表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/63

限界を超えてみる

ちょっと更新が遅れてしまいました。すみません。


 ――峡谷。

 左右が高い崖に挟まれており、細い川が流れている。

 つまり逃げられない。

 後退……そんなことしてみれば戦線が崩れるのは目に見えている。


 「なんだかなー……」

 「カチカチカチカチ」


 いまだカチカチという音を絶やさない魔鬼メガ。

 周りには、雑魚共の屍と混じって、赤黒い液体を垂らしているバラバラの人体の部位。

 正直いって、かなりグロイ。

 現実の死体は質感からして違う。

 

 「何人犠牲になったんだよ……」

 

 大きな溜息を漏らす。一気に脱力する。

 俺が倒すべき敵はたった一体。

 一体とだけ聞くと、楽だと思われるかもしれない……つまり楽ではない。


 通常の魔鬼の数十倍もの大きさという規格外。

 だけど戦うしかない、それしか無事に帰れる方法がない。

 こんな事になるなら依頼受けんるんじゃなかったと後悔しても遅いか。


 「おい、一体なにが……?」

 「! こっちへくるな!」


 俺は冒険者の男に叫ぶが、もう遅い。

 男の姿が魔鬼メガの視界に入った時点で、もう勝負が決まっている。

 

 「カチカチカチカチ」

 「ぐぇあぁぁ!!」 


 魔鬼メガの無数の足によって男がバラバラにされる。

 しかし、俺は助けには入らない。だってそんなことしたら俺が死んじゃうもん。


 圧倒的な大きさに、多くの武器。

 手のような二つの鎌の他に、奴が生やしている無数の足。

 明らかに武器を乗せすぎだ。後ろのほうなんかムカデみたいで気持ち悪い。

 

 


 強さ:凄く強い


 魔鬼メガの頭の上には、そんな文字が浮かんでいる。

 こういう時だけ、このスキルは使える。こういう時だけだけど。



 「どう攻めたものかな……」


 これは困った、非常に困った。

 あの足の数からして、どの位置から攻めても攻撃が俺を容赦無く襲うだろう。

 それはダメだ、俺が死んでまう。


 ちなみに、スキルでの強化はしてある。

 それでもなお敵が強いのだ。

 

 例えば、魔鬼メガの鎌が両方とも俺に向かって振り下ろされたら?

 おそらく防御力を十倍にしても防ぎきれない。

 

 「カチカチ……カチ!」

 「はっや――!」


 鎌を振り下ろす速さが尋常じゃない。

 まるで一閃の光のように振り下ろされた一撃をなんとか回避する。

 あぶねぇ……すこしでもスキルの発動が遅れていたら、そう考えるだけで冷や汗が頬を撫でる。


 「……え?」


 ガラガラガラガラ!!

 魔鬼メガの鎌によって崖が砂の城を壊すような感覚で破壊される。

 いや、そこはただの崖ではない。あそこはチームの拠点だ。

 あそこには、伝達班がいるはずだ。


 「ちぃ……!」


 崩れる岩と岩を飛び移り、何人かの救出に向かう。 

 幸いそこまで人数がいるわけではない。運が良ければ全員助けられる。

 少し荒くなるかもしれないが、そこは我慢してほしい。


 「一人目!」

 「へぇえぇっぇ!!」


 俺は怪我人の背中に勢い良く蹴りをいれる。

 大丈夫、怪我人が着地するのは屍の上だ。硬い地面ではない。

 俺が助け出した人間たちは屍のクッションのお陰で息はしている。


 

 

 

 「そろそろ攻め込むしかない……」

 

 あんまり奴とは戦いたくはないが、現状がそれを許さない。

 俺は、剣等には長けているが、魔術なんかはからっきしだ。

 魔術があれば、この状況も……いや、無いものにすがるのは良くない。


 

 俺に助けられた何十人かが息を呑んで見守る中、戦いは始まった。


 「ブースト!」


 速さを通常の十倍に強化。

 体が格段に軽くなる。まるで背中に羽が生えたような錯覚を覚える。

 これでも避けられるかどうか怪しいところだ。

 剣をダランと構え、姿勢は低くして、走り出すタイミングを計る。


 (いけ……!)


