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浜辺の粘菌 Slime on the beach  作者: 外山淑
第二部 邂逅
142/150

The Flower Group

 浜と浜組の二人との話から、鹿嶋の部隊は定期的に沿岸の集落を襲っていたことが分かる。しかし、おかしい。自分はインガ達に会うまで、ここで3年近く暮らしていたが、人がいた気配を感じたことが全く無い。

 今回の鹿嶋の部隊のリーダーは浜辺に流木が無いことに気づいて、内陸部を調べようとしたと思われる。しかし、自分がここに一人でいた3年近くの間、自分は浜辺の流木を集めて、塩や木炭を作るため流木を集めていた。

 鹿嶋や他の集団が定期的に、沿岸部を探査したり、襲撃していたりすれば、この浜辺にも降り立ったはずだ。この浜に降り立ち、流木の無いことを不審に思って、自分の住んでる場所を探索したはずだ。

 しかし、自分はそういった集団の襲撃も受けなかったし、集団の痕跡すら見たことが無かった。何故か?

 やはり、自分がインガ達に出会う前の時期は、自分の暮らしている世界が外界と、何らかの方法で切り離されていたと考えるべきだろう。物理的に繋がっていなかったとか、心理的に忌避するように仕向けられていたのではないか。

 いわば、ある種の結界が働いていたのだろう。それが、1000日目以降に外界と繋がり、矢継ぎ早に新しい人間と接触することになった。今は自分の対人能力を試すフェーズのはずだ。人の性格や能力を見極める能力が要求されているのだ。


 花組の5人を手招きする。浜や浜組の二人との遣り取りは。別に隠すようなことではない。殊更小さな声で話していたわけではないので、少し離れていた花組の子達にも聞こえていたはずだ。

 だが、改まって自分達が話を聞かれる立場になると、やはり緊張するのだろう。花組の面々は、百合、萩、藤、桜、茜の5人だ。百合と萩が一番年嵩で、桜と茜が一番年下のようだ。

 花組の話は、年嵩の百合と萩が主に話した。藤と茜は、あまり積極的に話す様子は無い。桜は、萩に常に縋っているように見える。

 百合と萩の話によると、花組の女達は全て同じ集落の出だという。百合達の集落は比較的大きな集落だったようだ。その集落は海岸からだいぶ離れていたため、海賊の警戒はあまりしていなかった。

 集落の大人の大半は、その地域を支配する豪族のところへ出かけていた。借りた籾の返済として、収穫した稲を運ぶためだ。稲籾を借りて収穫した稲で払うっていうと、いわゆる、出挙(すいこ)って言うやつか。

 大人の男の大半が出払った所を狙って、鹿嶋の部隊が襲ったのだ。鹿嶋の部隊は、どうやら、川を伝ってやって来たらしい。

 集落には、丁度、秋の麦の種蒔きに備えて、新たに借りた大麦の種籾が置いてあった。鹿嶋の部隊はその種籾を奪い、若い女だけを攫った。残りの者達は殺し、集落には火を放って去った。

 花組の女達の男親はみな稲の運搬に駆り出されていて、集落にはいなかった。百合と萩の母親も稲の運搬で不在だったが、藤、桜、茜の母親は集落にいて殺されてしまった。

 百合達の親は生き残っているはずだが、百合達は集落に帰りたくないという。たとえ、生まれた集落に戻っても、親は百合達を奴隷として売ることになるそうだ。

 親達は、借りていた大麦を奪われたため、もう一度麦の籾を借りなければならない。そのためには娘を、その代償として、差し出さなければならない。親達はそうしないと、生きていけないのだ。

 藤、桜、茜の3人が沈んだ表情をしたり、誰かに縋ったりしているのは、たぶん、肉親が殺されるところを目の当たりにしたためだろう。

 自分は花組の5人に、彼女達を奴隷にすることはないと告げた上で、自分達と一緒に働き、一緒に戦うつもりはあるか尋ねた。5人共しっかり自分を見つめながら、強く頷いた。

 これで、浜組と花組の7人は自分達の仲間になった。

 浜はどうするか?そもそも、浜って本当の名前なのか?


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