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強くてニューゲームッ! ―なお、魔王なもよう―  作者: 連開花
第二章 望んじゃいないが、それでも世界は動き出す
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  二十一、  

 あれから数日ほど経ち。

 仲間が増えました。


「もうね゛……やってられませんよ。信奉していたものには裏切られ、魔王には仲間になれと脅される。何なんですか、わたしはぁ、ただね、ただ神に仕える者として最善を尽くしてきたというのに……」

「そうっすかぁ。あ、まだ飲みます?」

「うん、うん……もう飲まなきゃやってられませんよォ。スライムのお嬢さんに酌してもらうことになるなんて、私はなんとも言えない人生になってしまったなあ」


 リンリンに酌されて酒に溺れる飲んだくれ神父と。


「ところで、お前のあの【イムセルフシェア】というのは、どういう力なんだ? 私のスキルがさっぱり無くなってしまったんだが……」

「あれなー。オレもよくわかってないんだが、とにかくオレの力であれば集めたり分けたり出来る的な? あ、でも一応分けられるヤツも実は決まっているみたいでな」

「そうか。返してくれ」

「ぜっっっったいヤダ。つーかあれはお前のじゃねえ。オレのだ」

「ふむ。折角傷も治り、お前とも仲良くなったから返して貰おうと思ったのだがな……」

「だからあれは元々オレのモノだっつってんだろ!? そもそもお前なんでオレの顔をしてるんだよムーカーツークーッ!」

「ひゃめひょう。ふぉうふぉひっふぁるな」


 ナナミに頬を引っ張られている元勇者様です。

 どちらも行き場を失い、カリンの家に居着きました。

 縁って不思議だね。俺もびっくりしてるよ。ただね。


「お前達、何もせずにカリンの家に居座るのはやめろ……ッ!」

「どうじてですかー、魔王様、あんたがぁ! あんたがぁですよ!? 連れてきたんじゃあ、ないですかァ!」

「そろそろ酒を抜けバカ神父。確かにお前を巻き込んだ方が得策だと思って連れてきたが、数日のんでんだらり飲酒させる為に連れてきたんじゃねえ」

「ぐずっ……つ、連れてきた人にまで否定ざれるんでずねえ、私はァ!」

「あーもう、落ち着け、リュオール神父。風当たって水飲んで酒抜いて来い」

「うう、ぐずっ、ばい……」


 彼の名はリュオール神父。元神兵(プリースト)であり、七層にある教会の神父さんである。

 俺はこれからの教会側の協力の必要性も考えて、リュオール神父を無理矢理連れてきたのだが……。

 あの死亡、復活、更には謎のアップデートで、余程精神的にやられてしまったらしく、自棄を起こして酒をかっくらている次第である。

 信仰していた唯一神に上半身を吹き飛ばされて殺されたわけだからさもありなん……。

 蘇生されただけ良かったものの、おかげで俺が神に貸しを作るハメになったし、それが後々毒のように効いてくる展開は勘弁して頂きたいものだ。


 取り敢えずリュオール神父を外へと叩き出して、俺は嘆息する。


「たく、ジーニアルの対応に追われてて放っておいたが……厄介な」


 ゲートの停止や、それに伴う移動なんかに色々つきあってやっていたら、かなり時間が経ってしまった。まあおかげ様で、数人の冒険者とは良い関係が結べたのだが。

 逆に流出した冒険者も多いし、まだこちらに対して疑念を抱く冒険者の方が圧倒的に多い。

 数えたわけではないが、大体三百人ほどが別の階層へと行き、残るのは二百人くらいだろうか


「魔王。それが終わったら、私達の話にもケリをつけて欲しいのだが」


 そう言うのは勇者大ナナミであった。そういえばコイツ名前無いんだよなあ。

 

「だから何度言ってもそこのバカを使っても絶対にオレの力なんだから渡さないって言ってんだろうがッ!」

「それは困る。私の戦う力が無くなってしまう。燃費は最悪だったが、使えるスキルが無いのは困る」

「お前さり気無くオレの編み出したすげー強いスキルを悪く言うのやめろ……!」


「はいはい、お前らそこまで。大ナナミには後で俺が色々レクチャーしてやるから、今はその無スキル状態で我慢しなさい。ナナミの方はなあ……、どうせロクに使えないんだから渡してやってよくね?」

