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浜辺の粘菌 Slime on the beach  作者: 外山淑
第二部 邂逅
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 東端からみんなのいる浜辺にブラウンに乗って駆け戻ると、昼を過ぎた頃になっていた。浜辺では既に火が焚かれていて、みんなが蛤を焼いて食べている最中だった。東端に向かう前に、鷺姫に開放された女達と蛤を採っておくように指示しておいたのだ。

 ブラウンをアーデルに引き渡し、しばらく休ませるよう指示した。アーデルは荷台に積んであった壺から水をブラウンに飲ませる。

 アーデルとブラウンの側に立ちながら、開放された女達を観察する。女達は2つのグループに別れて食べている。一つは5人グループで、もう一つは3人のグループだ。たぶん、別々の集落から連れてこられたのだろう。

 それぞれのグループの女達はみんな日焼けしているが、3人組の方がより濃く焼けているように見える。

 アーデルは、ブラウンに水を飲ませ終えると、叢の近くに木にブラウンを繋いだ。自分とアーデルは、女達を見守っている鷺姫の所に行き、そこに置いてある蛤を焼き始めた。

 蛤を食べ終えた後、開放された女達を手招きして、焚き火を囲むような形で座らせた。

 まず、自分自身を指し、「わればじゅり」我はジュリ、と言う。次に、隣に座っているアーデルを指して、「かればあーでる」彼はアーデル、と言った。

 鷺姫が「わればつぁぎ」我は鷺、と後を継いだ。

 何が始まったか分かったようで、5人組の一番年嵩に見える女が、「わばゆり」我はゆり、と言った。ゆり?百合か?

 百合の右隣の女が「ぱぎ」はぎ、と短く言う。萩か?

 百合の左隣は「ぷぢ」ふじ、と、やはり、短く続ける。藤か?

 藤の隣の子は「つぁくら」さくら、と同じように短く言った。桜か?

 桜の左隣の子は「あかね」と言った。茜か?この5人組はみんな花の名前か。

 3人組の左端の女が「なぎ」とぶっきらぼうに言い放つ。なぎ?何だろう?

 真ん中の女が「 かづぇ」かぜ、と言った。ああ、凪と風か!

 右端の子が「ぱま」はま、と続けた。浜か?そうか、こっちは海に関係する名前か。

 花組と海組か。宝塚みたいな感じだな。そうすると、鷺姫と千鳥は鳥組ということになるか。

 凪という女は、その穏やかな名に似合わず、一番鼻っ柱が強そうだ。ちょっと注意が必要かな?いや、もしかしたら、この子はヒルダと同じようなタイプかもしれない。

 ヒルダは、インガ達のグループの中で一番年嵩だ。だから、しっかりしなければいけないと思って、虚勢を張ってしまう。でも、内心は繊細で脆い。内面の脆さを自覚しているから、外にはそれを出さないように、常に勝ち気に振る舞う。

 エンマは、ヒルダの逆だ。外見は内気そうでいて、気弱そうに見えるが、その芯には強さがある。昨日、脚を切断されても、悲鳴をあげなかった。

 ただ、この中には取り扱いに注意が必要な者が必ずいる。フレイヤのように、扱い方を間違うと、災厄を齎すことになる者がいるはずだ。「彼等」はそういう者を必ずこの女達に混ぜ込んでいるはずだ。

 誰か?いや一人ではないかもしれない。複数いることも考えられる。凪は、いわゆる、red herring(赤い鰊)、つまり、囮の可能性もある。自分の注意を凪に集めて、本物の地雷から目をそらさせる役割だ。

 この女達の扱いは慎重にしないといけない。ここで、第二のフレイヤを作り出すわけにはいかないのだ。彼女たちの行動や性格をしっかり把握して、それに基づいて適切な対応をしなければならない。

 まあ、言うは易き行うは難しだよな。

 そろそろ、乳房が重くなってきた。母乳が溜まってきたのだ。怪我をしている3人に授乳して、自分のナノマシンを彼女たちに補給しなければいけない。

 みんなを立たせて、家に戻ると告げる。残った蛤は、留守番をしている者達への土産にする。

 ブラウンには、荷台を引いたり、東端まで走らせたりしたので、帰りは馬車の荷台に何も載せないで帰る。


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