びきってるリトスに労いの言葉をかける。騒々しい帰宅に文句などなく、笑顔で我らのリーダーを出迎えた。そのたたずまい、正に天使。
「それじゃあ、皆さん、夕食にしましょうか!」
ユウは満面の笑みでそう言うとキッチンへ入って行く。すると、キッチンの方からリトスの鼻歌と調理の音が聞こえてくる。
未だにソファーでだらけているリトスの元へ、奥の方で二人でゲームをしていたクレアとリリスがいつの間にかこちらへ来ていた。
「お疲れさま。リトス、タクト。」
「二人とも、お疲れさま!ボク達が準備手伝うから、二人はゆっくりしててよ!」
リリアとクレアは二人にそう声をかけるとキッチンへ入って行った。すると、ご機嫌の鼻歌は消え代わりに、入って行った二人に指示を出すリトスの声と調理の音がキッチンから聞こえてくる。
「おう、お疲れさん」
俺も先の三人に見習い二人を労っておく。ある程度の労働をした後にかけられる労いの言葉は嬉しいもんだ。
「あ゛ー疲れたわぁ…ほんとしんどいわぁ…誰かマッサージでもしてくれないもんかしらねぇ!」
今までソファーにうつぶせで顔も沈めていたリトスが、ガバっと顔を上げわざわざ聞こえるように声を上げた。
いやいやいやいやいや、俺男だからね。確かに、昼間の戦闘からのまじめ(?)な会議に参加させられてしんどいのはわかる。ハードワークだったもんね。わかるんだが…男にマッサージしろなんて、ちょっと警戒心足りないですよ?
ソファーの後ろで立っているタクトを見やる。助けてたっくん!だが、当のたっくんは困った顔を浮かべ、肩をすくめた後、キッチンの方へと歩いて行ってしまった。
…たっくん許すまじ。最大の助け舟が沈んでしまい、途方に暮れていると、
「あー、疲労で死んじゃいそうかも」
我らのわがままリーダーは不服そうにこちらを睨んでいた。
え、どすればいいの。正直俺も男なのでマッサージをすること自体はいやではない。だが、万が一、変な所をうかつに触ってしまえば社会的死は明らかだ。どすればいいの、助けて神様、仏様!あれ、この世界に仏はいるのだろうか…まぁ、そんなことはどうでもいいのだ。今はこの状況を何とかしなければ。
すると、キッチンに入って行ったタクトが何故かキッチンから出てきた。人手が足りてたりしたのだろううか。まぁ、いいか。もう一度タクトにヘルプの視線を投げつける。届け俺の思い、助けて神様、タクト様!
思いが通じたのか、タクトがこちらを見る。だが、その表情は先程と同じものであきらめろと言ってるようだった。そして何事もなかったように食事に使うテーブルを台ふきで丁寧に拭いていくとキッチンに戻っていった。
「…わかったよ」
仕方がない、ここは腹をくくろう、覚悟を決めソファーへと向かう。リトスは近づく俺に気づき、満足げな顔をするとうつぶせになった。
「それでいいのよ、まったく無駄に待てせて…」
こいつは…人の気持ちも知らないでよくも。恨めしい気持ちを抑え、リトスの元へ歩み寄る。そののまま、リトスの体を跨ぎ肩に手を置く。
「それじゃ、始めんぞ」
そう声をかけ、肩から軽く揉んでいく。結構凝ってるな…まぁ、こいつらここに来てから何日か経っているみたいだし、今日みたいなハードワークばかりが続いてるなら無理もないか。
そのまま、下半身の方へとほぐし進めていく。
「ん…なかなか上手じゃない…!」
軽く呼吸を乱しながらリトスが言った。今は腰の辺りを揉んでいる最中だ。段々下半身の方へいくにつれ、明らかにリトスの呼吸が乱れてきている。
「…んっ……あっ、……」
うーん、この。いやらしいことは一切してないのに、何だか妙な気分になってくる。
「おい、平気か?」
自分の気も紛らわすのも兼ねて、リトスに声をかけた。
「えぇ、大丈夫。ただ、予想以上にくすぐったかったから…」
リトスはこちらを見ずにうつ伏せのまま返事をした。
「そうかい、そりゃ悪かったよ」
そう言い、マッサージに集中する。リトスからはまだ喘ぎ声が聞こえてくる。クッションで抑えてるようだが、この距離だと抑えきれていない。
何とも言えない気持ちの中、足へと作業を進行する。後少しでこの微妙な空気も終わる…そう、思ってた矢先ハプニングは起こる。
「できましt「んァッ!」」
ユウが満面の笑みで夕食を持ってキッチンから出てくるのと、リトスがこれまでと比べ最大級の声を上げるのはほぼ同時だった。
リトスはそこからグッタリしてしまい、ユウはおかずの乗ったトレイを持ったまま固まっている。どうしたらいいかわからず、オロオロ辺りを見回すと何事かと出てきたタクトと目が合った。
タクトは即座に何が起きていたか察したらしく、俺を真っ直ぐ見つめると、グッ!と無言で親指を立てた。いや、フォローしてくれよ。
「…龍ヶ崎さん?そこに、直ってください。」
ドスの効いた声と冷たい視線を身に指しながら、ユウの前で正座をする。…どうやら、晩飯にありつけるのはまだまだ先になりそうだ。
前回の更新からまた随分と間ができてしまいました!小湊です!!
最近冷え込んで来ましたので、皆様、風邪等にはお気を付けて、あたたかい格好で健康に過ごしてくださいね(^ω^)
では、また次の投稿で!