「いいことあるか! 本当ならそこの野郎から絞れるだけオレの力を搾り取りたい気分だわっ! ていうか、オレの姿を返せ、このっこのっ」

「やめろ。私の胸を揉んでも何も戻ってこないぞ」


 くそっ、なんてけしからんことを……。

 じゃない。俺はナナミの肩をどうどうと押さえつけて、引き剥がす。


「なにするっ!?」

「まあ、お前の怒りも御尤もだが、コイツ自身が自分のことをわかってないんだから、何言っても無駄だ。無駄な労力は使うな。疲れるぞ」

「ぐおおおおおおぉぉ」


 無駄に人間らしさ爆発のナナミのおかげで、俺が冷静でいられるのは吉なのか凶なのか。

 とにかく我が侭、ありのままにひた進む彼女はなかなかまあ、カリンとは全く別の形で妹分のようで微笑ましくもある。


「みなさーん、ご飯出来ましたよー。プリムさんがご飯と嬉しい報告のためにスタンバってますから早く来て下さーい」


 客間の扉を開けたカリンが、のんびりとそう言う。

 俺がナナミを抑えながら疲れた顔を向けると、カリンは首を傾げた。


「あれ、どうかされましたか? 魔王様」

「いや、特にどうかはしてないんだけど、ちょっと個性的な面々が加わり過ぎた感じ……かな……」


 ため息しか出ないよ。

 そう思っていると、カリンの後ろから出でて、勢いよく止まる影が一つ。


「うわああああああカリン様、やっと仕事が終わったからペロペロしに来ましたァ―――ッ!」

「……よし、お前らまずみんな説教なッ!」


 ムカツクほど清々しい笑顔で飛び込んできたチェルシーにアイアンクローをかまして、部屋の真ん中に叩きつけて、黙らせる俺。

 そして、カリンを除いたその場にいた全員(と戻ってきたリュオール神父)に、俺は説教を喰らわせてやるのだった。


 俺さ、これから次の層に侵攻しようと思ってたのに、こんなんで大丈夫かなあって真面目にちょっと思ってんだ……。

 神様のことも、どう説明していいかわからんし、やれやれ困った。



 ***

 


 無駄に増えたただ飯喰らいと変態に、プリムさんのありがたくも美味い飯を提供した後は、そろそろ本腰を入れて六層に進出する話を始める。

 ホワイトボードは無いので、六層を描いた地図の中央都市に取り敢えず丸をつける。

 六層は荒れた大地広がる荒野のフィールド。

 その分、フィールドの見通しは良くて、ほどよく狩りがし易い層である。本来層ごとフィールドに存在する筈のユニークモンスター(性質上ボスなどに近いことが多い特殊モンスター)も存在しないため、確実に安全な狩りを進める冒険者達に重宝されているステージだ。

 ゲーム時代と大差ない構造をしているのは勇者時代に確認済み。

 問題はどちらかというと、層の構造や魔物などでは無く……。


「次、どう攻め落とすか案のある人は挙手しようか」


 食卓を片付けたあとの、各々好きに座る食堂。

 しーんと場が冷える。

 まあこの問題が一番難問である。

 前も言った通り、俺一人で冒険者数百人をぶっ飛ばすという直情的な案もあるが……。


「ハァ。これなんだよ。別にまた交渉で進めてもいいんだがなあ……」

「何か問題でもあるんですか?」

「六層は今恐らく一番冒険者が多い層だから、強気に出られるとあまりなあ……」


 狩りというのはやはり安全性と効率が物を言う。

 勇者時代に通った時の六層中央都市は、想像以上に活気に溢れ冒険者達用の酒場などが盛り上がっていた。

 七層ジーニアルが落ち着きのある住宅街や商店街だとすれば、六層は客引きも出店もなんでもありの歓楽街と言ったイメージになる。

 それだけ冒険者家業の盛り上がる層に俺が乗り込みに行っても、話しが面倒になるだけだろう。

 ジーニアルの時の場合は、外に遠征に行っていた冒険者なども居たし都市に滞在していたのは百人前後程度だった。その程度であれば、言葉やパフォーマンスで捻じ伏せるのは然程困難というほどではない。

