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異世界人は元の世界に帰りたいと思った?

「…星が綺麗だな。」


 上を向くと満点の星空があった。神奈川では拝むことの出来ない自然の美しさだ。


「御影は星が好きなのかい?」


 近くに腰を下ろしていたタクトが俺の呟きを聞いてか、話しかけてきた。


「好きか嫌いかだと…好きだな。地球にいた頃は星空が見えるなんて珍しかったし。」


 俺が地球にいた頃は人類と【侵略者】の戦いによって環境汚染進んでたし、そのせいで綺麗な星空なんてまともに見たことがなかった。

 昔、任務後にたまたま見えた星空が凄く綺麗で幻想的に映ってたのを覚えてる。


「そっか…僕も星は好きなほうでね。」


 タクトは空を仰ぎながら呟いた。


「ほー…ところでさ……」


「?」


 なんだい?とも言いたげにタクトは首を傾げる。


「…前、隠してくんね?」


 俺達は遠征基地から少し離れた場所にある露天風呂に来ていた。

 せっかくの綺麗な星空でも、タクトのアレが目の間にあっては雰囲気がぶち壊しだ。


「?…なんで?」


「いや、何でって…そんな目の前でぷらんぷらんさせられたら落ち着かないだろ。せめて湯につかるか、タオルで隠してくれよ。」


「??…まぁ、御影が嫌なら仕方ないか…」


 タクトは何が嫌なのかわからないといった様子で、腰にタオルを巻く。

 …いるよね!銭湯とかに一緒に行くとぶらんぶらん揺らしながら歩き回る奴。

 いや、風呂なんだからそれは正しいんだろうけど…もう少し自重して欲しいと思うんだよなぁ。

 そんなことを考えてると、


「…御影は異世界に飛ばされて何も感じないのかい?」


 タクトが湯に視線を落としながら聞いてくる。


「感じないというか、なんというか…別に何処にいたって生きてれば良いじゃん?」


「元の世界にいた家族のこととか心配にはならない?」


「俺、結構早くに両親亡くしててな。中学からは寮生活だったし。」


 タクトはバツの悪そうな顔をしてこちらを見る。


「そっか…ごめん。」


「いや、別にいいさ。」


 重い空気が漂う。両親が死んでからこの会話は何回もした。みんな聞いた後に謝るんだが、なんでだろうな。

 俺は大して気にしてないのに。むしろ、謝られることによってその場の空気が重くなる方が耐えられない。


「親、か……」


^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^

 俺の両親は細胞獲得者ファーストだ。《ファースト》の間に生まれた子供…つまり、俺は細胞保持者セカンドになる。

 先程リトスに問われた時は違うと言ったが、俺には【侵略者インベーダー】の血が流れている。


 俺の両親は戦地でかなり活躍した《ファースト》だと聞いた。

 だが、俺が扱える『力』はそれ程強くなかった。ただでさえ《ファースト》と比べると『力』の強さで劣る《セカンド》、しかも両親は戦場で幾つもの武勲を上げている優秀な兵士。


 その事も拍車をかけてか、俺は細胞保持者セカンドとしては戦場に送られずあくまで一般生徒として兵校に入ることになった。

 通常、《セカンド》は《ファースト》の細胞を得て『力』を強化し細胞覚醒者サードとなる。だが、俺はそうしなかった。


 ーーー更なる『力』を得るために親の血肉さえ喰らう。それは細胞持ちからすれば当たり前のこととなりつつあるが、人として見た時はどうか。

 そう考えた時、俺は更なる『力』を得て人を辞めるより、今のまま底辺を履い回ることを選んだ。


 両親から『力』の継承を持ちかけられた時には自分の考えをしっかり伝えたし、後悔もしていない。だが、あの時見た両親の表情が頭から離れることはなかった。

 ーーー酷く悲しく、怒っている様な表情。

 そこで俺は気づいてしまった。両親と楽しかった時間は楽しかったし、向こうもそうだろう。だが、その心の隅にはいつでも「息子」ではなく自分達の『力』を合わせた最強の「戦士」を育てるという目的があったということに。


 両親が死に、行き場のなくなった俺はもう次期中学生になるということもあり、早めに兵校の寮に入ることになった。

 父さんと母さんは俺を利用することしか考えてなかった。当時の俺はそんなことばかり考えていた。いわゆる病み期ってやつだ。人と関わるのが嫌になり、最初は話しかけてくる人は全てシカト、自殺しようとしても『力』が邪魔をして死にきれない。


 近いうちに俺は部屋に引きこもるようになり、自分で傷つけ死ねないのなら餓死してやろうと考えた。

 数日後、空腹で朦朧もうろうとしてる頭でもうじき死ぬことを悟っていると、玄関から凄まじい爆発音が聞こえた。


「ちょっと!大丈夫!?」


 バタバタと、室内に入り込んできたのは黒髪を後ろで縛った少女だ。


「あぁ、平気だよ。平気だから今来た道を回れ右して戻ってくれ。」


 ーーーもう少しで…もう少しで逝けるんだ。邪魔しないでくれ。


「そんなわけないでしょ!?母さん!救急車呼んで!」


 俺のことを気づかう素振りを見せながらも、少女は俺の頭をガクガク揺らす。おかげで俺の朦朧とした頭は限界を迎え、ここで視界がシャットダウンされた。

最後まで閲覧ありがとございます。

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