第拾話 - 妹との待ち合わせ -
「あ!おにいちゃーん!こっちこっち!」
いらない装備を売却し、待ち合わせ場所に到着すると既にサキは僕を待っていた。
こちらに一生懸命に手をブンブンと振るその姿は愛らしいの一言。
そんなサキの隣には2人の女性がいた。一人はなんだか見覚えがある。多分同じ学校の子だろう。もう一人はまったくもって知らないが。
ちなみに僕とサキは同学校、同学年である。今年はクラスが違った為、サキは『私はおにいちゃんと同じクラスが良かったなぁ…。』と物凄く落ち込んでいた。
ちなみに。
彼女は校内ランキングで『妹にしたい!ランキング』と『心が癒されるランキング』のナンバー1だったりしたりする。
その人気っぷりは僕に先輩から後輩まで『妹を紹介してください!』とわざわざ僕に会いに来て根回しを頼み込む生徒がいるぐらいだ。
片っ端から断るの、めんどくさいんだけどなぁ…いままでの苦労を思い出し、苦笑いを浮かべながらサキのもとへと向かった。
「待ったか?サキ。」
「ううん。全然。」
「それは良かった。」
それは良かった。人を待たせるのはあまりいいものではないからね。
見覚えのある人の方の容姿は緑色の髪で背中まで届くぐらいの綺麗な長髪。
身長はサキより高め。というより、サキ自体身長が低いのだが、女性としては平均ぐらいだろう。
瞳は明るい緑色ででなんだかぽやぽやした雰囲気を持つ子だ。
一言でいうと天然系?そんな感じだ。
武器は杖を持っていることからおそらく魔導師系タイプだろう。
もう一人の面識のない人は金髪でポニテの茶色の瞳だ。
身長は高い方で僕と同じぐらい。雰囲気はお姉様、というのが相応しい感じだ。
武器は…背負ってる弓と帯刀してる双剣かな。どこのアチャ男さんですかな。
ただ、双剣の方がいい装備みたいだから、この人もサキと同じように前衛タイプかな?
「サキちゃん、この人本当にお兄さん?お姉さんの間違えではなくって?」
「……初対面の人にも性別間違われるなんて…。」
「お…おにいちゃん!?気を強くもって!傷は浅いよ!?」
まったく面識のない人の方が僕の容姿について言ってはいけないことを言う。
ありがとうサキ…。その優しさだけが僕の心の中に染みるよ…。と、言いたいところだけど。
「サキは僕のこと男だってすぐわかるよね?よね?」
「………………………ごめん。」(そっぽを向きながら)
「うわぁあああん!!!」
あまりの理不尽さに全僕が泣き、地面に倒れ込んで涙を流す。高校生が涙の水たまりが広げていくところを見て周りの人たちはどう思うのだろうか…。
「え~っと。そろそろいいですか?」
「ぐすッ…えぇ。どうぞ。」
なんだか居心地が悪そうだったので話を進めることにした。
「では自己紹介から。私はカリンです。武器は双剣と一応弓です。」
「はぁ…。サキとはどういう関係で?」
「ロザリオ奪還クエストで同行し、そのままフレンドになりました。」
「なるほど。そういうことか。要するにボス戦前でサキに一緒にやろうと誘われ、敵を撃破。そのまま気に入れられフレンドに登録された。っというところですね。」
「…話が早くて助かります。とりあえず、今後もよろしくお願いします。」
カリンさんに手を出し、親睦の握手をする。
「んじゃぁ、次は私かな~?」
カリンさんと握手を終えると、緑色の髪の子が前に出てきた。
前々から思っていたことを口にする。
「え~っと…。どこかで会いましたっけ?特に学校の中で。」
「にはは~。よく会ってるよ~。サキちゃんとは友達だからね~。」
サキと友達…。う~ん…。
……………あッ!
「もしかして、学校でいつもサキと一緒にいるあの娘?」
「ぴんぽ~ん。あたりだよ颯君。こうやって話し合うのは初めてだね♪」
「そうだったかな…?別に話しかけて来てもいいんだよ?」
「それは、ほら颯君って何かと有名じゃない。話しかけにくかったんだよ~。」
「そうなんだ。って有名?」
「知らないの?颯君は女子ランキングの中で『女装が似合いそうランキング』に常時上位なんだよ?」
「ぐわッっはぁああああッ!!!」
ちょ…なんて酷いランキングを…ッ!
「ちなみに『婿に欲しいランキング』にも上位にキープし続けてるよ?」
「かはッ…!いつの間にそんなアンケートを…。」
なんで学校で女子の視線を浴びることが多かったのか漸くわかったよ…。
でもそんなことを恥ずかしげもなく暴露するこの人って一体…。
「…むー。」
サキはサキで機嫌が悪くなってるし…。兄を取られたくない義妹の心境?
「まぁ、それは兎に角、今の私はルナ。魔導師だよ。これからよろしくね♪」
「わかったよ。よろしく。」
近衛さん…もといルナとも握手をする。
「さて…次は僕の紹介かな。僕の名前はウィンズです。今更ですけど、義妹が世話になりました。」
「いえいえ。こちらこそ、サキさんに誘っていただけなければ、あのクエストはいまだクリアできてませんでしたし。」
「こっちも助かったってわけだよ、ウィン君♪」
それはよかった。サキは結構子供っぽい所があるからなぁ…。
ゲームの中でも仲良くなれそうな人ができてよかったと思う。
「それで…ウィンズさん。あなたのポジションは一体なんですか?」
「あ。それ私も気になる~。杖と銃なんて訳分かんないよ?」
うッ…。やっぱり聞いてきたか…。
「それは…その…ほら。あれだよあれ!自分自身の道を切り開いてるというかなんというか…。」
「つまりどういうことですか?」
「ええっと…。そう!自分だけのスタイルだよ。うん!」
「それでも銃と杖の組み合わせはおかしいと思うんだけどなぁウィン君♪」
「…うー。」
半分涙目でサキにアイコンタクトを飛ばし、支援を要請する。
………目をそらされた。
「「ウィンズさん(ウィン君)?」」
「……うぅぅぅ…。」
(僕のステータスとスキルについて説明中)
「…かくかくしかじか、という訳なんだ。」
「なるほど…。それでこんな装備をしているのですか…。」
「にはは~。ウィン君はちょっと天然なところがあるからねぇ~♪」
「ルナさんにだけには言われたくないんだけど…。」
「私はしっかりものだよ~?」
「嘘つけッ!」
「ひどいよウィン君~。」
「ところでおにいちゃん。今からどうするの?」
頬を膨らませ、文句を言うルナを無視し、今後のことについてサキと話し合う。
「あ~。そろそろ昼ご飯作らないと。だから一旦落ちるね。」
「え?もうそんな時間?」
「ウィンズさんは随分と家庭的なんですね。」
「まぁ、親が忙しいからねぇ…。んじゃ、また後で。」
ルナさん、カリンさんとフレンド登録をし、ログアウトを選択した。
「それでは、お疲れ様です。」
「お疲れさまです。」
「お疲れ~♪。」
「ご飯できたら呼んでねお兄ちゃん!」