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浜辺の粘菌 Slime on the beach  作者: 外山淑
第二部 邂逅
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The Scouts

 ヒルダにインガとアーデルや他の子達への連絡を頼み、自分は崖の上から侵入してきた舟の監視を続ける。

 インガは、山の入り口の前の橋の板を外し、通路を目立たなくする作業を監督する。アーデルは厩舎から馬を引き出し、山への入り口の奥の場所に繋いでおかなければならない。他の子達は、数日分の沢水を壺に汲んで山の家に運ばなければならない。

 海上の舟を観察すると奇妙なことに気がついた。舟の形状が違うのだ。8艘の内、5艘は大きくて、大きさが揃っているが、後の3艘はやや小さくて、大きさが揃っていないように見える。

 大きい5艘の舟に乗っているのは、1、2、3、…7、7人か。小さい方の3艘には、ええと、4人乗りが2艘、5人乗りが1艘だな。総勢48人か。

 始めは、8艘で8人の計64人と思って吃驚してしまったが、案外少ない。それでも、48人は自分達にとっては大軍だ。

 だが、更におかしな点がある。どの舟も1人だけ漕いでいない。舟の指揮を取っている者だったら、背を高くして回りを確認すると思うのだが、身を起こしている様子がない。漕いでいない者は全て舟の中央部にいる。

 1艘の先頭にいた者が手を上げ、浜辺の方を腕で示す。同時に、その舟は、進む方向を変え、浜辺に向かう。川があることを分かって、方向転換を指示しているのだ。たぶん、手を挙げた者がこの部隊の指揮官だろう。

 他の舟もこの舟に続き、進路を変えた。舟が浜辺に近づいてきた。

 真ん中の漕いでいない者の様子が見えてきた。みんな手足を縛られている!捕虜か?その前後には藁の袋みたいな物がある。

 舟が浜に着いた。真ん中で縛られている者を除いた全員が舟から降りて、舟を砂浜に引き上げる。5艘はかなり立派な船だ。船縁が、自分達の乗っている舟に比べて、だいぶ高い。この舟なら荷物などを多く積み込めるはずだ。

 他の3艘は、自分達が乗っているものと同じような感じだ。船縁が低い。

 先に降りた者達が、縛られた者を浜に担いで運ぶ。手足を縛られた者が一箇所にまとめられた。

 手足を縛られた者達は、明らかに奴隷となるものだろう。鷺姫を捜索している途中、警備の手薄な集落を遅い、掠奪し、犯し、殺す。奴隷として使える者、多分。若い女を攫い、舟に乗せた。そんな感じか。

 インガ達の世界ではヴァイキングが同じようなことをしていたはずだ。いや、これからすることになるのか。とにかく、防衛体勢がしっかりしている相手には、交易を行い、守りが脆弱な所は襲撃し、略奪を恣にする。

 インガ達の世界もこちらの世界も変わりない。力だけが物を言う苛烈な世界だ。こいつらは全員殺してしまわないといけない。1人でも逃してしまったら、そいつは新しい敵を引き連れて戻ってくる。

 先程、方向転換を指揮した者が、辺りを見回す。何か気がついたようだ。何かを指示する様子が見える。全員が舟に戻り、武器らしき物を手に取る。

 多分、指揮官は浜辺に流木が無いことに気がついたのだ。ここの浜辺の流木は定期的に自分達が回収している。こういった浜辺に流木が無いことは、人の手が入っていることを意味する。

 こいつはそのことに直ぐ気がついた。油断できない奴だ。まずこの男を始末しないといけないだろう。

 指揮官は、8名程の部下を集め、川上の方を指し示した。偵察隊を編成して、川上を探れと命令したか。指揮官本人は、浜辺に留まるようだ。残念だ。捜索に加わってくれれば、真っ先に処理出来るのに。

 偵察隊が、川沿いに歩き始めた。ただ、あまり、警戒しているようには見えない。これまで襲った集落が弱すぎて、慢心しているのか?

 家で待機していたヘルガを呼び、浜の監視を指示する。特に、あの指揮官の動向に注意するよう付け加えた。

 インガとヒルダ、そして、エンマを集め、毒矢の準備をするように伝えた。こちらに向かってくる敵の数は8人だ。必ず、倒した人数を確認するよう念を押す。

 川岸から登ってくる連中を見通せて、自分達が身を隠せる場所を選び、待機する。

 1時間ほど経ったか。川岸から続く道に動きが見えた。やって来た!緊張が高まる。

 一人二人と偵察隊が姿を見せた。物陰に隠れながら、姿勢を低くしてこちらの様子を伺っている。一応、警戒はしているようだ。

 まだ、8人全員の姿は見えない。もう少し時間が必要か。


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