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『 前衛魔の歩む道 』  作者: きあら3
- 第弐章 Crafter -
15/17

第参話 - なんでいつもこうなるかな -

「う…うぅ…。」


「わ…悪かったわよ、本当に。まさか男の()とは思わなかったし…。」


「…なんか字が違いませんでした…?」




あの後、女に間違われるという理不尽を味わってから泣いた。えぇ、失意前体屈の状態で心の中で大泣きしましたとも。


リアルの時から女顔ってのは自分でもわかってたけど、この世界だとそれ以上に間違われている気がする。


義理の妹からはお姉ちゃんと呼ばれ、通りすがりの人には顔をそらされ…男としてのプライドがズダズダだ。


アンネさんはそんな僕を必死に慰めている。




「ほら、泣かないの。男の子でしょう?ほら、お菓子どんどん食べていいから。」


「そうですか、頂きます。」




瞬時に泣きやみ、何の遠慮もなくどっしりと木で出来た椅子に座ってお菓子を啄み出す僕を見て、アンネさんは何か唖然とした表情をする。




「え…なんでお菓子程度で泣き止むの。男の子が娘と間違えられた事についてのプライドはどこへいったの?」


「甘いものの前にはプライドなんて軽い物は消え去るのです。」


「安いわねー…貴方のプライド。大体性格がわかってきたわ…。」




なんか疲れるわー…とため息をつきながらアンネさんは僕と向き合うようにすぐそばにあった椅子を引っ張り座る。


そして彼女も机の上に置いてあるお菓子を掴もうとしたが、その手を軽くはたく事によって阻止した。




「僕のだよ。」


「も、もとは私のお菓子でしょ!」


「冗談だって。」




2割ぐらいは。アンネさんに軽く笑いかけながら、次々口の中にお菓子を突っ込む。


もういいわよ、と言わんばかりにアンネさんは呆れ顔で手を横に振ってお菓子を食べないことを手振りで示し、そばにあったお茶が入ったコップを掴み、啜っていた。


仄かにお茶のよい香りがここまで漂う。そして、コップを口から離すと机に置いて、気を入れなおしてこちらに身体を向けた。




「さて、ほんわかとするのはここまでにしましょう。装備の種類は、えぇっと中装見たいだけど―――」




何かを言いかけて困惑した顔で僕の装備をじぃっと見つめる。…あぁ。なるほど。僕の装備の組み合わせがおかしいからか。


背中に両手棍(アッシュスタッフ)自動小銃(Mk14)を携え、腰に短剣(ブロンズダガー)を刺すという余りに奇抜すぎる僕の姿を見ればどんな防具を作ればいいか判断に困る事に間違いは無い。


つまりは、防具をどういう方向性で作ればいいのか判断に困っているというわけだ。




「あぁ、僕の本職は魔導師ですから出来るだけ軽い装備がいいです。」


「あら、ならその銃は飾りなのかしら?」


「そんなことはないですよ。使うときには使いますから。」


「…でも、両手武器を二つ背負ってさらに中装は重くないかしら?」


「うッ…。」




それは否定できない。事実、背中が重いせいで少し動きにくかったりする。この前の妹と協力して眠れる大羊を倒した時は、僕は銃を捨てることによって重量という問題を解決していた。


すばやく武器を切り替えるためにそういう方法をとるのもいい事もあるかもしれないけれど、直ぐに回収ができないという大きなデメリットがある。


なので、必要な時が来たときにそこらへんに放り投げていた場合苦労する羽目になりそうなのは容易に想像できた。


だからと言ってずっと背負っておくわけにはいかない。重量によって僕の敏捷性が失われ、敵の攻撃に被弾する確率が増えるからだ。


更に、僕は紙装甲であることを忘れてはいけない。体力、耐久ともに平均よりずっと下ランクの僕にとって攻撃を受けるということは致命的だ。




「銃のほうを片づけておきます…。必要な時には直ぐに取り出して使えばいいし…。」


「それが懸命よ。見るからに防御能力が低そうだからね。ウィンズ君は。装備は軽装でそろえてみるわ。」




そんな声を聞きながらも泣く泣く自動小銃をアイテムボックスの中に片づける。木製の古き良き銃は光の粒子となって散って、僕の鞄へと吸い込まれるように消えていった。


その代わりに短剣の入った鞘を左腰から裏腰へと変えて、留め具にベルトを通して固定する。装備の場所を確認していると、アンネさんが僕に向かって何かを放り投げてきた。


それをキャッチし確認する。見た目は金属の留め具で固く固定された茶色の革だ。




『レザーレッグホルスター』収納

内部に拳銃サイズの銃を納める事が出来るホルスター。




「ほら、そんなに銃を付けていたいならこれでも装備してなさい。」


「あ、ありがとうございます。」




この装備はありがたい。腰に護身用の武器を何個も何個も付けるのは取り出すのに邪魔になるし見た目も悪い。そこでこのような補助装備をすることによって腿や胸などに武器を装備するようにできるのだ。


お礼を言ってからその貰った装備を右腿のスラックスの上にズレたりしないように小型のベルトでしっかりと固定して装着した。


そして、ホルスターの中にアイテムポーチから出した自動拳銃(PMマカロフ)を突っ込む。少々厚みが足りず横幅がきついが、これぐらいあったほうが抜けたりしなくて済むだろう。




