とある異世界のクラス派閥②
「このクラスには3つの派閥があるんです」
ユウ達が寝泊りしているテントに向かって歩いてる中、ユウは右手の指を3本立て言った。
俺は今ユウ達のクラス事情を説明されている最中だ。
「まず、私の世間体を気にせず仲良くしてくれる派閥です。これは先程話してたメンバーが全員です。」
「次に、私が不幸や災厄を招き入れ、周りを不運にすると思っている派閥。これはシュウさんやアリアさん達の派閥ですね。」
「悲しい事に、クラスの大半はこの派閥何だよねぇ…」
ユウが寂しそうに言った。
クレアが実に悩ましいと顔を顰める。
「…仕方のない事です。実際に…私は…」
ユウの表情は一層憂いを増していき、今にも泣きそうな程だ。
「あれは、事故だった。あんなデタラメな魔法陣を幼い子供にやらせるなんて…!」
リリアが先程までの無表情を崩して怒りの色を浮かべている。
その横でクレアがうんうんと頷いている。
やりとりから察するに、ユウが過去に何かやらかしたと…。この2人はそれを知ってるんだろうけど、俺は知らないのでフォローもできない。
…何か仲間外れみたいな感覚……
「なぁ…後1つの派閥はどんな奴等なんだ?」
脱線した会話を元に戻そうと試みる。
「残りの1つはどちらにも関わらない派閥です。どちらの派閥には関わらず、面倒事は避けたい人達ですね。」
なるほどな…リトス達以外全員がユウを理不尽に嫌悪してるわけでもないのか。
まぁ、触らぬ神に祟りなしとか言うしな。
「クラス全員で29人でユウの派閥が5人、無関係派閥も5人だから結果的にクラスの大半がユウちゃんを良く思わない人達になるよね?」
「まぁ、そうなるよな。」
「そうなると、決め事とかする時にユウちゃんが面倒事を押し付けられる可能性が高くなる。それを阻止する為に、最初はリトスが委員長、たっくんが副委員長をやってたんだけどね…」
「最初は1人ずつだったのか。」
「うん。けど、それだと逆にユウちゃんに有利になるって声が上がってね。それで、否定派からも委員長と副委員長を出すことになって…」
「今の状態に至るってか…」
クレアはうん、と頷いた。
すると、先頭に立って歩いていたユウが立ち止まった。
何かと前を見ると1つのテントが立っている。
「さぁ、着きました!ここが私達のテントですよ、龍ヶ崎さん!」
「私達のって…ユウ以外に誰が入るんだ?」
ユウは私″達の″と言ったが、目の前にあるテントはかなり頑張って2人で寝泊りするのが精一杯な大きさのテントだ。
「えーと…このクラスには6つのパーティーがあってですね。先程くーちゃんが言ってた通り、クラス全員で29人。となると、メンバーを割り振ると1つのパーティーは5人になるわけです。」
「まぁ、そうだな。」
「その5人パーティーが私達なんです。」
「ほう?」
「そして、生徒が寝泊りするテントは1パーティーに1つ配給されるので、ここで寝泊りしてるのは、私、リトス、くーちゃん、リリア、タクト君の5人です。」
うん?いやいやいやいや!!
こんなちっさいテントに5人も入るの!?
どんな詰め方したら5人も入れるんだよ…しかも他のテントでは6人も…
「小屋を出る時にリトスと相談したのですが、龍ヶ崎さんは私達と同じテントで寝泊りして貰います。少し狭いですが、我慢してくださいね?」
いやいや…少しどころじゃないだろ!?
やはり、こんなちっさいテントに6人も入るわけがない。
「もしかして、御影はこのテントが普通のテントで、私達は素直にこのちっちゃいテントで過ごしてると思ってる?」
「え、あぁ……違うのか?」
「…この世界には魔法がある。」
はぁ…とリリアがため息を吐きながら、呆れたような眼差しで俺を見た。
あー…そうでしたね。この世界には魔法があったんですね。
おそらくこのテントにはこの大きさで何人も入れるような、何らかの魔法がかけられているのだろう。
「ふふ、それじゃ中に入りましょう!」
ユウが楽しそうに俺の背中を押しながらテントの中に入れた。
「おぉ!どうなってんだこりゃ…」
ーーー外見によらず、テントの中はめちゃくちゃ広かった。
この広さなら、6人と言わず数十人でも余裕で入れるだろう広さ。
それに、見回した限りではキッチンもあるし冷蔵庫らしき物も置いてある。
「どう?なかなかいいでしょー?」
「そうだな、ここなら快適に暮らせそうだな。」
まぁ、しいていえば漫画やパソコンとかもあれば完璧なんだけど。
「しっかし、ほんとに凄いな…どんな魔法使ってんだ?」
「遠征で支給されるテントには指定領域拡大魔法がかけられている。ちなみに、指定領域拡大魔法とは異空間魔法の応用で……」
リリアが長々と説明してくれたが専門用語があり過ぎてよくわからないので大体聞き流した。
「うんうん、なるほどな。そうなのか。………つまり?」
「つまり、このテントの中は異空間の収納スペースになっているからいくらでも広くすることができるし、収納も可能。」
そいつは、便利だなー…このテントさえあれば、買い過ぎてしまえなくなったラノベや漫画を、片付けろと一々親に怒られなくてすむわけだな。
「じゃあ、リトス達が戻って来るまで、カードゲームでもして待ってましょう?」
「うん!賛成!」
「私も、賛同する。」
「そうだな。」
こうして、俺達はリトス達が戻って来るまでの間をカードゲームや故郷話に花を咲かせて過ごすことにした。
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