Out of Malice
自分は弓を構え、矢を番えて、フレイヤに向けた。
"Drop your weapon! Or I will shoot you to kill!"
武器を捨てろ!捨てないと殺すつもりで射る!と叫んだ。
フレイヤは、口の端を少し釣り上げながら、武器を捨てる様子を見せない。
インガ達が追いついてきて、自分達の周りを取り囲む。
"Everyone! Aim at Freya! If she moves, shoot her!"
みんなに向けて、フレイヤに狙いをつけろ!フレイヤが動いたら、矢を射るように命令した。
インガが躊躇なく、弩を構え、フレイヤに狙いをつけた。
ヘルガも弩を構えた。ヘルガの背中のハーゲンが泣き出した。
エンマが躊躇いながらも弩を構える。
アーデルも、躊躇いながら、エンマに続いた。
みんなの視線がヒルダに集まる。ヒルダは目に涙を浮かべながら、弩をフレイヤに向けた。
ヒルダが弩を向けたことに驚いて、フレイヤは口を開けた。
自分は、弓を下ろし、フレイヤに近づき、張り倒した。弓を取り上げ、ナイフと一緒にインガに渡した。
"Emma! Adel! Bind her! Tie her hands!"
エンマとアーデルに、フレイヤの手を縛るように命じながら、グエンに駆け寄る。グエンは気絶していた。
グエンの脇腹に矢が刺さっていた。背中の方を見ると鏃が突き出てる。矢が貫通していた。あまり大きく出血はしていない。
貫頭衣を着ていなくて良かった!貫頭衣を着ていたら、その繊維が体内に入り込んでしまって、傷口を広げていたはずだ。
"Hilda! Bring the band to stop blood!"
ヒルダに止血帯を持ってくるように指示した。
鏃には、返しがついている。このまま抜くと内蔵を更に傷つける。鏃を外してから、矢を一気に貫く。
血が吹き出した!だが、それほど多くはない。内蔵はあまり痛めてないか。
傷口に吸着袋を当て、止血帯で固定する。
ぐったりしたグエンを背負って、山を下りる。
フレイヤが、エンマとアーデルに両腕を押さえられながら、続く。
フレイヤが、エンマやアーデルに向かって何か話してる。「鹿」とか「のろま」みたいな言葉が入っている。
まあ、言い訳だろう。鹿を見つけて射った。グエンがのろまだから当たっちゃったみたいなことだろう。
フレイヤとグエンは、以前から、折り合いが悪かった。というよりは、フレイヤがグエンを虐めていたという方が適切か。
直接、暴力を振るう場面は見たことはないが、フレイヤがグエンを明らかにバカにしている様子は何回か見受けられた。
野営地に着いた。もう、繭採りの作業どころではない。このまま、家に引き返すしかない。
ただ、その前にしなければならないことがある。フレイヤの裁判だ。
この前の侵入者の一件の時、フレイヤを厳格に処罰しなかったのは失敗だった。自分が甘かったのだ。
厳格に処罰されなかったことで、フレイヤは増長した。その結果がこれだ。
同じ失敗を繰り返してはならない。前に宣言した通り、殺すか?いや、このまま殺すとなると、他の子達へのショックが大きい。
インガ、ヘルガ、グエン辺りは大丈夫だろうが、エンマ、アーデル、そして、当然、ヒルダには過大にすぎると拒否反応を起こす公算が大だ。
どうするか。肉刑が駄目だったら牢屋だが。そうだ、馬車に積んであった檻がある!あれを使おう!
家に向けて出発する前に、全員を呼び集め円陣を組む。フレイヤはエンマとアーデルに挟まれ、グエンは自分の膝に頭を預けて横になっている。
"Freya shot Gwen out of malice!"
フレイヤはグエンを悪意から撃ったと述べる。
"No!"
フレイヤが否定する。
"Freya should stay in the cage till Gwen heals! You say yea or nay."
フレイヤはグエンが回復するまで檻の中に入るべきだ!賛成か反対かどちらかを表明しろ、とみんなに問うた。
インガを指差す。"Yea!"
ヘルガを指差す。"Yea."
エンマ。"...Yea."
アーデル。"Yea."
グエン。"Yea."
みんなの視線がヒルダに集まる。ヒルダは泣き出した。"...Y… Y...Yea!"
"Nay!Nay!Nay!Nay!Nay!"フレイヤが叫ぶ。
"You have no say in this matter! Case closed!"
お前にこの件に関する発言権はない!裁判終了!と、冷たく突き放す。




