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案内人の代理人

 「が…がぎ…」

 「トモくんが動かないよ! どうしよ親父さん!」

 「心配するなライル。ただの筋肉痛だ。あと二日もすれば治る」

 「そうなの?」

 「ああ。それにしてもガルハールの奴、トモが動かなくなったらどうすんだよ。あいつは加減というものを知らんから困る。一体トモをどんな化物にしたいんだか……」

 「親父。俺もう動けないんだけど」


 俺は布団に仰向けに寝ていた。

 昨日から筋肉痛が痛すぎて、寝返りをうつ度に全身から危険信号が送られてくるのだ。首すらも動かすのがきついので天井しか見れない。

 それにしてもこんなに痛い筋肉痛は生まれて始めてだ。いっそのこと昇天してしまったほうが楽だ。


 「んじゃ俺は店の準備があるから。あとトモに朝ごはん食べ差しといてくれよ」

 「りょーかい」

 「カーテ到着! トーモご飯持って来たよ。今から食べ差したあげるね」

 

 親父と入れ違いに部屋に入ってきたカーテ姉さんはプレートを持っていた。そのプレートには今日の朝ごはんが盛られている。

 俺は上体を起こすこともできないためカーテ姉さんが「トーモあ~ん」と言いながらパンを口までもってきてくれる。しかしそこでライル姉さんが動いた。


 「カーテ、トモくんに食べさせる役は私が引き受けるわ」

 「何でよ。横取りしないでよライル」

 「いえ私は親父さんからトモくんに朝ごはんを食べさしてくれって頼まれたの。だから私がやるわ」

 「カーテだって朝ごはん持ってきてあげたもん。カーテがトーモに食べさせるの!」


 なんという馬鹿姉達だ……どっちが俺に朝ごはんを食べさせるかでケンカを始めている。俺としては微笑ましい光景だが早く食事を食べさして欲しい。


 「私がやるの!」

 「カーテが食べさせるの!」 

 「二人共ちょっといいかな。このままだと決まらないからじゃんけんで決めたら?」

 「そうね。ナイスよトモくん」

 

 カーテ姉さんとライル姉さんはじゃんけんの姿勢に入る。いつに無く目が真剣だ。そこまでじゃんけんに真剣になる人を俺は初めてみた。

 

 「いくわよカーテ……」

 「カーテは強い…カーテは強い」

 「「じゃ~んけん、ポン!」」

 

 結果はライル姉さんがグーで、カーテ姉さんがチョキでライル姉さんの勝ちだ。一方は跳ね踊り、もう一方は敗北に打ちひしがれている。


 「トモくんあ~ん」

 

 こうして俺はライル姉さんに朝ごはんを食べさしてもらった。






 「さて……暇だな」


 姉さん達が部屋から出て行くと静かになり、鳥の鳴き声がよく聞こえる。最近ずっと昼はエンナと狩りに行ってたから、暇なときの過ごし方が思いつかない。

 

 「体は動かせないし……妄想でもするか」


 こうして俺は妄想に浸る。病院でもよくやってた。この妄想は主人公が魔族を倒すために仲間を集め魔王を倒すというRPGみたいなストーリーだ。ちなみにラスボスは王様とか女神だったり、終いには堕天使ルシファーとか出てくる。


 「さて、今回はどんな話にしようかな。やっぱり主人公は強い方がいいよな」

 

 そんな感じで構想を練っていく。これが意外と良い暇つぶしになるのである。とりあえず魔族の登場は必須だ。あと仲間は主人公についてこられるように強めに設定する。


 「うん。こんな感じか」


 俺は妄想RPGを起動させる。これはだいたい4時間で終わる。けっこうアバウトに作るからな。細かい設定とかはしない。






 主人公は剣を持ち、魔王城に特攻を仕掛ける。敵はおよそ十万…圧倒的だ。それなのにもかかわらず主人公は笑みを浮かべる。そして主人公の周りには共に戦い抜いてきた三人の仲間がいる。ちなみにパーティーは四人までというのが俺の中でのルールだ。


 主人公は剣を横に薙ぐ。たったそれだけの行為で魔王軍の魔族達が千体消えて、仲間達も魔法や範囲攻撃を使い、次々と魔物を撃破していく。圧倒的な戦力差だ。


 そのまま主人公達は魔王城を駆け上がり、最上階に到達する。そこで主人公を待っていたのは、かつての主人公の彼女だった。彼女は主人公に裏切られた恨みで堕天してしまったのだ。


