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浜辺の粘菌 Slime on the beach  作者: 外山淑
第二部 邂逅
138/142

A Little Spy

 2時間ほど経ったか。小川の側の茂みが微かに揺れた。自分はインガの肩に触れ、揺れた茂みの方を指差す。インガが頷く。

 横になったまま、茂みの辺りを監視していると、少し離れた所から頭が出てきた。どうやら、見張りをしているグエンの様子を伺っているようだ。

 グエンの視線が他に写った時、影は小川に沿って花組と浜組の寝ている所に近づいていく。何度かこれを繰り返して、影が浜組の寝ている端に置いてある毛皮に潜り込んだ。

 影が潜り込んだ毛皮を確認して、自分とインガが起き上がる。インガに鷺姫を起こして連れてくるように指示する。

 グエンにハンドサインで小川の下流の位置に待機するよう指示する。万が一、そっちの方に逃げた場合の対策だ。

 武器を隠し持っていた場合に備えて、ナイフを構えながら、花組の寝ている場所に近づく。その端っこに置かれた、先程影が潜り込んだ毛皮を両足で抑える。

 中にいる影が藻掻き始めた。左手で首があると思われる場所を押さえつける。抵抗が弱くなった。物音に気づいて、花組と浜組の女達が起き上がり、声を出し始めた。

 インガが鷺姫を連れて来た。グエンも小川の下流から近づいてくる。

 自分がインガに合図すると、インガは毛皮に向けて矢を番える。自分は押さえつけていた左手を放し、毛皮を捲る。

 現れた顔は、たしか、ぱま、浜と名乗っていた子だった。浜組の一番小さい子だ。

 浜は自分に矢が向けられていると知ると泣き出した。本当に泣いているのか、それとも、嘘泣きか。

 花組と浜組の女達が騒ぎ出した。自分は鷺姫に向かって「かぢまがてづぁきなるべち」鹿嶋の手先だ、とゆっくり回りに聞こえるように話す。自分の言っていることが分かったのだろう。女達の騒ぎ声が大きくなった。

 浜は自分の言葉を聞いて、首を横に何回も振る。自分は浜組の残りの二人、確か、凪と風を指して、鷺姫に仲間なのかどうか尋ねるように指示した。鷺姫と二人は暫く早口で放していた。早口で話されると、言ってることがよく分からない。

 話が一区切りついたようだ。鷺姫によると、浜は二人の知り合いではないそうだ。二人が男達に捕まった時、浜は既に捕まっていて縛られていたということだ。その後、別の集落から浜組の女達が攫われてきたという。

 やはり、そうか。浜は攫われた女達が逃げる際に声を上げるなどの方法で、逃亡を男達に知らせる役割だったのだ。その事を鷺姫に教え、鷺姫はそれを女達に伝えた。女達は一斉に押し黙り、浜に掴みかかろうとした。

 インガと鷺姫がそれを押し留めようとしたが、女達は言うことを聞かない。「やむべち!」止めろ、と自分が、手に持ったナイフを示して、大声で叫んだ。月の光を受けたナイフを目にして、女達は大人しくなった。

 グエンに麻縄を持って来るよう指示する。麻縄を持ってきたグエンに浜の両手両足を縛らせる。グエンが縛っている間、自分が足で押さえつけていた。

 浜に死んでもらっては困るのだ。浜には、鹿嶋についての情報を喋って貰わなければならない。まあ、見た所14かそこいらの女の子がどれだけの事を知っているかは疑問だが、何も手がかりが無いよりはマシだ。

 一先ず、花組と浜組の女達には再び寝てもらう。一旦、起こしてしまったインガと鷺姫に見張りを頼み、自分とグエンはエンマと千鳥の側で寝ることにする。


 インガに起こされると、東の空が明るくなりかけた時だった。グエンを起こしエンマ達の世話を任せ、自分はヒルダの様子を見に山の家に向かう。

 アーデルが浜辺の見張りを続けていた。影の一件の後、特に変わったことは無かったようだ。

 家に入り、ヒルダの様子を見る。ヒルダは既に目覚めていた。自分を見ると両腕を上げ自分を迎え入れる。

 ヒルダに乳を与えた後、家を出る。もう朝のルーティンは必要ないか。

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