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浜辺の粘菌 Slime on the beach  作者: 外山淑
第二部 邂逅
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Pama's Story

 浜の言葉は早口で独特の口調がある。鷺姫も浜の言葉には少し戸惑っていたが、大体の意味は分かるようだ。たぶん、千鳥だったら問題なく理解することが出来るだろう。

 鷺姫は、やはり、お姫様だ。お姫様が卑賤の者と直接言葉を交わすことはほとんど無いはずだ。そんな必要が生じた場合には、千鳥のような、お付きの者が対応することになる。

 性格で詳しい話を聞くためには、千鳥に間に入ってもらったほうが良いだろう。そういったことをしていた方が、千鳥にとっても傷の痛みなどから気を逸らすことになる。

 だが、この場で大まかなことでも分かるなら、取り敢えず問題はない。細部の確認が必要なことが出てきたら、千鳥を介して再度詳しい話を聞けば良い。

 まず、今回の鹿嶋の集団について聞いてみた。出発した時期はいつごろか、今回の行動の目的は何なのかを鷺姫に尋ねてもらう。

 浜によると、鹿嶋の地から出発したのは15日程前だという。15日前といえば、自分達が熊を倒した前後か。10月の初頭ということになる。稲の収穫が一区切りついた頃だ。

 出発の時期については、浜が嘘を言っているとは思えない。稲などの穀物の収穫を終え、農作業に必要だった労働力を、偵察や遠征など軍事的な行動に振り分けることが可能になる時期に一致する。

 次に、この鹿嶋の集団の目的は何かを尋ねてみた。浜は、不思議そうな顔をした。何を分かりきった事を聞くのかという顔で、毎年この時期が来るとやっている事だと言う。

 収穫が終わった時期に、海岸に沿った集落を襲撃し、収穫した穀物や奴隷を奪う。奪った穀物は逃げないが、奴隷は逃げようとする。

 浜の役割は、奴隷が逃げようとする時に声を上げて仲間に知らせたり、逃亡を主導する者を特定したり、隠された穀物の在り処を探り出すことだそうだ。

 今回の遠征で、これまで3つの集落を襲ったそうだ。最初の集落は海辺にあって、鹿嶋達が襲ったときに、集落の人間は隠れてしまい、穀物も奴隷も奪えなかったそうだ。その代わりに浜に置いてあった舟を3艘奪った。

 2つ目の集落も浜辺にあったが、抵抗が激しく、火矢を使って焼き討ちして、浜組の二人を捕まえただけだった。

 最後は、少し内陸の集落を襲い、麦の袋と花組の子達を攫ってきた。集落には火を点けたという。

 ただ、浜は、その役割上、襲撃には参加しなかったという。まあ、参加しても足手まといにしかならないはずだが。

 この話を少し離れていた花組と浜組の連中は憤懣遣る方無いという表情で浜を睨みつけている。浜はそれを見て怯えて、視線を逸らす。

 更に、鹿嶋の集団の構成について尋ねる。鹿嶋には、こういった略奪を行う部隊が2つある。一つは北の土地を襲い、浜の属する部隊は南を襲うというのだ。

 もう一組同じ部隊が存在するのか。厄介だな。鹿嶋にとっては、南に向かった部隊が一向に帰って来ないことになる。そして、その少し前に、同じ方面に向かった部隊の一部も消息不明だという事実が重なる。

 自分が鹿嶋の立場だったら、このことをどう考えるだろうか。

 南の方面に強力な軍事集団、例えば、大和のような軍隊が侵攻してきたと考えて、南方面にこれ以上手を出さないようにするか。

 いや、いきなり大規模な軍隊を送り込むような真似はしないが、少数の偵察隊を送って、詳しい事情を探るだろう。

 鹿嶋の情報収集は、房総半島を経由する者だけでなく、武蔵や相模を経由することでも可能なはずだ。

 もし、武蔵相模ルートから入った情報で、大和が安房や上総地方に進出していないことが分かれば、鹿嶋はどう考えるか。

 房総半島の南には大和ではない謎の勢力がいることになる。偵察隊が自分達の存在を嗅ぎつけてしまえば、自分達はお終いだ。

 取り敢えず、鹿嶋には今回の集団と同規模の舟を使う部隊がもう一つ存在することが分かった。ここで倒した部隊が帰還しなければ、鹿嶋は必ず何らかの行動を起こすはずだ。

 まずは慎重な偵察隊あたり警戒したほうが良いか。

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