Sanitation Is Important
山を下り、インガ達の所に戻る。既に朝飯の支度が始まっていた。花組の何人かが朝飯作りを手伝っている。
鷺姫を呼び、浜組の二人を連れて来てもらう。この3人を率いて、鍬を持ち出し、小川に沿って少し下流に向かう。
少し茂みが高くなっている所の陰に、穴を掘るように指示する。浜組の二人が怪訝そうな顔をしたので、鷺姫に便所を作ることを説明させた。二人は納得したようだ。
二人には、排泄の後は必ず、糞便に土を掛けてから、小川で手と陰部を洗うように厳命したが、二人は再び怪訝そうな表情を浮かべる。鷺姫に、排泄の後に手を洗わないと病気になることを女達に伝え、必ず実行させるように指示する。
浜の件があるし、他にもスパイがいないとも限らない。暫くは、この女達を山の家に入れる訳にはいかない。まあ、実際に入れるスペース自体が存在しないのだが。
まずは、女達を入れる小屋を作るための材料を用意しなければならない。大怪我をしている者が3人もいて、更に一人は妊娠中だ。家の材料集めや、工事の作業は女達にやって貰わないといけない。
自分が指揮をするとしても、女達との意思疎通を円滑に行うためには通訳が必要だ。通訳は鷺姫に頼むしか無い。千鳥もエンマも傷が癒えるまでは暫く時間が掛かる。
崖と山の麓に見張りを置く必要がある。見張りを担当できる者は、自分、インガ、アーデル、ヘルガ、グエン、そして、鷺姫だ。かなりタイトなシフトを組むことになる。早く新参者の素性や性格を見極めないといけない。
もちろん、彼女たちを以前暮らしていた場所に返すという選択肢はない。そんなことをすれば、自分達の安全が脅かされる。好き嫌いに拘らず、彼女たちにはここで暮らしてもらうしか無い。
浜組の二人に簡易便所作りを任せて、朝飯の支度をしている所に戻る。鷺姫に便所を作った場所と、排泄後にしなければいけないことを女達に伝えさせる。やはり、女達は一様に怪訝そうな反応を示した。
朝飯が出来た。燕麦の粥だ。今朝は、みんな明るい光の中で落ち着いて食事が出来る初めての機会だ。昨日の朝は、見知らぬ場所で、戦いの後の処置などを目の当たりして、とても落ち着いて食事をする余裕等無かっただろう。
それぞれに粥の入った碗が渡される。やはり、釉薬が掛けてある陶器は珍しいのだろう。みんな渡された碗をしげしげと見つめる。
縛られていた浜の縄を解き、朝飯の碗を渡す。浜にはもし逃げようとしたなら射殺すと警告しておく。浜は他の女達から離れた所で皆に背を向けて粥を掻き込む。
自分は粥を食べ終えた後、千鳥とエンマに乳を与える。傷の治りを促進させるためと痛みを抑えるためだ。エンマは自分の乳を飲むと傷の痛みが大幅に和らぐと言っている。
食事を済ませた後、昨日と同じメンバーで、馬車を引いて、再び浜に向かう。
残りの死体が打ち上げられていないか確認しないといけない。それに、舟を裏返しにしておく必要もある。舟を裏返しにしておけば、舟を水に浮かべるまでの労力は倍以上になるだろう。
浜辺に着くと、舟のある所から、少し離れた所に黒い塊が幾つか見える。近寄って見ると死体が2つ転がっていて、その側に舟の艫の部分と思われる物が打ち上げられていた。これで37人目の死体を確認した。残り3人か。
死体を荷台に載せ、艫の部分も打ち壊してから荷台に載せる。自分は砂浜を波打ち際に沿って暫く歩いてみる。遠くを見渡してみても、他に目立った異物は見えない。
舟を置いてある場所に戻り、他の者達と一緒に舟をひっくり返していく。舟をひっくり返しておくことは、逃亡防止のためだけではない。ひっくり返しておかないと、中に水が貯まり、舟を腐れらせてしまうのだ。
7艘もの舟をひっくり返すのは、かなりの重労働だ。みんな汗だくになり、持ってきた壺の沢水を回し飲みする。
作業が一段落ついた後、昨日のように蛤を採らせて、流木の焚き火で焼いて食べる。
食事の後、自分は鷺姫と浜を呼ぶ。浜の事情について語ってもらうためだ。




