銀狼狩りのすゝめ
「…え?俺も依頼に参加するのか?」
「えぇ。俺達が留守の間、あの余所者に何されるかわからない〜ってシュウの奴が言うからね。」
どうやら、シュウには警戒されてるようだ。…いや、こっちのが普通の態度かもな。
リトス達は他の世界の話に興味があるからと遠征基地まで連れてってくれたが、他の連中なら俺を助けて、はい、お終い。かもしれなかったのだ。
そう考えるとヘンテコなカッコして魔獣を連れましてた(追いかけ回されてた)俺を助けてくれただけでなく、自分達のテントにまで泊めてくれたリトス達には感謝しなきゃな…
「依頼って言ったって何をするんだ?」
「今回はシルバーウルフの討伐だね。シルバーウルフは魔獣の中では中堅程度の強さで、群れで狩りをして暮らしているんだ。ただ、最近は繁殖数が著しく伸びていてね。」
「じゃあ、依頼内容はシルバーウルフって奴等の討伐なのか?」
「それもだけど、もう一つ目的があってね。目的は討伐だけじゃないの。依頼元の事前調査で今回のシルバーウルフの群れは変わった奴等が多いらしくてね。そいつらの調査も兼ねてるんだ。」
「変な奴等ってどんなことするんだ?」
「そうね、そいつらは…」
「普通は群れで行動して、チームプレーで獲物を仕留める狩りを行うシルバーウルフ。けれど、単体で弱ったように見せかけ、獲物が油断したところを狙ったり、魔法を扱う知能も器官も無いのに、火を吐いたって目撃情報が出ているんだ。挙句には、仕留めた獲物を自分が吐いた火で焼いて食べるってのもあるみたいだよ。」
「焼いて食べる…調理してるってことか。わんころにしてはグルメさんだな。」
ウルフってことは狼だからわんころで間違ってないだろう。
この世界にも犬はいるのか、てことは猫もいるのか?
なんて事を考えてると
「……タクトが大体説明しちゃったわね…」
説明しようと張り切っていたところをタクトに取られてしまい、リトスの表情が(´・ω・`)って感じになっていた。
地球では狼など写真やテレビでしか見たことないが、狼が火を吹いてるところを想像してみる。
結構カッコいいんだが…ペットとかにできないもんかな?
「ごめん、ごめん。じゃあ、後はリトスに任せるよ。」
タクトがリトスの表情に気付き、苦笑した。
「任せなさい!」
バッとリトスが勢い良く立ち上がる。…そんなに楽しみにしてたのか?
「それじゃあ、これまでの経緯を説明するわね。」
そう言うと、リトスは何もない空間に向けて指を指し言った。
「開け、無限の扉」
すると、指さした空間から床にかけてヒビが入った。
「…ふぁ!?」
余りのことに間抜けな声が出てしまった。…タクトが俺の声を聞いてニヤニヤしてた。
しょうがないだろ、地球で生きてて17年。こちとら空間にヒビ入る様なことは無いんだから…
リトスはそんな俺達をよそに割れ目を横に広げて中に入っていった。
しばらくゴソゴソしてるかと思ったら、ゴロゴロと何かを押しながら割れ目の中から出てきた。
「それじゃ、これを使ってわかりやすく説明するわ!」
リトスの図解付き説明を要約すると。
前々から偵察に出ていた生徒が基地に戻って来た。彼らによると、シルバーウルフは此処らにかなりの数の巣を作ってるらしい。
なので、各チームで複数の巣を担当し殲滅するとのこと。俺は留守を荒らされると困るってのと、人数不足かつ俺を拾ってきたってことでリトス達のパーティーに入れられた。
探索は明日から行い、負傷者が出た場合はすぐに基地に戻ってくる。
ってな感じだ。
「別に付いてくのはいいんだが、俺なんかが行って邪魔になったりしないか?」
パーティー内での連携は大分シビアで部外者が1人増えただけでも難しくなる。
地球にいた頃やってたゲームでもそうだったしな…
「あぁ、それは平気よ。私達は連携って程のことはしてないからね。御影1人守るくらいへっちゃらよ!」
「そ、そうか?それは頼もしいことだな。」
「まぁ、御影だってそれ程動けないってわけでもないでしょ?」
「まぁ、それもそうだな…」
俺だって地球にいた頃は様々な化物と戦ってきたので、今更わんころに負けるわけにはいかない。
すると、リトスが懐から何かを取り出した。
「あら、結構いい時間ね。後少し説明したらお風呂にして明日に備えて寝ましょう。」
スイ、スイとリトスは取り出し板状の表面を指でなぞっていく。
……リトスが持っている板状の物…iPadに物凄く似てるんだが?
「これでいいかしら?」
リトスが取り出したiPad?から白狼が浮かび上がっていた。恐らくホログラムか何かだろう。
……iPadより色々と進んでるなぁ。
その後、iPad?から出しているホログラムを使ってリトスがシルバーウルフの弱点や気を付ける点を説明していき、リトス先生による説明会は幕を閉じた。
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