プロローグ③
「いくつか質問するわ。君がスライムに追われていたのは何故?」
サーベルは腰に戻しつつ、真面目な顔で問を御影に投げかけるリトス。
「やっぱりあいつスライムなのかぁ…もうちょい可愛い感じに出来ないのかねぇ…」
俺は気持ちの落ち込みを隠しきれない。
「スライムって言ったらさぁ…あんなドロドロの臭くてキモイのじゃなくて、ド〇クエみたいな青くて愛嬌のあっていかにも弱そうな感じにしてくれないと…」
あんなのはスライムじゃないよ…とリトスに愚痴をこぼす。
「知らないわよ…それより、質問に答えなさいよ。後、臭いから近寄らないで?」
まぁ俺の夢ですしね…
てか臭いって何!?俺だって好きで臭くなった訳じゃないんだけど!
リトスは鼻を指で摘みシッシと手を払っていた。
ユウに至ってはリトスの後ろに隠れブルブル震えている。
その反応、凄い傷つくんだけど…
「はぁ…それで?俺がスライム追われてた理由だっけか?」
「そうよ。なんで追われてたの?だから寄らないでってば!」
リトスの言葉を無視し近づきながら話す俺にまた傷つく一言が飛んできた。
これ以上はいけない、心の傷が増えるだけだ…
大人しくリトスから退る。
「そんなん、こっちが聞きたいわ…あいつ、俺と出会った瞬間追って来たんだぞ…」
リトスの質問に答えてやる。
「スライムが自発的に人を襲うなんて、よっぽどお腹でも空かせてたのでしょうか?」
すると俺の答えに疑問を持ったのかユウが口を挟んだ。
「さぁ?スライムの事なんて知らないわよ。そういうのは、スライムオタクにでも聞きなさいな。じゃあ質問を変えるわ。」
ユウの問を軽くあしらい、問を続けるリトス。
いや、スライムオタクってなんだよ…
「君は何処で生まれて、何処に住んでるの?」
何処生まれでどこ育ちって…夢の中にしておかしな質問だな?
「何処って…生まれも育ちも神奈川地区だけど…?」
リトスの質問をおかしく思いながら答える。
「神奈川地区?…ってどこですか?そんな区域ナスタリアにありましたっけ、リトス?」
「無いわね。」
と、言い切るリトス。
ーーーえ?
ナス…何だって?
「じゃあ、これで最後の質問ね。君のフルネームと今の心境を教えてちょうだい。」
自分の生まれ地区が無いと言い切られ、動揺を隠しきれない俺に新たな質問が投げられる
。
「名前は、龍ヶ崎御影。今の心境は…凄く動揺してるよ…」
「そう、やっぱりね…」
「待ってくれ。一つ聞くぞ?これは夢だよな?」
そう、この平和そうな世界でスライムに追いかけられていたのも、命からがら美少女に助けられたのも、今問いだされているのも、何もかもが最初から夢だ、と思い込んでいた。
だからこそ命を落とそうとしている場面でも冷静でいられた。
「残念ね、これは現実よ?」
「ーーーっ…」
頭が真っ白になった。
じゃあ、ここは何処なんだ?
何で俺はこんな所にいる?
いや、そんな事より…
もし、あのままスライムに捕まってたら俺は本当に死んでーー。
「あのー…どうゆう事なんですか?りトス?それに龍ヶ崎さん?の顔色も悪いようですし…」
ユウは俺とリトスの質問のやり取りをよく分からないといった様子で尋ねた。
そんなユウを横目で見ながらリトスが口を開き、そして…
「いい?ユウ、この人、御影はね…【難民】なの!」
そして、とても楽しそうに笑った。
「ええぇええええ!?」
顔面蒼白の俺を心配していたユウの顔が驚きの色に染まり、森に木霊した。
ここでプロローグ終了となります。