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浜辺の粘菌 Slime on the beach  作者: 外山淑
第二部 邂逅
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Making Porcelain

 まあ、フレイヤがすぐ死ぬことはないだろう。フレイヤは必ず戻ってくる。敵を連れて。

 この世界は一種のゲームだ。ゲーム理論から見れば、全ての世界がゲームと見なせるのだが。

 この世界には、自分の生存に取って有利なものと不利なものが絶妙なバランスで配置されている。

 自分は有利なものを取り入れ、不利なものを排除していかなければならない。その選択を間違えれば、結果は死だ。

 この世界に偶然はない。すべて計算されているはずだ。「彼等」によって。

 フレイヤは、明らかに、不利なものだ。早期に排除しなければ、自分達は内部分裂を引き起こし、崩壊することになる。

 しかし、自分にとって有利であるか不利であるかは、不変なものではない。状況によって変化する。

 例えば、フレイヤは自分にとって不利なものだ。そのことが明らかになった時点で、フレイヤを処刑したとする。

 すると、その行為は、ヒルダに自分に対する疑念を与える。ヒルダは自分にとって有利な存在から不利な存在に転換する。

 この時点で、ヒルダを排除すれば、エンマやアーデルの不信を招く。。。

 自分は完全に疑心暗鬼に陥ってしまうだろう。その結果は、勿論、自分の破滅、すなわち、自分の死だ。

 こう考えると、フレイヤが逃げてくれたことは、現時点での最適解と見なすことが出来るかもしれない。

 ただ、フレイヤを逃がすことによって、フレイヤがより大きな脅威となって帰ってくる可能性を作り出した。

「彼等」がこんな可能性を計算に入れていないはずがない。絶対、フレイヤが生き延びるように設定してあるはずだ。

 今回は、当面の小さな危機の回避と、将来の大きな脅威とのトレードオフということか。

 とすると、やはり、フレイヤを捜索することは無意味だ。フレイヤがもたらす、大きな脅威の来襲に備えて、黒色火薬を作るための準備を急いだ方が良い。


 まずは、陶磁器作りを再開しなければならない。

 陶磁器用の窯を作るための煉瓦は、すでに準備ができている。将来的に登り窯に出来るように、山の斜面を利用して、煉瓦を積み、窯を作る。

 窯の製作と並行して、陶磁器の器にするための粘土を準備する。煉瓦を作る際に用いた穴に、採掘してきた土を入れ、グエンを除くみんなで、足を使って捏ねる。

 やはり、ヒルダは落ち込んで、元気がない。エンマが何かとヒルダを元気づけようとしているが、あまり効果はないようだ。

 陶磁器用の粘土が準備できた。グエンも傷が癒えて、陶磁器作りに参加できるようになった。やはり、傷の回復が早い。自分の乳を飲ませていたことが効果を現したのだろう。

 粘土を使って壺や皿を作ってみせた。みんなは、自分のやり方を真似て、土器を作り初めた。グエンは、左手が不自由なのにも拘らず、かなり上手く器を作っている。

 作った様々な器を暫く天日で乾燥する。十分に乾燥させた後、窯に入れて焼く。焼き上がった素焼きの器を、草木灰を溶かした釉薬に浸け入れて天日で乾燥する。

 やはり、エンマが何度も質問をしてくる。草木灰に素焼きの土器を浸ける意味がよくわからないようだ。こればかりは、言葉で説明するより、実際に結果を見てもらうしかない。

 素焼きの土器を乾燥させた後、再び、窯に入れる。丸2日の間、火を絶やさないよう、みんなで交代しながら、薪を焚べ、焼き上げる。

 窯の火を落とし、冷却のため3日程、時間をおく。

 窯を開け、中の陶磁器を取り出す。3割程の器が割れたりして使い物にならなかった。まあ、初めて陶磁器を作ったにしては、歩留まりがかなり良い方ではないか。

 みんなは、ガラス質に覆われた表面に吃驚していた。今までは素焼きの土器しか見たことが無かったようだ。

 素焼きの土器と出来たばかりの陶磁器に水を入れて、みんなに示す。時間が経つと、素焼きの土器の表面から水が滲み出てくる。一方、釉薬に浸けて焼いた陶磁器からは水が滲み出ない。

 エンマは、釉薬に浸ける意味を理解したはずだ。でも、エンマはまだ何か聞きたいことがあるようだ。

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