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森の中で

感想いただけるとありがたいです~

 --鳥の声が聞こえる。


 うっすらと目を開けながら俺は起上がる。

 体の節々が痛い……寝相が悪かったからか?

 とりあえず二度寝するために、また草の上に寝っ転がる。野宿なんて始めての経験だ。


 「おう……目覚め悪いな……」

 

 暑いな……いくら森の中といえど太陽の無慈悲な光線は降り注いでくる。 第三ラウンドへ行きたいところだが、いつまでも寝ているわけにはいかない。


 昨日、知らない内になんだかよく分からない所にいたが、一体あの部屋はどこなんだろうか。

 

 二人のローブを羽織った男に斧を担いだマッチョの中年男は俺の知っている日本の服を着ていなかったし、マッチョに関して言えば模造でもなんでもない本物の斧を所持していた。 



 「考えても仕方ない……そろそろやる気だすか」

 

 とりあえずあの魔法陣が描かれた部屋のことは考えないようにしよう。

 別に知らなくたって現状が大きく変化するわけでもないだろうしな。

 


 「腹減ったな……」

 

 森か……なにか食べられるものはないだろうか? 汚い、傷ついてるとか細かい事は言わないから食べられるものが欲しい。

 最悪、ここでサバイバルを強いられるかもしれない。


 

 (できれば果実が好ましいが……ってここ、さっきも通らなかったけ?) 

 

 


 え? 遭難しないかって? 大丈夫だ、遭難の心配はない。

 なぜなら、起きた時には左右前後が森だけだったし、日本じゃない時点で遭難の域を超えてる。

 できれば野生動物に食べられて死ぬという結末は避けたいところだ。


 「遭難か。これからどうすっかな。焦っていないのが不思議だな」


 そんなことを空に呟いてみる。

 日本にいた頃が懐かしいと思ったりするのだがホームシックはよくない。無いものねだりだ。


 途中でブルーベリーによく似た果実を発見し、それを口に運ぶ。


 「まんまブルーベリーじゃねぇか」

 

 少し渋いが食えなくは無いので、腹をブルーベリーで満たす。

 しかし、腹を膨らませたはいいが、俺には二つ問題がある。

 

 まず、服がないこと。これは後で対処する。

 そして圧倒的に血の量が少ない。いまでも頭が少しクラクラする。肉が食いたいが、さすがにモンスターは食いたくない。つか武器無いし勝てない。異世界なら武器欲しいな。



 「なにか他に手がかりは……あ、ステータスがあったか」


 なぜかこの世界はどこぞのSF世界のように液晶がないところから画面が開けるというロマン溢れることが可能だった。


 このサバイバル状況を打破する為にステータスを開く。

 俺が思うと、すぐにステータス画面が現れた。気が利くな。

 

 あまり手がかりとなるものはない…っと思ったがあった。

 念話というアイコンを選択すると『人ならざる者』とかいうようなおかしなものが出てきた。

 つか、人ならざる者って……何か痛いやつだな。


 とりあえず選択するとしばしの沈黙の後、相手と繋がった。

 一体誰と繋がったんだ?




 『どちら様でしょうか?』

 

 ん?この声は聞いたことがあるぞ。

 俺をこの世界に連れてきた感情の全くない女の声だな。

 お前か、緊張して損した。


 『誰かと思ったらあなたでしたか。その後は勇者になれましたか?』

 

 勇者じゃなくて城で殺されかけたんだが……ていうかお前さ、俺が死んだとき、『こちらの世界はあなたを必要としています』とかなんとか言ってなかった?


 『それは……運ですね。もしかしたら勇者になれるかもというものであって、勇者に確実になれるというものではないのです。あえて言わせて貰えば、素晴らしく運が無いということです』


 ……なんだよそれ、あんまりじゃないか。

 そしたら勇者になれなかったんだから少しくらい何か貰えないのか? この通り丸腰なんだよ。

 なんかチートくれたりとかさ。


 『そうですか。大変でしたね。チートというものに関してですが、我々はこの世界にいるあなたには与えられる力はありません。あえて言えば、そのジョブがギフトです』


  

 なんだよ。何の恩恵も貰えないのか。

 俺のジョブについては一切触れない。後でゆっくり見てみよう。

 あと、お前本当に申し訳ないと思ってんのかよ。


 『はい。とても残念でしたね、はい』

 

 全然残念そうに聞こえんぞ。つか、はいを二回言うな。


 『お詫びにこの世界のことを説明しましょう』

 

 もう勝手に説明してくれ。聞き流してやるから。


 『はい。では説明しましょう。まずこの世界はトザートと言われております。また、この世界は魔界と人間界とで分かれております。』

 

 マジで異世界なのかここ。

 驚きたいがボーとしてしまって気力が湧かんな。はい次どうぞ。


 『はい、以上で説明終わりです』

 

 は!? さすがに説明早過ぎだろ。

 いや簡略化されて分かりやすかったけどさ。なんか適当にやってないか?


