第弐話 - クラフトスキルってなぁに? -
Area トリストラム王国
採取を終えて拠点に帰還した僕はまず、武器屋へと向かった。
まずは、槍やら斧やらいらない装備を売却。お金は1万GOLD程度貯まった。
ノーマルアイテムの価格は大体100GOLD程度、マジックアイテムだと500GOLDから2000ゴールドと性能によって結構な差があった。
そして、武器屋のカタログを見る。
「…いらんのばっかり。」
…ノーマルアイテムとマジックアイテムしか揃っていない上、装備レベルが低くあまり役に立ちそうになかった。
店を出て、すこし道の端により生産スキルの『調薬』スキルを発動させる。
まずは『ポーション』のレシピを選択。そして精製しようとする。
『薬製作セット』が必要です。
……。orz
結局、『薬製作セット』は雑貨店で3000GOLDで売っていました。
ついでに『蒸留水』も超格安で売ってたので3ケタ程度買いました。
出費が痛い…。今度こそと精製を始めた。
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ゴリゴリゴリ…。
みなさんこの音をなんだと思いますか?
ゴリゴリゴリ…。
この音、薬草を薬製作セットですりつぶしてる音なんです。
レシピを選択したらポンッと出てくるのかと思ったら違ったよ…。まさかの自分で作らないといけないパターンでした。
ウィンズの3分クッキング~♪
今回は冒険者必須の回復アイテム、『ポーション』を作ってみようと思います。
材料は『薬草』1つ『グリーンハーブ』1つ、そして『蒸留水』1つです。
まず、薬草とグリーンハーブを薬製作セットの中に入れ、細かくなるまですりつぶしましょう。
むらができないように全体をくまなくすりつぶすのがポイントです。
ゴリゴリゴリ…。
…はい。粉々になるまですりつぶしたものがこれです。
次は瓶に漏斗を付け、濾過紙を入れます。
その中に先ほど細かくした薬草とグリーンハーブを濾過紙に入れ、その上から蒸留水を入れてコーヒーのように効能を抽出します。
コポコポコポ…。
瓶がいっぱいになるまで抽出したら、ふたを閉めたらポーションの完成です。
使った薬草とグリーンハーブはもう使えないので捨てましょう。
ぽいっとな。作り終えたポーションの性能を確認する。
『ポーション』Nom
ライフを微量回復させる回復薬。
製作者『Winds』
あらら?製作者の名前が載ってる。
この調子で他の種類の薬を作っていこー!
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で、色々といじくりまくって様々な薬を作った結果がこれ。
『ポーション+1』Nom
ライフを微量回復させる回復薬。
製作者『Winds』
レシピは普通のとおなじ『薬草』『グリーンハーブ』『蒸留水』。
プラス1…?回復量でも上がってるのか?材料は同じだったはずなんだけどなぁ…。
ちなみに普通のポーションとは別枠でストックされました。鞄圧縮するんだよね。
『エーテル』Nom
マナを微量回復させる回復薬。
製作者『Winds』
おぅ、貴重なマナ回復薬!NPC店で買うと結構高いんだよねぇ…。
レシピは『霊薬』『グリーンハーブ』『蒸留水』。
結構おおめに製作しました。
しかし、用途に困る物もできてしまった。
『猛毒ポーション』Nom
毒の効果を持つ薬。
製作者『Winds』
『麻痺ポーション』Nom
麻痺の効果を持つ薬。
製作者『Winds』
『睡眠ポーション』Nom
睡眠の効果を持つ薬。
製作者『Winds』
上からレシピは『ドクドクタケ』×2『蒸留水』、『シビレタケ』×2『蒸留水』、『ネムリタケ』×2『蒸留水』である。
とりあえず、これらは一ダースずつ作成した。
「ちょっと薬作りすぎて鞄圧縮するなぁ…。」
薬草や霊草などの草系のアイテムは100個で1ストックだったのだが、ポーションにすると一ダースにつき1ストックとなってしまった。
現に僕の鞄のなかの3/4が薬で埋まっている。
「店売りしても二束三文だし…どうしようかなぁ…?」
店売り価格は買い価格の半分。あんまり儲からない。
そう考え、街をフラフラと歩き始めた。
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「ちょっとこれ着てみてよ!絶対似合うから。」
「嫌だ!メイド服なんて!絶対に!嫌だ!」
「えぇ~?大丈夫、恥ずかしいのは一瞬だからね?」
「ちょ、やめ、嫌あぁあああああああああああああッ!」
はっきり言おう。ど う し て こ う な っ た !
装備という餌に釣られ、自己紹介をするまでは良かった。
だけど、なんでコスプレをしなくっちゃいけなくなったんだ!?
