The First Casualty
インガとヒルダに、ハンドサインで、8人目が現れて、泥田以外に逃げ道が無くなったら射掛けるように指示する。
暫くして、8人目が姿を現した。最初に姿を見せた奴は、既に、泥田の脇を山の入り口に向けて歩いている。人影が見えないことから、もう警戒している様子も無い。
今だ!インガとヒルダに、合図を送る。同時に、毒矢を番え、最後尾の男を狙って射る。直ぐに、二の矢を番え、7人目に矢を放つ。8人目が倒れたのを見ながら、三の矢を6人目目掛けて矢を射た。
8人目は胸に屋を受けて倒れた。7人目は腹に矢が刺さり、蹲った。6人目は、後ろで倒れた者の声を聞いたのか、後ろを振り向いた時、肩に矢が刺さった。
インガは、先頭の男を狙い、その矢は腹に命中した。ヒルダは3番目の男を的にして矢を放ち、その矢は太腿に刺さった。
2人目の男は、前を行く男が矢を受けたのを見て、後ろを向き逃げようとした。だが、3番目の男に矢が刺さったのを見て、矢の来る方向から遠ざかろうと、泥田に向かって飛んだ。
4番目と5番目も同様に、前後の男達が矢を受けたのを見て、2番目と同様に、泥田に逃げ出した。
これはこちらが狙った通りの動きだ。泥田に入ると、泥に足を取られて、動きが鈍くなる。インガとヒルダに、狙うべき的を、ハンドサインで示す。二人共頷き、それぞれ、二の矢を番える。
3人で息を合わせ、矢を放つ。2番目の男の尻にインガの矢が刺さる。4番目の男の脇腹にヒルダの矢が食い込む。自分の矢は、5番目の男の背中に刺さった。
この3人に当たった矢は、致命傷を与えていない。3人は、泥田を川岸の方に向かって進んで行く。自分は、インガとヒルダにもう矢を射ないように合図する。
泥田の中に倒れ込まれては後始末が面倒だし、毒矢を無駄に使うことになる。まだ相手にすべき敵は多いのだ。体力と武器は節約しておかなくてはならない。
泥田を抜け出そうと、藻掻く内に毒が体内に広がっていく。泥田を抜け出る頃にはもうまともに歩くことができなくなっているだろう。
その間に、始めに倒した奴らの止めを刺していく。矢を回収し、死体を引きずり、藪の中に隠す。この作業を終えた頃には、泥田に入った奴らが泥田から抜け出て、泥田の脇に横になっていた。
毒が効いたのか、自分達が近寄っても逃げる様子を見せない。この3人もしっかり止めを刺し、叢に隠す。
この偵察隊の持っていた武器を確認する。弓が2振り、槍が6本だった。矢の鏃や槍の穂先は全て石だ。やはり、金属は貴重品のようだ。
これで8人倒した。浜に降りたのは48人だが、その内、8人は奴隷で手足を縛られている。この8人は敵の勘定に入れないから、敵の戦闘員は40人のはずだ。
倒した8人を除くと、残り32人か。まだまだ大きい数だ。何とか今の内にもう少し減らしておかないといけない。
エンマを呼び、毒壺を持ってこさせる。回収した矢を再び毒壺に入れ、鏃の毒を纏わせる。矢を抜き出し、暫く表面を乾燥させる。
インガに守りの指揮を任せて、自分はヒルダとエンマと共に敵の様子を探りに川岸の方に向かう。
敵を率いる奴は頭が働く。見張りは必ず配置しているはずだ。慎重に辺りの様子を伺いながら、川沿いを、叢や薮の影に隠れながら進む。
いた!50メートル程先の木の下に2人いる。見張りは二人共弓を持っている。
見張りの向こうに敵の本隊が集まっている。ここから、本隊までの距離は100メートル位はあるか。本隊の真ん中辺りに指揮者が立っている。
ヒルダに、一緒に見張りを片付けてから、自分は本隊の奴を何人か狙うと、ハンドサインで告げた。ヒルダは頷き、弓に矢を番える。エンマの弩では、見張りまでは届かないので、エンマは叢の影に隠れている。
二人同時に矢を射ると、見張りの二人に当たった。自分の矢は左側の男の胸に刺さり、ヒルダの矢は、右の奴の太腿に刺さった。
自分は、二の矢を番え、100メートル先の敵のリーダーを狙って矢を放つ、三の矢を番え、敵の集団に向かって射た瞬間、隣にいたヒルダが声を上げて倒れた。
矢が左脛に刺さっている!ヒルダが痛がって転げ回る。エンマが麻紐を取り出し、傷口の上を縛る。
この状態では、ヒルダはもう戦えない。




