魔王よりも受付嬢
異世界人で苦労人の受付嬢×強いけどアホな勇者。
ラブコメ。
「花、花、花。
♪」
俺はご機嫌で花を摘む。
可愛らしい花、何が可愛いのかわからんが、可愛らしいと言われている花。
そう、あの子のように。
「勇者なのに花摘んでるぜ?」「依頼にあったかな? お花を摘むなんて」
周りの声は気にしない。
そして、
「できた! たくさん摘んだぜ!」
笑顔で誇るように言う。
―ギルド。
「ああ、君は美しい。
その黒い髪も綺麗だ、珍しい色なのもまたいい。常に触っていたい。
黒い瞳も可愛らしい、この世界の真実を見つめているみたいだ。
体つきもいい、なんか、なんかわからんがいい!」
そして、俺はコホンと咳払いをし、
「そんな君に、この花をあげよう。部屋に飾ってもいい、ギルドに飾ってくれても構わない」
俺は彼女を、じっと見つめる。
彼女も、じっとこちらを見ている。
「そんな怖い顔しないで、可愛いのに」
「いいからさっさと魔王倒せや勇者」
「おっほ、今日も冷たい。だがそれがいい」
「貴方、勇者ですよね?」
「勇者さ、力は強いし、俺は勇者の中の勇者だから魔王なんて小指で倒せる。ピンッてな」
「魔王を倒したら私は元の世界に帰れるんです」
「帰るなんて、この世界は嫌いかい?」
「少なくとも、貴方は嫌いです」
「はっはー! 冷たい! だがそれがいい」
異世界人のこの子は、なんとも可愛らしい。
なんせ、召喚されたけど特別な能力がなかったから追い出され、努力で言葉を覚えギルドの受付嬢になったんだぜ? 最高だろ! なんて真面目で可愛らしい子なんだ!
「結婚してくれ、勇者の子を産んでくれ」
「嫌だ。早く魔王を倒せ」
魔王魔王魔王、俺よりも魔王か?
「魔王を倒すのはね、面倒臭い」
「は?」
睨まれる。
「魔王と戦うのが面倒臭い、なんでわけわからん奴と命懸けで戦わないといけないのやら。
それに、倒した後も面倒臭い。政治だよ政治。あと、あとは、暗殺?」
そして、俺はにこやかに言う。
「お花あげるから、許して?」
「いらんわ」
―後日。
「おや? んふふふ」
ギルドに来てみたら嬉しい報告。
「俺のお花、飾ってくれてるね。しかも全部」
「花に罪はないから。勇者の貴方とは違って」
真面目に、その子は言う。
「貴方とは違って」
なぜか強調。
そうだね、恋は罪。そう思おう。
「ついでに結婚しよ?」
「セクハラで出入り禁止にするぞ?」
「ごめんて、セクハラとか異世界語は知らないけど」
はあ、とため息を吐かれる。
待て、魔王を倒したら結婚してくれるのでは? 魔王倒す→強い人好き→結婚。
けど、帰るつもりなんだよな、元の世界に。
ま、いいや、魔王倒すの面倒臭いし。
別の勇者がしてくれるだろうね、倒すなら。
「好きだ、結婚しよう」
「魔王倒せや」
「それは面倒臭い。倒せるけど。
そんなことより、結婚しよう」
そんな関係の話でした。