 問題は流石に四桁以上の冒険者をそれらで捻じ伏せるのは容易ではないということである。

 数が多くなればそれだけ対抗する意識は明確に強くなるし、力もあるなら尚更抵抗しようとしてくるだろう。


 そういうのを交渉という舞台に引き出すのはいかんせん骨が折れる。

 なので別の手は無いかと考えていたんだがなあ。


「わかりました! ここは……袖の下ですね!」

「意見を出してくれて偉いなぁカリンは。金で解決するという汚い発案でなければ、俺もまた何も言わず『それで』と即決してやったんだが……」


 いっそアリなんじゃない? って気もするがな、ゲス作戦。

 ただこれは実現出来ないだろう。その理由は、さて。


「ここで実はみんなに早速、ジーニアルの税収が入ったから教えておこう」

「そうなのです! 実は先月分の税収の納付が終わってなかったので、スライド式で入ってきたんですよ! 税収が! ああ……お金……収入……なんて素晴らしい言葉でしょうか」


 税収の回収をお願いしていたプリムさんが、大きめの皮袋を抱えて荒ぶる。

 きっと元行商人の血か何かが騒ぐのだろう……。

 いや、そうでも誤魔化さないと貴重な常識人枠が減ってしまう……変人とモンスターだらけなんて俺も得しねえよ!

 

「さあ、あけます。あけちゃいますよ……!」


 プリムさんが皮袋の口を開けて、机に転がした。

 ざぁーと溢れ出るセン。あらわれた鈍色の金の硬貨に、全員が息を呑む。


「……これは」

「……小銭じゃね?」


 カリンとナナミが覗きこんで、言う。

 そう、小銭だった。一万セン硬貨はほぼ影も形も見当たらない。あ、一枚見つけた

 どれも劣化した乏しい魔力の発光具合しか示さないしょぼい硬貨ばかりであった。


「そ、そんな……な、なぜ……なぜこんな小銭しか無いんですか!?」


 喜々としていたプリムさんが、絶望のどん底に落ちたような顔になる。

 かき集めて数え出して、それが終わる頃にはまた絶望のどん底に落ちたような顔になっていた。


「あ……あれだけの重さの袋の中に……たった四万センぽっち……」


 愕然と手と膝を地に着けて絶望のポーズを取ったプリムさんに、かける言葉も見当たらない。

 まあ……若干予想はしていたことだ。税収が少ないと言うのは。


「まず、プリムさんは元商人だからわかるでしょうけど、中央都市は確かに生産流通全てを担う大事な都市ですけど、商業が盛んかどうかはまた層の特色に依るというのもわかりますよね」

「え、ええ……確かに最終層である七層は遺跡群。当たり外れの激しい宝に、強い上位モンスター、ボスモンスター。一発の大当たりはありますけど、それ以外では旨味が少ない故に冒険者からは敬遠されがちな層ではありますが……それにしたって……月毎の稼ぎがこれとは……」

「ゴルドフが課税を小さく抑えているのと、ポーションなんて高いものでも千センしませんからねえ。少数の冒険者に市民の数を合わせて考えれば、よく集めている方ですよ」


 セブンスは基本的にNPC店舗の商材が滅茶苦茶安い上、わりあい、効果が高いという問題点があったりする。

 何が問題点かと言うと、必死こいて効果の高いレア消耗品を用意する必要が薄い。

 他のゲームであれば、錬金、料理、ドロップ様々な要素を駆使してレアな消耗品をまで用意して万全を期すものだが、このゲームでは店売り品で大体事足りる。

 そのため、延々待てど待てども生産系の要素が追加されないという悲しい現実があったのだが……いや、そんなことは置いといて。


「というわけで、実はポーションなどの消耗品を揃えるくらいが関の山の予算しか手元にはなかったりします」

「そうだったのですね! カリンが浅はかでした。買収しようなどと……!」

「本来だったらこの元手でマジックアイテム(+つきの強化された武器防具)を買って荒事に備えたり、カリンの言う通り買収工作やら色々仕掛けられるものを仕掛けようと思っていたんだがなあ……」


