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浜辺の粘菌 Slime on the beach  作者: 外山淑
第一部 孤独
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温泉

 次の朝、ようやく火を起こすことが出来た。

 朝のルーティンを済ませた後、狩りの身支度をして、山裾の探索の際に見た水蒸気の場所を確認しに行く。


 かなり険しい斜面を、石槍で草や笹を打ち払いながら進む。


 途中、下の方に、嵐で飛ばされた屋外便所の竹組みが見えた。

 あれを引き上げて、元に場所に設置し直すのは大変だ。

 新しく竹を組み上げた方が簡単だ。


 1キロ程進んだか。前に、水蒸気が上が見えてきた。

 斜面に岩が露出している。その岩の割れ目から蒸気が吹き出していた。その真下に小さな水の流れが有り、これからも湯気が上がっていた。

 近づくと、卵の腐ったような匂いが鼻を突く。硫化水素だ。


 水流には、黄色や白い析出物が見える。

 水流に触れてみると、結構熱い。

 この水流を貯めれば、露天風呂ができる。

 硫化水素は、空気より重い。この場所は急斜面で硫化水素が滞留することはない。風向きにもよるが、噴出口の真下を避ければ問題ないだろう。


 岩の噴出口から、1メートル程手前のところを、竹のシャベルで、自分が足を伸ばせて入れる位の穴を掘る。

 穴の中に、周りに散らばっている石を敷き詰める。

 水の流れ向きを、石と土を使って変え、この露天風呂に誘導する。

 お湯が貯まって、きれいな状態になるのに数日はかかるだろう。


 数日後には風呂に入れる!

 ウキウキした気分で、草や笹を取り除き、楽に歩ける道を作りながら帰る。


 次の日、アワとイネを採取した。

 もちろん、食べるためではなく、来年の種まきのためだ。

 穂の部分だけを刈り取り、十分に乾燥させてから、壺に保存する。

 ヒエのある場所は、湿原の東端に近いところなので、今日ではなく、明日、採りに行くつもりだ。

 栗や柿は、まだ熟していないので、半月後あたりに、収穫する予定だ。

 それまでの間は、浜辺に打ち上げられた流木を集める。


 流木集めのため、トラヴォアを作る。

 作ると言っても、大した手間ではない。適当な長さの棒が2本あれば良い、

 自分の身長が多分180か190センチ位なので、それに対して適切な棒の長さは5メートル程か。

 棒の片方の端を短い紐で繋ぎ、もう片方の端から中心辺りまでのどこかを紐か網、布、あるいは毛皮で繋げば良い。それだけだ。


 トラヴォアに適した棒の材料はもちろん竹だ。

 竹は中が空洞で、同じ長さの木の棒より軽い。しかし、同じ程度に丈夫だ。

 竹林に入り手頃な竹を2本選び、切り倒す。後は、両端を紐で繋ぐだけだ。今回は、流木集めのためだから、網や皮で繋ぐ必要はない。


 トラヴォアを作った翌日、ヒエの採取に向かう際、このトラヴォアを浜辺まで運んだ。

 ヒエの採取場所まで距離があるため、トラヴォアは、ハマグリの採取場所に置いておく。

 ヒエを採り終わった帰りに、トラボアに流木を載せ、持ち帰る。

 何本もの重い流木を運ぶことはかなりきつい。

 浜辺の流木を全て回収するまでこの作業が続く。


 ヒエを採取した翌日も、流木の回収を行った。浜から小屋の側まで、流木を運び、2往復した。

 2度目に持ってきた流木を小屋の側に積み上げた後、温泉の様子を見に行く。

 念の為、狩りの身支度をして、温泉の場所に向かった。道は乾燥していて、以前より歩きやすくなっていた。

 温泉に突くと、お湯が穴の縁から溢れていた。お湯に手を入れてみるとかなり熱めだが、入れない程ではない。

 まず、用心のため、石槍を近くに立てかけ、直ぐに手に取れるようにしておく。

 早速、ブラジャーと褌を脱ぎ、湯に入る。流木運びで汗をかき、疲れた体に熱い湯が心地よい。

 なんか胸が軽くなったような気がする。乳房がいつもの位置より上にある。乳房が浮いている!


 これまで、ハマグリの採取のため、ほぼ毎日のように海に入ってきた。

 しかし、ハマグリを採る際は、胸まで海に浸かることはあまりない。

 ハマグリを掴む際に海に潜るが、それは一瞬だけだ。

 それに激しい動きをしているためか、乳房が浮くことに全く意識が向いていなかった。

 しかし、ここで湯に胸まで浸かり、じっとしていると、乳房の重さの変化をしっかりと感じる。

 そうだ、ついでに、ブラジャーと褌を洗っておこう。


 もうそろそろ日が暮れそうだ。湯に浸かる快適さについ長居をしてしまった。

 ブラジャーと褌は洗った後なので、背負い籠に引っ掛け、湯冷めしないように鹿皮を纏い、帰路に就く。


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