思い返すこと数分前…。
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「ちょっとそこの君!」
「へ?」
街中をフラフラしていると突然話しかけられた。
後ろを振り返ると作業着を着た短めの茶髪で活発な雰囲気を感じる女性がいた。
僕よりも身長は高い。というか僕の身長は165センチだから無茶苦茶低いだけなのだが。
「君だよ!君!銃と杖を背負った長髪黒髪の君!」
うん。それは僕のことだ。なにかやらかした覚えはないが…。
「なんですか?」
「ちょっとお願いがあるんだけど、ちょっと来てくれない?」
「…お願い?」
「うん。君は見た目がよさそうだったからね。モデルにでもなってもらおうかと思ってさ。」
「…モデル?えっと、僕は「わぉ!いまどき僕ッ娘なんて珍しいね!」話を聞いてよ…ってちょ!どこに連れて行くんですか!?」
女性は僕の腕をつかむとそのままどこかに連れて行こうとする。
「もちろんただとは言わないからさ!君の装備は殆ど初期装備だし、素材あったら一新させてあげるから!」
む…、お礼ありなのか…。装備ねぇ…。
確かに初期装備だと防御力がひどいからなぁ…。
「わかりましたよ、ちょっとだけですからね。」
「やったー!これでモデルゲット!」
「わかりましたから、腕を話してください、逃げませんから。」
「わかったわかった。じゃあちゃんとついてきてね?」
女性は僕の腕を放すとスンズンと先に進み始めた。
その後ろをついて歩く。
「そうだ、紹介が遅れたね、私はアンネリースよ。生産職をやってるわ。」
「これはどうも、僕はウィンズです。戦闘系の万能職、やってます。」
「へぇ、万能職って大変でしょ?うまくいってるの?」
「…装備にステータスが足りないことが多々あったり、火力不足気味はどうしようもないです…。」
「そ…そうなの…。」
ちょっと落ち込む雰囲気をだして軽い演技をしてみると、なんだかアンネリースさんは困惑した表情をした。
演技ってことがわからなかったのかな?
「まぁ…できる事は多くて楽しいですけどね。」
「へぇ…そうなの、ほら、あそこの家が私の店よ。」
彼女が指を指した方向にはそれなりの木造の家が建てられていた。
え!?既に露店持ち?この人ってすごいんじゃぁ…。
「ふふふ…どうしてっていう顔をしてるわね。私はβテスターなのよ。」
「あぁ、なるほど。」
βテスターとはゲームが実際に販売される前のゲームを試行した人のことをいう。
これらの人々は持ち物は引き継げないが、GOLDだけ引き継ぐことができたそうな。
その時のお金で土地を買って露店を作ったのだろう。
「それじゃぁ、先輩とでも呼ぶべきですか?」
「いえ、アンネでいいわよ?ささ、入って入って。」
「んじゃ、お邪魔しまーす。」
アンネさんに進められ、家の中に入る。
中は綺麗に整頓され、部屋の端には様々な生産系の道具が置いてある。
「んじゃ、さっさと始めましょうか。」
「はい。」
そういうとアンネさんは部屋の隅にあるタンスを開く。
中には――ネコミミ、メイド服、執事服、巫女服、セーラー服、婦警、チャイナ服に看
護師、和服、体操服、バニー、園児服、しまいにはアニメのヒロインの服などなどうわ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
っは!?思考が壊れてた!?黒歴史がまるで走馬灯のように頭の中を駆け巡る。
そんな僕にメイド服を目前まで持ってきたアンネさんは――
「ちょっとこれ着てみてよ!絶対似合うから。」
や っ ぱ り か ! ! !
なんでみんな僕をコスプレさせようとするんだよ!?
「嫌だ!メイド服なんて!絶対に!嫌だ!」
「えぇ~?大丈夫、恥ずかしいのは一瞬だからね?」
恥ずかしいっての!!!
ってアンネさん!そのうねうねと動かす腕はなんですか?なんかとっても危機感を感じますよ!?
って、僕の防具を脱ぎかかった!?
「ちょ、やめ、嫌あぁあああああああああああああッ!」
「ふふふ…観念しなさい!女の子なんだから!一度は!着てみないと!損だよ!」
「僕男!男だから、あぁああ!やめ!やめてええええ!!!」
「ふふふ、男の子でも一度は着てみない……。」
突然アンネさんの動きが止まる。
なにやら信じられないような顔で僕をじっと見つめる。
「男…のコ…?」
「そ…そうですよ?ほら…。」
困惑するアンネさんにステータスを突きつける。
「え。」
表示されたステータスをじっと見つめるアンネさん。
その時間、たっぷり10秒間。
やがて、僕の顔とステータスを見比べ、口を開く。
「…う。」
「…え?」
「嘘だぁああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!」