 なにせ俺の防具は今『ぬののふく』みたいなものである。服しかありません。

 また鍛冶屋のおっちゃんに作って貰ってはいるが、特殊アイテムの生産はゲーム時代から運だ。

 性能どころか、生み出されるかすら運なので鍛冶屋でしか作れないような装備のマジックアイテムは滅茶苦茶高騰してたなあ……。

 そんな俺の思い出もどこ吹く風、プリムさんが実に奇妙そうに俺の方を向いて首を傾げた。


「魔王様、マジックアイテムが売っているような場所があるんですか?」

「ん? いや、どこでも売ってるだろ? 冒険者が」

「えっ」

「えっ」


 プリムさんの質問に当然のようにした返答が、更なる疑問の声で返されてしまう。

 露店なんてゲームでも珍しくないシステムだし、そこらを探せばこう……あるもんじゃないの?

 課金アイテムで露店システム! ……とかは無いだろうから、きっとどっかの店に委託したりとか?


「冒険者は自分に必要のない戦利品は基本的にギルドに売るんですよ。魔王様。だから市場には流れないんですけど、……まさか御存知では……」

「……そうなんチェルシー?」


 俺は無駄飯喰らいその三に質問する。その三は、「はい」と至って真面目そうに隣のカリンを膝に乗せて返事をした。いや、まあ、いいんだけど。本人が嫌がってないなら。


「そうですねー。マジックアイテムの売買に関しては個人間のやり取りも含めて許可制ですから、我々ギルド側以外に売れる場所が無いと言うのが実情ですけども。大体は都市の流通を守るためですから、安く買い取って滅茶苦茶高く売るみたいな感じになっちゃってますね」

「おおおおぉぉぉ……こんなところにも冒険者が無駄に強くならない闇が潜んでやがる……ッ!」

「内緒のやり取りくらいはあるでしょうけど……。まあ基本はギルドで買って頂くことになります。お買い求めは我々のギルドでお願いしますね♡」

「はよ言えや!? つうかオーナーみたいなもんから金を取ろうとするな! クソッ、寄越せ。いいから寄越せ!」

「いやっ、あのっ、冗談ですからっ、首をっ、がくがくしないでっ、ていうかっ、今倉庫っ、空ですからしてっ、セブンス様がっ、それ知らないとかもっ、知らなかったからしてっ!」

「いやあ、どんなものでもそこそこの値段で買い取ってくれるのはありがたかった反面、貰った金額とは桁がはずれた法外な値段で売られているのを見て心折られるのは冒険者が一度は通る道ですねぇ……」


 生意気にも媚を売ってきたチェルシー。なんか癪にさわったので、腹癒せがわりに首をがっくんがっくん前後に振り回してやった。

 ていうか神父も懐かしそうな顔でそんな悲愴なことを語らないで。

 だいたいの相場設定で売った品物が後日他の露店で二倍の値段で売られてて、それが買われているのを見て切なくなる気持ちになるからやめて。


 しかし、クソ、そうだったのか。『ギルド』がそういったことまで管理してるとは盲点だった。

 それにしても……どうしてここまで冒険者側に不都合なことばかり強いているのだろうか。

 王国側の思惑に意図的なものを感じるが、どういう意図なのかだとかは判然としないなあ。

 

「チッ、じゃあ結局今は風の魔脊と同じく収集待ちか……。本来ならここで、見事な金策とあのバカ神へのインターセプトを披露するところだったんだがな」


 俺の視線が、リュオール神父へと向いた。

 みんなの視線も追随して神父の方へとゆっくり向く。

 神父は、自分に向いた視線の意味がわからず、おどおどキョロキョロとこちらを見る。


「えっと、その……はい?」



 ***



「あの……ぼく……スキルを憶えに来ただけなんですけど……」

「そうだろう。そうだろうとも。うん、わかってるよ若い冒険者君」


 古びた教会の講堂で、おどおどという若く幼い冒険者。細い腕や足にミドルに切り揃えられた髪は中性的で、なるほど女の子と言われても信じてしまいそうだ。いや、性別は知らないけどな。

 ボーイッシュな女の子なのか、なよなよした男の娘なのかはさておき。

 歳の頃十四、五歳くらいの彼(彼女?)は俺を見て目を丸くして困惑を顔に張り付けて、回れ右をした。

 この若さで最終七層進出の人材。将来有望な若者を逃してなるかと取り敢えずその腕をがっしりとロックして、回り込んで逃走を阻止する。

 今のうちにがっちり癒着して、戦利品を俺達に献上してもらうしかないよな! な!


