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小屋を作る

 この数日の間、一度だけ、雨が降った。本格的な雨ではなく、小雨程度だった。カラムシの枝で作ったシェルターは、大きな木の下に作っておいたので、直接、雨が入り込むことは少なかった。それでも、地面に直に寝ているため、湿気がどうしても直接肌に伝わる。湿った土の感触は不快で、明け方の冷え込みと相まって、耐え難いくらいに冷たく、寒かった。こんな応急のシェルターには長く居られない。

 向かいの山裾には、竹林がある。あの竹を使ってよりしっかりとしたシェルターを作ることにしよう。


 まず、沢の側で石をいくつか割って、石の欠片を木の枝に固定し、石斧を作る。

 向かいの山裾の竹林に行き、適当な竹を切り倒す。竹の枝を打ち払い、まっすぐな一本の竹材にする。枝葉が付いたままでは、運びにくい。切り倒した竹を、引きずりながら持ち帰る。この作業を20回くらい繰り返した。

 竹を根本から1メートル位の所で切り、切り取った部分を割っって、シャベルの代用品を作る。

 約3メートル四方の場所をこのシャベルで整地し、約1メートル間隔で柱を入れる穴を掘る。穴に長さ2メートル程の柱を埋め、土を戻し固定する。柱を固定する際に、北側が少し低くなるように調整し、東西方向に梁となるなる竹を載せ、紐で固定する。柱の上部は梁がうまく安定するように凹ませる。

 柱と柱の間に竹材で編んだ格子を入れ、紐で固定する。格子の地面から1メートル程の部分を泥で塗り固め壁を作る。ただし、南側の真ん中の部分は壁を作らず、竹材を編んだもので扉を作り、東側に当たる部分を紐で結び、開閉できるようにした。

 梁と梁の間に、半分に割って節を抜いた竹を南北方向に渡し、割った面を上に向け並べる。この竹材の接するところに、同様に割った竹材を、割った面を下に向け並べる。今回も、屋根はかけ流しだ。これで、雨が漏れ落ちることは無い屋根が出来上がった。この屋根の梁の上の部分に、細い竹を渡し、下の梁の部分に紐で固定する。こうすれば、多少の風では動かないだろう。竹の小屋の外側は完成だ。


 この開けた場所には、丈高い草が生い茂っている。これらの草を、石槍を使って刈っていく。実際には、石槍を振り回して、薙ぎ倒したと言ったほうが正確かもしれない。刈った草は暫くそのまま放置しておく。草は、日中の強い日差しのおかげで、刈ってから数日のうちに乾燥した。


 小屋の中で、西側の壁から1メートル程の所に、南北方向に沿っていくつか穴を掘る。この穴に50センチ程の竹柱を埋め、土を戻し固定する。竹柱の間に、東西方向に竹材を渡し、その上に半分に割った竹材を丸い面を上にして南北方向に並べる。この竹材の上に、乾燥させた草を厚く敷き詰める。これで、地面に接していないベッドが出来上がった。

 乾燥した草を小さな束にして、麻紐で結んで編み、掛け布団代わりのものを作った。


 小屋のついでに、屋外便所も作った。小屋から少し離れた海側の斜面にヨモギの茂みがある。その茂みの側に1メートル四方位を整地し、真ん中に深い穴を掘る。小屋の場合と同様な方法で、柱、壁、屋根、扉を作る。穴には、竹材を編んだもので作った蓋を取り付けた。排便の際は、一旦ヨモギの葉で尻を拭った後、沢に降りて洗浄することにする。


 もう一つ竹を使って作るものがあった。手で握りやすい太さの竹を、一方の節を抜かずに、15センチ程の長さに切る。この竹より少し長いくらいの長さで、竹の空洞に簡単に入る程の太さの、真っ直ぐな木の枝を用意する。木の枝の端に麻紐を巻き付け、竹の空洞にしっかりと嵌るようにする。紐を巻き付けた方の先端に窪みを作る。窪みに火口となるものを詰めて、紐を巻いた方を竹の空洞に押し込んだ状態で竹筒を握り、枝の反対側を地面に叩きつける。一回目、うまくいかない。二回目、また失敗。三回目、うまく行った。火口に火が着いた。ファイアピストンが出来た。予備としてこのファイアピストンを、更に2個作った。

 これまでは、火を起す度に、乳房の揺れを気にしながら木の枝を擦っていた。木を擦って火を起こすこの作業は地味に時間がかかる。ファイアピストンを手に入れたことで、乳房を腕に叩きつける作業からようやく開放される。


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