変調
小屋が完成したのは、浜辺で目覚めてから14日目だ。15日めの朝、これまでより快適な環境で目覚めた。自分は、小屋の中にいて、草を敷き詰めた柔らかい寝台の上に横になり、寒さから身を守る枯れ草の掛け布団を纏っている。いつものように、陰茎は固く勃起している。
だが、何かおかしい。何もする気が起きない。
日の出を観測しなければならない。そんなことはどうでも良い。
朝立ちを解消しなければならない。そんなことはどうでも良い。
朝食を食べなければならない。そんなことはどうでも良い。
なんにもする気が起きない。
昨日までの作業で疲れたのか?いや、別に疲労感は無い。
そのまま暫くの間寝床に横になっていた。
突然、動悸が始まった。
同時に、強烈な切迫感が自分を襲った。
やばい!ヤバい!ヤバイ!
やばい!ヤバい!ヤバイ!
やばい!ヤバい!ヤバイ!
やばい!ヤバい!ヤバイ!
やばい!ヤバい!ヤバイ!
やばい!ヤバい!ヤバイ!
このままでは自分はダメになる!
やばい!ヤバい!ヤバイ!
やばい!ヤバい!ヤバイ!
やばい!ヤバい!ヤバイ!
やばい!ヤバい!ヤバイ!
やばい!ヤバい!ヤバイ!
やばい!ヤバい!ヤバイ!
何かしなくちゃ!
やばい!ヤバい!ヤバイ!
やばい!ヤバい!ヤバイ!
やばい!ヤバい!ヤバイ!
やばい!ヤバい!ヤバイ!
やばい!ヤバい!ヤバイ!
やばい!ヤバい!ヤバイ!
でも何も出来ない!
やばい!ヤバい!ヤバイ!
やばい!ヤバい!ヤバイ!
やばい!ヤバい!ヤバイ!
やばい!ヤバい!ヤバイ!
やばい!ヤバい!ヤバイ!
やばい!ヤバい!ヤバイ!
切迫感に押しつぶされ、そのまま何も出来ずに横になっていた。
突然、切迫感が消えた。動悸も治まった。
寝床から這い出し、戸を開け、小屋の外に出た。太陽はほぼ真上にいた。
いつもと同じ時間に起きたとすると、目覚めたのは夜明け前のはずだ。ここが地球の日本と同じ位置にあるとしたら、午前5時から6時頃のはずだ。
今、太陽はほぼ真上だから、12時頃か。すると6時間から7時間位動けなかったことになる。
何が原因だ?
動悸や急激な不安感は色々な原因で起きる。心臓病などの身体的疾患、ある種の薬物摂取、外的ストレス、内的ストレスなどなど、さまざまなものが考えられる。
しかし、身体的疾患や薬物摂取はその原因から除いても良いだろう。
多分、自分は何らかの実験かゲームみたいなものの被検者だ。先日の傷が早期に回復したことや、虫を寄せ付けないことなどを考えると、身体的な疾患などの可能性はあらかじめできる限り排除しているはずだ。同様に、事態の進行を妨げる薬物を投与することも考えにくい。
自分は、大きな怪我をしていないから、外傷性ストレスの可能性は小さい。
心因性ストレスの可能性も少ないだろう。まあ、こんな異世界に両性具有の体で、なおかつ、素っ裸で放り出されたことが最大の心因性ストレスの素であることは確かだ。しかし、このことが原因であれば、もっと早く発症しているはずだ。
ああ、なんか原因がわかった気がする。
この体は両性具有だ。すなわち、男性であると同時に女性でもある。
男性の体の場合、性ホルモンの分泌は基本的に一定だ。
しかし、女性の体の性ホルモンの分泌は、月経周期内で変動する。確か、月経周期の中間点辺りから急激に増加するはずだ。その際、急な不安感を訴える例もあったはずだ。
性ホルモンは、主に性器で作られる。この体には、性器が2つある。したがって、通常の男性の場合や、通常の女性の場合の2倍の性ホルモンが混在してることになる。この多量の性ホルモンのバランスの急激な変化による混乱が、今日の強烈な切迫感を齎したのだろう。
確か、男性が豊胸などのため女性ホルモンを摂取すると、強烈な不安症状を示す例は聞いたことがある。
この考えが正しいとすると、自分の体では、月経のプロセスが確実に進行していることになる。
強烈な不安感が治まったのは、自分の体がホルモンバランスの異常に自然に適合したのか、それとも、ナノマシンなどが介在したのか?どっちなんだろう?これは考えてもしょうがない。
今日は、いつものルーティンを昼から行うことにする。もちろん、日の出の観測は除いてだが。
もう朝ではないが、まず朝立ちを解消しなければいけない。
強烈な切迫感に襲われている間は、確認する余裕はまったくなかったが、陰茎がずっと勃起していたはずはない。しかし、今は完全に硬く勃起している。
いや、いつもより更に硬い感じがする。いつものように、陰茎を扱いた。しかし、いつも通り3回程射精しても勃起が治まらない。5回目の射精で弱冠萎えてくれたが、完全に縮こまる状態にはならない。
半勃ち状態のままだ。扱き過ぎて陰茎が痛い。これ以上扱くことは無理だ。
新しく作った屋外便所で、排尿排便を済ませ、沢に下りて陰部を洗浄する。膣口はやはり濡れていたが、いつもよりベタベタするように感じる。膣の粘液を指に取り見てみる。粘液は、少し白濁してる。いや、ちょっと黄みがかっているか。
乳房も少し変だ。いつもより敏感になっている。乳房は、これまでより更に張り詰めた感じがして、痛いほどだ。ファイアピストンを作っておいて本当に良かった。乳房がこんな過敏な状態で、乳房を強く揺らし、腕に叩きつけながら木を擦って火を起こすなんて、想像するだけで身震いする。
今日は、浜辺で目覚めてから15日目だ。浜で目覚めた時点では膣からの出血は無かった。この体の月経の出血が終わった時点でこの世界に放り込まれたとすると、月経周期は、28日から30日が標準的な値だから、今は、丁度、月経周期の中間点辺りだ。
月経周期の中間点は排卵が始まる時期だ。つまり、これから受胎しやすい状態がしばらく続くのだ。陰茎の勃起の状態を見れば、授精能力も高まっていることは明らかだろう。
受胎能力と授精能力のどちらも高い状態、言い換えれば、発情期ってことだ。これから、経血が出るまでこの発情した状態が続くとみて間違いない。つまり、これから10日以上、この状態が続く要注意期間になる。これまで以上に精液が膣口に入らないように注意しなければいけない。
今日の残りの時間は、ハマグリを採りに行くだけにしよう。明日からは土器作りだ。