「なあに、最初は誰だってそんなもんだが、慣れれば気持ちよくなってくる」

「ちょ、ちょっと神父さん!? この魔王何言ってるんですか!? な、なんで教会にいるんですか!?」

「……すみません。色々あったんです」


 遠い目をするリュオール神父に、縋りつく冒険者も困惑の顔を向け、俺を一度見る。


「ここは……教会じゃなくなってしまったんですか!?」

「いんや、教会だよ。ただもうお前達は神に貢がなくて良くなったんだよ」


 かわりに。と俺は用意していた看板を出す。

 『一回スキル:時価 能力:時価』と書かれた看板を指差してから、自分を指差す。

 そう。俺の考えた金策とは、クソ神のかわりにスキル振りなどを行うということだ。


「俺がお前の強さを開花させてやろう。俺に貢いでくれ。どや?」

「し、神父さん!? どうなってるんですかこれは!? なんで魔王がこんなこと言ってるんですか!?」

「……悲しい事ですが、この教会から神は去り、今はただ王が座るのみなのです」

「意味がわかりませんよ!?」

「まあまあほら許可出して、許可。もうそれだけで俺が色々やったるから」

「きょ、許可……ですか?」

「お、いいね。見える見える。うん、なかなか良い纏まり方をしたステータスだ。ただちょっとバランス的過ぎるなあ。ウェポンマスターはスキルの無敵フレームを駆使すれば回避するのは容易なんだから、もうちょっと攻撃志向でいった方がいいぞ。うんうん」

「ちょ、連れて行かないで!? 神父様!? この人の言ってる意味わかんないんですけど、ちょ、助けてッ!」

「うん。レベル53か。そろそろ上がりがきつくなってくる頃だし、今のうちに調整すべきだぞ。なあに、俺に任せろ。全ての職業のキャラは一通り七層まで通用するくらいまで育てたからな。どの職のどのビルドでもバッチリだ。今のお前の強さなら、五万・五万の十万にまけといてやるから、さあ行こう。今行こう」

「ちょ、いや、待っ……きゃああああああああああああああああああああっ!!」


 YOSHAKOI。

 というわけで、奥まで連れて行き、徹底的にビルドについて指導してあげた。

 必要スキルを丁寧に振り分け、ステータスも(いつのまにか出来るようになってた再振りで)調整して

 小一時間ほどウェポンマスターのなんたるかを説いて解放してあげたのだが、


「……あ、ありがとうございます」


 最終的にうつろな瞳でVITとAGIの大切さを呟き再確認し続ける機械になってしまった。

 ……ちょっとやり過ぎた感もあるが、まあこれもコイツのため。

 ここでキッチリとビルドの方向性を頭に入れて成長して貰うのが一番なのだ。

いや、その通りに成長出来るかは知らんけどね。


「う、うう……こんなんなら高くても神様の方が良かったです……」

「まあまあそう言うなよ。参考になったろ?」

「なりました! なりましたし、意味がわからないと言ったところも丁寧に教えて貰って感謝してます!」


 じゃあ良い事尽くめじゃないの?


「でも……でもやっぱりなんか魔王に成長を見てもらうのは間違ってますぅ――――ッ!」


 一万セン通貨十枚を叩きつけて、彼(彼女?)は走り去っていった。


 ……俺と神父はそれを見送る。

 ふう、と俺はため息を吐いた。


「良い仕事をしたし、次の相手を待つか」

「え゛っ、ま、まだやるんですか?」

「当たり前だろう? この程度の小遣い稼ぎに来たんじゃない。移動拠点なんて便利なものがあるのに使えないのは嫌だしな。風の魔脊とかを買うための金、これで稼がなきゃ」


 ついでにあのクソ神への献上もインターセプト出来てるわけだから、最高じゃないか。

 料金も割安にしたし、ばっちこい冒険者。


 と思っていたのですが。


「……誰も来ないな」

「……それはまあ。冒険者の成長具合に依る仕事なので……」

「……そうか」

「……はい……」


 予約制になりました。

 


 

【リ・ビルド】

ステータス値を戻す。必要経験値七割が還元される。

ご利用は計画的に。

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