ある少年の記憶。2
優は宣言通り、俺が退院するまでの間毎日見舞いに来た。彼女が体験した出来事を聞いたり、トランプをしたり、間の抜けた所をからかったりしていたおかげで暇をせずにすんだ。
退院後も『君がまた死のうとしたらいけないから。』と理由を付けてちょくちょく部屋に来るようになった。
そのまま月日は過ぎ、俺と優は中等部に入学。だが、優は変わらずに漫画を読みに来たり、撮り貯めたアニメを見に来たり、と自由に俺の部屋を行き来していた。
優が部屋に遊びに来るのは初めは良い気がしなかったが、だんだんと優がそこにいるのが当たり前となり、退屈なだけだった自室も心地よい空間へと変わっていった。
俺はそんな日がずっと続くと思っていたんだ。
ーーーーーあの日が来るまでは…
^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~
「…かげ!御影!おい!大丈夫かい?」
ぼーっとした頭がユサユサ揺らされている。
「うーん…。起きないな。しょうがい…せーの!」
その掛け声と共に靄がかかったような頭がビクッと起きる。
「…おう。」
「おうってねぇ…。まあ、平気ならいいんだけどさ。」
やれやれ、とタクトは苦笑いながら肩をすくめた。
「…何で俺はこんな所に?しかも何で水をぶっかけられた。さっきまでお前と風呂入ってた気がするんだが?」
周りを少し見回して見る。
どうやら俺は露天風呂から離れた涼し気な所で寝かされているようだ。
石畳の上にタオルを起き、そのタオルの上に頭を乗せ寝ている状態。
「何でって…急に暗い顔になって考え事しだしたと思ったら、ふらふら〜って倒れたんだよ。」
どうやら、倒れたまま起きる様子がない俺に対し、仕方なく冷水をぶっかけたのだという。
それなら俺が悪いけどいきなり冷水は逆に体に悪いんだが…
俺が勝手に倒れて置いて相手にも心配をかけさせた。
まぁ、別に放って置いても死にはしないだろうが、わざわざ起こしてくれたのだ。
これは俺に非があると認めるしかない。
「…そうか、悪いな。心配かけた。」
「別に構わないよ。それより、体は平気かい?」
上半身を起こし、軽く頭を左右に振る。
ぼーっとしていた視界や思考がだんだんと戻って来た。
そのまま立ち上がり2、3回跳ねたり腕を回し、
「あぁ、問題ないよ。心配かけたな。」
タクトの方に振り返りそう返してやった。
「なら、よかったよ。さ、早く着替えてテントに戻ろう。あんまり遅いとリトス達が心配するからね。」
タクトはそう言うと脱衣場の扉を開け、中に入っていった。
残った俺はふと、空を見上げる。
ーーー『白髪』及び『オッドアイ』はナスタリアでは迫害の対象。
これは立場など関係ない。現にユウも国の姫様なのに迫害されているという。
…なら、余所者の俺なんかがバレたら…。
いや、ビビるな。
命を助けて貰った恩は返す。アイツらがピンチな時は必ず…!
自らに固く誓い、空に手を挙げ握り拳を作る。
すると、
「おーい、着替えないのかーい?」
タクトの声が俺の思考を遮った。
俺が取っているポーズに不思議な顔をする。
そんな彼に軽く微笑を浮かべ、
「悪い、今行くよ。」
そう返し、満天の星空を後にした。
本文の書き方を少し変えました。
これからは、こちらの書き方で進めて行きます。
これまで投稿した話は少しずつ直して行きますので…!
大変ご迷惑をおかけしますが、どうぞこれからもよろしくお願いいたします!