「っていうか拳銃系の武器も持ってたのね。ウィンズ君の鞄の中は一体どうなってるのか物凄く気になるところだけど…まぁそれはまた今度というわけで―――」




そういうとアンネさんはどこからもなく、手にメイド服を持ち僕のほうへとにじり寄ってきた。


その様に僕は危機感を感じて椅子から立ち上がり、逃げようとしたが既に時遅し。腕を掴まれてしまった。




「―――男の子がコスプレするってのも楽しそうよね?」


「…へッ?」






□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□






結果、あの後僕は着せ替え人形となりひとつで終わると思っていたコスプレ服も何服も着る羽目になってしまった。


その時のアンネさんは僕の着替えを見るたびに口と鼻から迸る愛を手で押さえながらテンションが天まで上がってしまい、幾度か回復薬を飲んでいた。




「ありがと~、おかげでいい目の保養になったわ~♪」


「はは…燃え尽きたよ。」




真っ白にね…。もうお嫁…じゃなかったお婿に行けない…。


さらさらと灰となって風と共に飛んでいきそうな身体を保ちながら、さめざめと部屋の端で泣いている僕にトントンとアンネさんは肩を叩いた。




「はい、これが報酬よ。軽装一式そろえて作って置いたわ。向こうの部屋で着替えてきなさい。といっても材料が無くって大したものは作れてないけどね…。」


「い…いつの間に…。それでも防御力が上がるだけでも十分ですから。それに軽くなってすばやく動けそうですし…。」




報酬である布で出来た装備の一式を貰い、部屋を移動して作ってくれた装備に着替える。




『銅の髪飾り』頭部 軽装 Rank.6 Mana増加


『リネンローブ』胴体 軽装 Rank.6


『リネングローブ』両手 軽装 Rank.6


『リネンズボン』両膝 軽装 Rank.6


『リネンクロッグ』両脚 軽装 Rank.6




茶色の麻布でゆったりとしたローブに、黒いズボンを履き、スカートの様にピラピラした裾の下の右腿には革のホルスターが付けられている。手袋は手先が使えるように指先が切り取られていて、すごく使いやすそうだ。


そして、僕の左耳の上には銅で出来ている髪飾りが付けてあった。魔力増加の効果はうれしいがどのくらい効果があるのだろうか。


まず、着てみた感想は…軽い。前まで革と布の装備の重さの差は歴然だ。でも、防御力の面は大丈夫なのだろうか?布なだけに物理的な攻撃にはとにかく弱そうだ…。




魔法職(メイジ)が前にでちゃ駄目でしょ?軽装備で前に出ていいのは回避力の高い斥候職(スカウト)だけよ。」




怒られてしまった。あとで防御力に関する対策法を考えておかないとなぁ…。ところで気になったのだけど、この髪飾り防御性能にどう関係してるのだろうか?


髪飾りが気になって触っていると、アンネさんが僕の考えている事を読んだのか説明を開始する。




「髪飾りは物理攻撃に対しての防御力は無い代わりに魔法防御力が高いの。それに髪飾りは初期状態から魔力(Mana)知力(Int)をブーストする能力があるのよ。よく覚えておきなさい。」


「なんでそんな事が分かるの?」


「装備を細かく鑑定するスキルを持ってるからよ。」




職人にとっては必須のスキルだなぁ…。装備の能力の詳細を見れるって便利すぎる。




「そのスキル、どうやって覚えるんですか?」


「全製作スキルを覚えておくことが前提だけど…。」


「無理ですね、はい。」




製作スキルは二つしか持ってないので今の状態では無理に近い。時間をかければ出来ない事はないのだけど…。しかも今前提って言ってたから他にもまだやらないといけない事があるのだろう。




「ふぅ…んじゃぁ、そろそろ行きますね。アンネさん、装備ありがとうございました。」


「いえいえ~。今度来るときには素材とお金を持ってきてくれたら装備作ってあげるわよ。」




僕はアンネさんとフレンド登録をして、扉を開いて外へと出た。…さて、防御力の問題点はどうしようか。





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


『Winds』♂ Lv.9 称号『コスプレ好き』


【アクティブスキル】

『両手Lv8』『射撃Lv5』『炎魔Lv5』『氷魔Lv5』『雷魔Lv6』

『聖魔Lv4』『調薬Lv3』『合成Lv1』『無し 』『無し 』


【パッシブスキル】


『知力Lv3』『敏捷Lv2』


【武器】


『魔力のアッシュスタッフ』両手杖 Rank.6 魔法攻撃力増加

『Mk14』突撃銃 Rank.6 連射速度上昇  消音射撃 

『魂のブロンズダガー』短剣  Rank.3 マナ吸収

『PM マカロフ』拳銃  Rank.1 


【防具】


『銅の髪飾り』頭部 軽装 Rank.6 Mana増加

『リネンローブ』胴体 軽装 Rank.6

『リネングローブ』両手 軽装 Rank.6

『リネンズボン』両膝 軽装 Rank.6

『リネンクロッグ』両脚 軽装 Rank.6


【補助】


『レザーレッグホルスター』収納


【護符】


『器用さの護符』護符 Rank.3 Dex増加


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


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