 主人公は彼女との一騎打ちをする。その攻撃は彼女の黒いオーラを浄化していき、最終的には和解してハーピーエンドだ。

 

 「本当にこんなんだったら楽しいだろうな~」


 今のはもちろん妄想だ。俺的には良い時間潰しができたと思う。俺の中の妄想キャラクター達はだいだいチートを持っている。そうでもしなきゃボスに倒されてしまうからな。

 

 


 

 そうして時間潰しができたことに俺が満足していると、いきなり俺のステータスが浮かび上がる。そこには消えたはずの念話の二文字。


 「え? なんで?」

  

 俺は驚きながらも画面をタッチする。〈案内人の代理人〉と表示され、タッチすると相手と繋がる。


 

 


 『え~テステス聞こえてる?』


 聞こえてるぞ。

 ちなみに声は少年の声だ。前の無機質女の声とは違う。


 『無機質女……ああ、あの人のことか。面白いあだ名をつけるね、君』


 それはどーも。そういえば聞いていなかったが何で無機質女じゃなくて、出てくるのがお前みたいな少年なんだ?


 『ああそれね。簡潔に答えると、あと一年くらいで勇者が召喚されるからだよ。それであの人は勇者の案内役に抜擢されたから、君には僕がついたってわけ。わかった?』


 大体分かった。それにしても勇者が召喚されるって、俺みたいに失敗とかじゃなくて本当の勇者が召喚されるのか?


 『うん、そうだよ。僕達にはそれが分かる。なんとなくだけどね。君の場合は勇者になる一歩手前まできたんだけど踏み外してしまった……そんな感じかな』


 そうか。俺は勇者になる可能性は一応あったのか。だが不思議と今では悔しくもなんともない。


 『え? 悔しくないの? 不思議な人間だな~。前の君からは考えられないよ』


 そうかな。

 そういえばお前は何で俺に話しかけてきた? 自己紹介の為だけか?


 『そうだ思い出した。君には言うことがあったんだ。たしかこのページにあったはず……これか。 じゃあ話すからよく聞いててね』


 大事な話だろうか? 少年は改まって少し間を置く。こうされると、こっちまで緊張してしまう。一体なにを話すのだろうか?


 『君には元の世界に戻る方法を教えよう。どうだい、良い情報だろ? また日本に戻ってパソコンやらゲームやらをできるんだぞ』


 元の世界に戻る方法か。たしかに魅力的な情報だ。そういえば帰還方法は考えてなかった。というか考える暇が無かった。

 一度俺は思案してみるが元の世界に帰ったところで病気だから、こっちの方が百倍マシだ。てなわけだから元の世界には帰らなくていいわ。


 『そうか……じゃあ病気を治したあげるよ。それならやる気出る?』


 病気に犯されることなく人生を生きることができるのか……それは良い提案だ。しかし会社で仕事するよりもここで給仕してた方が楽しい。


 『ぐぬぬぬ……なかなか手強いね君。こうなったら最後の手段だ。元の世界に帰る条件を満たしたら、君が病気になる前――つまり9歳に年齢を戻して病気の無い生活をさせよう。簡単に言うとやり直しだよ

 

 これはまた魅力的な提案をしてきた。つまり地球でまたやり直せると……良い条件だが、この世界も捨てがたい。


 『君は、中学と高校には行っていなかったようだね。その病気のせいで。取り逃した青春を謳歌したくないの?』


  そうだ青春だ。俺は当時、部活や買い食いに憧れていた。中高時代をベッドで過ごしてきた俺にとって青春とは、すなわち未知の領域だ。

  元の世界に興味が湧いてきたのから話だけでも聞こうじゃないか。


 『やっと聞いてくれるの? それじゃ説明するね。元の世界に帰る方法は簡単に言っちゃうと、四つの迷宮を踏破して、魔鬼を倒すことだよ』


 なるほど迷宮か。大変そうだな。あと魔鬼ってなんぞ?


 『いつか魔鬼はこの世界に必ずやってくる。その時に説明するよ。それじゃ伝えたことは伝えたし念話切るよ』


 オーケー。重要なことは大体聞けた。もう切っていいぞ。


 『あと、念話に関しては僕からの一方通行だから』


 少年がそう告げると念話が切れて、画面の念話の文字が暗くなっていてタッチしても反応しない。つまり奴から必要だったら連絡が来るということか。



 

 これで俺にも明確な目的ができた。

 魔鬼は始まっていないらしいので、当面は迷宮踏破を目的にして頑張るか。

 

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