Dull Light
143 Dull Light
花組の面々との面談を終えた頃には夕方が近づいていた。もう家に帰らないといけない時間だ。
みんなを引き連れ家に戻る。途中、回収した死体を川に流した後、小川で荷台を洗った。
自分達と話し合いをしたことで、それまで溜まっていた緊張や不安が失くなったためか、新しく加わった面々は馬や馬車に興味を示し、鷺姫に色々質問する。
ここ数日寝泊まりしている場所に着くと、夕飯の支度を始める。鷺姫が花組と浜組の子達を竈と鍋の所に案内し、その使い方を教えていく。
鷺姫が、ファイアピストンを取り出し、火の点け方を実演して見せる。新入りの子達は初めて見るファイアピストンに驚き、鷺姫から渡されたファイアピストンを何度も試している。
新入り達が鷺姫の監督の元に、夕飯の粥を作り始めた。ここはこのまま鷺姫に任せておいて大丈夫だ。自分は、エンマと千鳥の様子を見に行く。
エンマと千鳥は横になってはいたが、眠ってはいなかった。二人の傷を覆っていた包帯を解いてみる。二人の傷は完全に血が止まっていて、傷口はすでに薄皮が張っていた。
二人は切断された所を悲しそうに眺めている。痛みはあるかと尋ねると、痛みはほとんど無いが、切り落とされた部分がまだあるような感じがして不思議だと言う。いわゆる、幻肢っていうやつか。
二人に自分の乳を飲ませた後、寝かしつける。二人の傷を治すためには、まず体力を回復してもらわないといけない。
既に夕飯は出来ていた。自分の分の粥の入った碗を受け取り、食べる。今日の夕飯は粟と鹿肉の入った粥だ。
食事を済ませた後、山の家に向かう。今日の崖の見張りはグエンだ。グエンに、自分が見張りをするから、麓で食事をしてくるよう促す。
グエンが去った後、家に入りヒルダの様子を見る。ヒルダは微睡んでいたようだが、自分が姿を見せると目を醒ました。
自分はヒルダを毛皮で包んで抱きかかえ、外に出る。崖の側の草むらにヒルダを下ろし、その傍らに横になる。
そろそろ夕闇が迫ってきたが、辺りはまだ明るい。自分はヒルダの包帯を解き、傷を見る。ヒルダも血は止まっていて、薄皮が傷を覆っている。
ただ、左の脛はかなり腫れている。中に入っている石の鏃の欠片が炎症を引き起こしているのだろう。自分の乳を飲ませてもこの腫れは中々引かない。
横になった状態で、ヒルダに乳を飲ませる。自分は、乳を飲ませている間、ヒルダの体越しに浜辺の様子を監視する。ヒルダは自分の左の乳房から口を離し、右の乳首に吸い付く。
左の乳房が軽くなったことがはっきりと意識される。暫くして、ヒルダが右の乳房から口を離した。
自分は、ヒルダの傷ついた左脚に触れてみた。ヒルダが顔を顰める。やはり、痛いようだ。
"Does it hurt?" 痛むのか?と自分が尋ねる。
"A little." 少し、とヒルダは嘘をついた。
"I have to rip a hole in your leg to remove the pieces of the stone." 石の破片を取り出すために脚に穴を開けなければならない、と自分が告げる。
"Does it hurt?" 痛むの?とヒルダが尋ねる。
"A little." 少し、と自分は嘘をついた。
ヒルダが泣き笑いながら、自分の胸を何度も叩き、自分に馬乗りになる。
"I think I already have your baby in me." あなたの子がもうお腹にいるみたい、とヒルダが告げる。
"But I have to make sure of it before my leg is cut off." でも、脚を切り落とす前に、赤ん坊の事を確実にしなくちゃいけないわね、と言いながら自分に覆いかぶさった。
暫くした後、自分達は側にグエンが来ていたことに気がついた。辺りはもう暗くなっていて、月明かりが海を鈍色に染めている。
自分はグエンを手招きし、グエンは自分の傍らに横になる。自分達3人は暫くの間寄り添いながら鈍色の光を見つめていた。




