それぞれの朝
「ん…」
まだ寝ていたい衝動を抑え、重い瞼を擦りながら起きあがる。
他に寝てる仲間を踏まない様に注意しながらリトスは一旦外に出た。
テントの外ではうっすらと空が明るくなり、森林の真ん中に基地があるおかげかとても涼しくて気持ちがいい。
見たところ雲ひとつない快晴の空だ。森から聞こえる鳥の鳴き声もいい朝っぽさを醸し出している。
「ん〜…」
ポキポキ、と子気味のいい音を鳴らしながら大きく手を広げる。
まだ残っていた眠気を追い出すように思いっきり伸びをすると、
「さて、今日も一日頑張るぞい!…っと」
そう気合いを入れて呟いた。
そして、皆の朝ごはんを作るためにテントに戻るのだった。
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「ふぁっ…」
トントントン、と気持ちのいいリズムを刻む音で目を覚ました御影は軽いあくびをした。
周りを見回すと一人を除いて他の奴らはまだ寝ているようだ。
隣で寝ているタクトを起こさないようにそっと布団を出るとリトスが調理をしてる台所へと向かう。
ーーーちなみに何故、御影がタクトの横で寝ているのかというと、昨晩の御影とリトスの言い合いが終わらない、と踏んだタクトがほぼ無理やり御影を自分の布団へ押し込み寝かせたからだった。
「よぉ…おはようさん。」
ふぁ、ともう一度あくびをしながら御影に気づかず調理を続けていたリトスに声をかけた。
「あら?…おはよう。起こしちゃったかしら?」
「いや、自然と目が覚めた…」
リトスが御影に向き直り少し申し訳なさそうな顔をする。
「そ、ならよかった。もう少ししたらできるから皆を起こしといてくれる?」
そう言うと、リトスは再びまな板と向き合い調理を再開した。
「おうよ。」
御影はリトスに頼まれたことを行うために、まずタクトの元へ戻った。
「……zzz…」
すぅすぅ、と寝息をたてながら寝ているタクト。
御影はそんな彼の顔をペチペチを叩きながら起こそうとする。
「おーい、起きろ。そろそろ飯だってよー。」
だが、依然と寝息をたて気持ちよさそうに寝ている。
ガッツリ寝ている。
……起きそうにない。
御影はそんなタクトを見てうん、と頷くとそのまましゃがみ込み、タクトの鼻を指で摘んだ。
「…、…!……!?」
少し経つとタクトが苦しそうに顔を顰める。
そのまま見ていると耐えきれなくなったのか、勢いよく上半身を起こし思いっきり深呼吸を繰り返した。
「生き…てる!」
夢の終わり間際でどんな夢を見ていたのか今だに荒く呼吸をするタクト。
そんなタクトを横でニヤニヤしながら見つめる御影。
「よ、おはようさん!」
とびきりの笑顔でタクトにおはようの挨拶をかます御影。
「あっ…」
そこでタクトが何かに納得が言ったのか、恨めしそうな表情で御影を睨んだ。
「おはようさん!じゃないだろ…君は僕を殺す気か!?」
「だって、普通に起こしてもお前起きないんだもん…それより、そろそろ飯だってよ。お前も他の奴ら起こすの手伝ってくれよ。」
そう言うと、タクトはブツブツと何か言いながら異空間に布団をしまい始めた。
「じゃ、僕はクレアとリリアを起こしてくるから。」
布団をしまい終えたタクトはそう残し、離れたところで寝ているリリアの元へと向かった。
「んじゃ、俺はユウを…と」
ユウの布団の前まで来た御影は思う。
ーーーどう起こせば?
タクトの様に男なら先程みたいに冗談混じりに起こすことはできる。だが、相手は女の子、しかもこれから住むことになるかもしれない国の王女様。
(さて、どうしたもんかね…)
うーん、と考えを振り絞った結果、シンプルに行くことにした御影はユウの肩に手を置いて揺さぶり起こすことにした。
「えっと…」
御影がユウの肩に手をかけたと同時にユウが目を覚ました。
御影は寝ているユウの隣に腰を下ろして両肩に手を置いている状態。
はたから見たら、完璧に御影がユウを襲っている状態になってしまっていた。
「いや…これはですね?ユウを起こそうとしてですね?決してやましいことをですね?しようとした訳では…」
パニクった御影の口調がおかしくなる。
「ぷっ…あははは!」
その焦り具合を見てか、ユウが堪えきれずに笑いだした。
「ふぅ…わかってますよ。そろそろ朝食何ですね?」
「あ、あぁ…そう、朝食!だから、俺は決してやましいことをだな…」
「うふふ、わかってますよ。龍ケ崎さんは面白い方ですね。」
クスクス、と笑うユウ。その笑顔はとても優しく、そして懐かしく感じられるものだった。
(聖母マリア様ってのがこの世界にいたらこんな感じなのだろうか…)
そう思える程の破壊力を持つ笑顔。
ぼーっと魅入ってしまっていると、
「おーい、朝食の支度できたよー」
クレアの呼び声が聞こえた。
声のした方へ振り向くと、いつの間に起きたのかクレアとリリア、そしてリトスとタクトが四角いテーブルを囲んで座り、こちらを見ている。
テーブルの上にはこれまた、いつの間に済ませたのかリトスが手がけた朝食たちが並べられていて、もう準備万端の状態だった。
「あいつら…仕事早すぎだろ。」
そうもらす御影の横で、
「ふふ、それじゃ私達も行きましょうか。」
布団を片付け終えたユウが御影に声をかけた。
「あぁ…そうだな。」
こうして、御影達の朝は始まった。
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