 俺の体が弾丸……いや、大砲と化す。

 かかとを浮かし、つま先だけをを地面に付けながら走る忍者のような走り。

 その走りは華麗とは程遠く、もっと猛々しいものだ。


 「これに反応すんのか!」


 飛来してくるは無数の足。

 その足は、遮るものは無いとばかりに地面を簡単に抉る。

 俺の回避ルートを遮るかののように、人間の五倍程の槍のような足は絶えず猛攻を繰り返す。


 だが、後ろには引き下がれない。

 槍の足を避けるときには、必ず前へ一歩進んで避ける。

 後方に下がってばかりでは、攻めなければいけない時に攻め切れない。


 だから、あえて魔鬼メガへ迷い無く突進する。

 少しでもこの刃が届き、奴の頭部を叩き割るために。


 


 『君が力を望めば、その力は勇者、英雄、賢者にだって届くだろう』


 ふと少年の言葉が俺の脳内で再生される。

 色々あったが、あの少年が俺にこのジョブを与えてくれなかったら、今頃どうなっていただろう。 

 あの少年には少しくらいは感謝してもいいのかもしれない。


 「……はぁ…!!」

 

 空気を吐き出す。

 自分の限界の更に上の速さを手に入れるために最低限モーションでかわす。

 危な……! アイツの足は何本あるんだよ!?


 「っらああぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 何百とある魔鬼メガの足を一閃する。魔鬼メガの足は根元から斬り落とされ、傷口からは青紫の体液が濁流のように溢れる。

 よし……これで奴の攻撃力は大幅ダウンするはずだ。


 「カチカチェカチカチェ!」

 「そっちも使うのかよ!」


 アイツ、自分がピンチだからって鎌を振ってきやがった。

 振り下ろされた二振りの鎌を寸での所でかわす。

 何……!? 速くて見えないんだが。

 

 「カチカチカチカチカチ――――!」

 「だから見えないって!」


 魔鬼メガが勢いよく自慢の鎌を横に薙ぎ、大きな光の軌跡を描く。

 しゃがみ込むような姿勢をとり、死への恐怖に怯えながらも回避に成功。

 今更ながら自分の神回避能力に驚く。


 しかし、鎌はもう一振り残っている。

 俺を真正面から叩き割ろうとする鎌を剣でいなす。

 剣でいなした直後に、突如肩に熱いものを感じ視線を移動させる。


 「ぅぐっ!」


 肩が二センチほど鎌によって切り落とされていた。

 痛い、たかが二センチだと侮っていた俺が馬鹿だった。肩が2センチも削られれば、当然、多量の出血をする。

 もう片方の手で、出血している肩を圧迫する。

 

  

 『君は勇者、英雄、賢者にも届くだろう』


 何が届くだろう、だ。

 実際問題、勇者に追いつく前に、ここで死んでしまってもおかしくない。

 所詮"もどき"には無理だという事だろうか。


 無理、強さの限界。

 親父やガル爺クラスの力を手に入れることは一朝一夕にはできない。

 それこそ何十年も修練に修練を重ねなければ。


 この世界に召喚されて数年しか経っていない俺が倒せるのか、これを?

 

 ――――いや違う。

 俺は、どんな事があろうとも、奴を倒さなければならないのだ。

 目の前に浮かぶのは一人の少女。

 そう、エンナだって必死で今、戦っている。何体いるか分からない魔鬼を相手に。

 少年の言葉など関係ない。俺は自分の役目をするだけだ。


 ――――パートナーである少女に胸を張れるように。



 

 「いくぜ、糞野郎」

 「カチカチカチカチ」


 俺の目に、再び闘志の炎が灯る。

 剣を振れるのは、多くて十回、それが限界だろう。

 

 剣を両手に構え、再び懐へ入り込む。

 二振りの鎌が俺めがけて、音越えの速さで振られる。

 だが、俺は避けない。


 「がぁぁっ!」

 「カチカチ……!?」


 真正面から鎌を弾き返す。

 左肩の焼かれる様な痛みに耐え、剣を振りぬく。

 弾き返された反動で魔鬼メガが大きく仰け反り、無防備となる。


 「まだだ!」


 俺がそんなビッグチャンスを逃すわけがない。

 重力に逆らいながら、凹凸の激しい魔鬼メガの体躯を駆ける。

 魔鬼メガが体勢を立て直すが、もう遅い!

 俺は、とっくに生物の即死部位である頭部にまで登頂している。頭部を破壊されれば息絶える、魔鬼も例外ではない。

 

 「終わりだ……っはぁ!」

 「カチカチカ……カチカ……カ」

 

 洪水のように溢れ出る青紫の体液が俺の視界を遮る。

 断末魔と共に、魔鬼メガは銅像のようにピクリとも動かなくなる。

 魔鬼メガの頭部が、ゴトッ という鈍い音を立てて地面に小さなクレーターを作る。



 「やった……ぐ」

 

 肩の痛みに顔を歪めながらも、口だけは笑っている。

 これでエンナにも馬鹿にされずに済みそうだ。

読んでいただきありがとうございます。

感想くれるとありがたいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