 『ではこの世界での健闘をお祈りしております』

 

 マジで説明終了!? 

 まあいいさ……精々エンジョイするよ。


 『あと、この近くには町があります。夜になれば町は明るくなりますから場所もわかるでしょう』

 

 重要!それすごく重要だから!!つか、それ先に言えよ!


 『あと…』

 

 ん?まだ何かあんのか?


 『この念話は今回、一回限りの使用となります』

 

 は?

 女がそれを言ったと同時に念話のアイコンが消えた。




 一回限りの使用だったのなあの念話。

 この世界のことはいいとして、とりあえず町に行きたい。

 町に行けば色々と情報が集まるだろう。 

 まあ、その町も夜にならないと場所がわからないんだったけか。まあ夜になるまで気長に待つとするか。



  しばらくすると俺は重大な問題に直面した。

  そういえば俺は全裸なのだ…………。

 

 おそらく町に行くことは簡単だろう。だが非常に目立つ。

 たぶん、この国の警察がくる。まあ9歳だし温かい飯の一つも出してくれるかもしれない。


 「問題は……」

 

 問題は、兵士に囲まれている全裸の少年という非常に目立つ構図である。 もしさっきの俺を召喚した男たちに見られたり、そんな情報が男達の耳に入ったら今度こそ処分されるかもしれない。


 一瞬、大事な所だけを葉で隠すという戦術も考えたが、おそらく裸でいるのと同等のレベルで目立つだろう。この意見は却下だな。


 『あ、そういえば……』


 一方的に切られたはずの念話が再度接続される。

 用件があるなら早くしろ。俺はこれから衣食住の内の衣をどうするか考えねばならんのだ。

 

 『貴方は何も持たず、この世界へ転生してしまいました。私も同情しております……ぐすん』


 棒声でサラッと嘘つくな。

 用件があるならさっさと言え無機質女。


 『ですので、私……というか私の世界にいる他の者からささやかなプレゼントがあります』


 女がそう言うと俺の眼下に麻袋と所々錆びているタガーが現れる。

 なんだこれ?


 『タガーの方は武器として、麻袋の方は適当に千切って服の代わりにでもして下さい。それとスキルも付与させておきました。あとでご確認を』

  

 「ふざけんな」


 錆び始めたタガーに麻袋の服とか冗談にも程がある。 

 麻袋に関してはまんまだ。自分で作れとか手抜きすぎだろ。


 後はスキルとか言ってたな。

 俺はわらにもすがる様な思いでスキルラ欄をチェックする。一つしかないが、まぁ無いよりマシというものだろう。



 スキル:アルバスラッシャー

 効果:攻撃力10倍  発動条件:相手が<すごく強い>


 

 「……あ」


 俺はそのスキルを見たと同時に悟った。

 きっとこれは通常モンスターには使えないスキルだな、と。


 『それでは私はこれで失礼します、良い旅を』

 「ちょっ、おま――」


 俺の制止などには耳を傾けず、またしても一方的に念話を切った女。

 一体どうすればいんだ。町の居場所は聞いたがそこでうまくやっていけるのか?


 「……なるようにしかならんか」

 

 変に物事を考えることをやめよう。

 こういうものは現地に着いてからじゃないとどうにもならない。 


 麻袋を適当に千切り、それっぽい服を作っていく。

 タガーを右手に握り締め、長い髪の毛を切れ味の悪いタガーで切っていく。


 今ここで女を恨んだって仕方が無い。いない人間を恨むなんて馬鹿らしいことだ。

 

 それよりもポジティブに物事を考えてみよう。

 俺は前世では歩くことすら厳しかった。しかし、この世界では自由に走り回れるのだ。うん、それだけで充分だろう。 

 

 「一度消えた命だし、駄目もとで頑張ってみるか」


 麻袋を着た俺は電池が切れたように眠った。

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