表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
浜辺の粘菌 Slime on the beach  作者: 外山淑
第二部 邂逅
85/131

I Created a Monster

 自分とインガ、そして、エンマは、家の外にいた。散開して武器を構える。

 何の動きもない。鳴子ももう鳴らなかった。

 闇の中で、1人の目標を追うことは難しい。明るくなるまで待とう。

 辺りが明るくなってきた。互いに幅を取り、辺りを警戒しながら、山をゆっくり下りる。

 フレイヤはいない。鳴子で罠だと気づいたか。馬鹿ではないな。


 一旦、家に戻り、ロムとレムを呼ぶ。2匹にフレイヤの服を嗅がせる。2匹は山を駆け下りていった。

 自分達は2匹の後を追い、走る。檻の所まで来た。当然、フレイヤはいない。

 ロムとレムは川の方向に走っていく。自分達もその後を追う。

 2艘の舟はそのままだ。1人では川に押し出すことができないから当たり前か。

 ロムとレムは川岸でウロウロしている。川に入ったか。

 川を渡って向う岸を目指したか?それとも、匂いを消すために、一旦、川に入っただけか?

 インガとエンマをレムとともに舟の所に残し、ロムを連れて、川上の方を捜索する。ロムは反応しない。

 舟の所に戻り、みんなで川下を捜索する。やはり、ロムとレムは反応しない。

 やはり、向う岸を目指したのか。この前、溺れかけたことがあったから、この川を泳ぎ切ることは無理だろう。

 いや、流木の類があれば、それに掴まって問題なく向う岸にたどり着けるはずだ。それくらいの力はある。

 舟を出して追いかけることも出来るが、無駄だろう。意味がない。

 追いかけてフレイヤ を殺すことになれば、自分達とヒルダに亀裂が生じる。エンマとアーデルも動揺するだろう。

 フレイヤを捕まえて、殺さずに連れて帰れば、これまで通り、トラブルメイカーを抱え込むことになる。フレイヤは更に増長するだろう。そんな状況にはしたくない。


 向う岸で、何も持たない状況で生きていけるか?いや、自分ができたんだから、フレイヤにできないことはない。

 それに、フレイヤには生きるための強い動機がある。いや、動機が出来た。自分に復讐することだ。自分への復讐心を糧に、歯を食いしばり生き抜くに違いない。

 例え、奴隷に落ちて虐待されても、その苦しみは自分への復讐心を募らせるだけだろう。復讐心が強くなればなるほど、生きる意志は強くなる。

 自分は自分に敵対するモンスターを自分の手で作り出してしまったのかもしれない。

 全ては、自分の甘さから出たことだ。侵入者と対峙した時、殺していれば。いや、フレイヤがグエンを撃った時に殺していれば。

 やはり、自分は甘ちゃんだ。非情になりきれない。これを直さないと本当に命取りになるぞ!


 フレイヤが生き延びて、この地の人間の手に落ちた場合、どのようなダメージを自分達にもたらすのか?

 まず、自分達の存在が知られてしまう。

 製塩、製鉄、土器作りの技術が知られてしまうか?ただ、これらは、古墳時代の日本には既に存在している技術だ。

 それに、フレイヤはその製造過程にあまり興味を示していなかった。だから、技術の流失という点では、あまり心配はいらないだろう。ただ、自分達がその技術を持っていることを知られるのは痛い。

 これがエンマだったら大変だったろう。エンマは、それぞれの工程についてよく観察していたし、質問も多かった。

 それより深刻なのは、弩だ。フレイヤは、弩をよく使っていたので、その仕組みはよく分かっているはずだ。

 弩は、古墳時代の日本にも存在していたはずだが、その仕組みや作り方は、一部の人間しか分かっていなかったはずだ。これがここの人々に知られ、広まることになるのははっきりとした脅威だ。


 ただ、救いなのは、フレイヤが火薬の知識を持っていないことだ。

 この前の洞窟探検の際に、洞窟に入って硝石を採取しなかったことは、今から思えば、幸運だった。もし、硝石を持ち帰っていたら、黒色火薬を作ってしまっていただろう。

 黒色火薬は、この時代の日本では、完全にオーバーテクノロジーだ。これは、厳重に秘匿しておかなければならない。この知識が流出してしまったら、完全に破滅する。


 フレイヤがこの知識をここに暮らす人間に伝えるためには、ここの言葉を覚えなければならない。これには1,2年くらい掛かるか。

 いや、技術を伝えなくても、フレイヤを捕らえた人間が、フレイヤと同じ姿形の奴隷を欲しがるかもしれない。その場合は、フレイヤが見つかると同時に、ここに敵が侵入することになる。

 フレイヤにはここに暮らす人間に見つからないようにしてほしい。フレイヤの安全と自分達の安全のためにそうあってほしい。

 フレイヤが死んでいてくれれば一番ありがたいのだが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