Tough Decisions
見るとアーデルとグエンがこっちに駆けてくる。アーデルとグエンは自分の前にエンマが横になっているのを見ると、急いで駆け寄ってきた。
アーデルに繋いでいたブラウンに乗って家に帰り、馬に荷台を引かせて帰ってくるよう指示する。その際、インガにいつもの2倍の量の夕食を用意するようにという伝言を頼んだ。
グエンにはエンマの看護を頼んだ。アーデルは直ぐにブラウンのいる方に駆け戻っていった。
暗くなりつつある海を監視しながら、今後の予定を考える。
エンマを荷台に乗せて連れて帰らないといけないし、開放した女達に食事を与えなければいけない。それに、舟に積んである袋は、おそらく、奴らが掠奪してきた食料だろう。それも運んでおかないといけない。
奴らの内、最後に残ったのは舟に乗り込もうとした8人だけだ。その内の2人は自分が矢で仕留め、その死を確認した。1人は、今、女達に叩き殺されている。残りの5人はまだ生死が分からないが、大半は竹ロケットで大怪我をしているはずだ。
本来ならば、ここに残って残党の死を確認しなければならないが、ここではエンマの手当が出来ない。それに、手当を必要としているのはエンマだけではない。ヒルダと千鳥も手当しなければならない。
ヒルダの傷は普通の矢傷だが、千鳥とエンマは毒矢の傷だ。今は紐で縛って直ぐには体に毒が回らないようにしているが、いずれ毒が回ってしまうことは避けられない。
毒を回避する唯一の方法は毒が回った部分を切り離すことだ。つまり、千鳥は腕を、エンマは脚を切断しなければならない。
ひょっとしたら、自分の血か乳を飲ませれば、その中に含まれるナノマシンが解毒を行ってくれるかもしれない。いや、それは、二人の命を天秤に掛けた危険な賭けだ。予想が外れたら二人共死んでしまう。
やはり切断するしか無い。
決断の重みを紛らわすため、残された舟の中を検める。舟の中にあった袋の中を除いて見ると、中身は大麦だ。他の舟の袋も見てみると全て大麦だった。
だいぶ暗くなってきた頃、アーデルが馬車に乗って戻ってきた。鷺姫も一緒だった。鷺姫に、開放された女達に対して、これから家に向かい、食事と寝る場所を提供することを説明させた。
荷台にエンマを乗せ、舟にあった大麦と武器を全て積んだ。これで、万が一、生き残った敵が浜に上がって来ても、それほど脅威になることはない。
たとえ無傷かそれに近い者がいたとしても、舟を押し出すことは難しいだろう。それに後4日で満月だから、月明かりもある。崖から舟の様子を監視していれば、舟を動かす様子は容易に分かる。変な動きが見えたら、ブラウンに乗って駆けつければ良い。
開放された女達の中で、体調の悪い者は馬車に乗せ、残りは歩いてもらう。自分とグエン、そして、鷺姫は弓や弩を構え辺りを警戒しながら、家に帰る。
山の入り口に着くと、既に、夕飯の準備は出来ていた。燕麦と蛤の粥だ。まず、開放された女達に粥を食べさせる。たぶん、禄に食事を与えられていなかったのだろう。みんな、碗の中身を貪り食っている。
次に自分達が食べる。ただ、負傷したヒルダ、千鳥、そして、エンマは、ぐったりしていて余り食事を摂らない。
一旦、食事を済ませた後、余り食事を摂れなかった3人を側に集め、これから傷の手当をする事を告げる。その前に、体力と治癒力を高めるため、自分の血と乳を飲むよう指示する。
自分は胸当てとブラジャーを外し、乳房を剥き出しにする。開放された女達はそれを見て、はっと息を飲む。
自分の左乳首の下をナイフで切り、千鳥に吸わせる。続けて、右の乳首の下を切り、エンマに吸わせる。鷺姫の時は、このやり方で、しばらくすると乳が出てきた。新しく来た女達は吃驚して口を開けている。
直ぐにお馴染みの乳が分泌される感覚があった。まだ出始めたばかりなので、ゆっくり乳を吸わせる。これで、血が止まりやすくなり、細菌の繁殖が抑えられるはずだ。解毒の効果は分からない。
十分に乳を吸わせた後、二人に手足を切断することを告げなければならない。




