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浜辺の粘菌 Slime on the beach  作者: 外山淑
第二部 邂逅
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Tidori's Mistake

 125 Tidori’s Mistake


 次の日も硝石採集に向かう。昨日具合が悪くなったことで、グエンは洞窟に行くことを断念した。今日はグエンの代わりに千鳥を連れて行くことにした。

 インガは、防衛体勢の整備の指揮をしなければならないので連れて行くことはできない。

 アーデルは、体が小さい上に、泥田を作る際に馬で犁を引く作業に欠かせない。アーデルは動物の体調や気分の変化を敏感に察知する能力がある。だから、馬を使う作業を行う場合、アーデルを外すことはできない。

 ヘルガも体が小さいし、ハーゲンの面倒も見ないといけない。ハーゲンは、普段はあまり人見知りをしない。だが、一旦、ぐずり始めるとヘルガが相手をしないと泣き止んでくれない。

 残ったのは、鷺姫と千鳥だ。鷺姫は女の子の中で一番小さくて、体力もない。千鳥は、インガやヒルダ、そして、最近大きくなったグエンよりは身長が低いが、体力的にはそれほど劣ってはいない。

 昨日の夕方、洞窟に連れて行くことを告げると驚いていた。ただ、エンマも一緒に行くことから、洞窟に行くことに抵抗は無いようだった。

 朝早く、朝飯を済ませた後、川岸に向かう。自分、ヒルダ、エンマ、そして、新しく加わった千鳥は、服を脱ぐ。

 千鳥は服を脱いで全裸になることに、多少、抵抗を感じているのか、少し時間が掛かった。だが、千鳥も、これまで、蛤採りや陶器作りなどの際に、服を汚さないために全裸になることがあった。ただ、硝石採集の経験が無いので、なぜ裸にならなければならないか分かっていない。

 渋々、服を脱いだ千鳥をエンマの後ろに配置して、みんなで舟を川に押し出し、乗り込む。千鳥の漕ぎ方に問題はなかった。多分、息栖でも舟を操った経験があるのだろう。

 洞窟の前の岸に到着すると、昨日と同様、ヒルダがともづなを持って、川に飛び込む。

 舟を固定した後、壺などを岸に上げ、洞窟の前に立つ。いつもの手順で、松明に火を点け、煙を洞窟に入れる。

 暫くして、蝙蝠の大群が洞窟から飛び出してくると、千鳥が吃驚して、辺りを見回し、隠れ場所となる物陰を探す。だが、自分達が平然としていることが分かると、口を開けたまま、その場に残った。下手に動くと蝙蝠を刺激すると考えたのかもしれない。

 洞窟から蝙蝠が出てこなくなる頃合いを見計らって、洞窟に入る。千鳥への指示はエンマに任せる。エンマは、鷺姫と千鳥に英語を教えながら、鷺姫達の話す日本語も学習している。

 洞窟に入ると、お馴染みの強烈な蝙蝠の糞尿の匂いが襲ってくる。自分達はもう慣れたが、初めての千鳥には大変なショックだろう。口や鼻を被おうにも両手には松明や壺で塞がっている。千鳥は目から涙を、鼻から鼻水を流しながら洞窟を進んで行かなければならない。

 自分達も千鳥と同じく涙と鼻水を出しながら洞窟の奥に向かう。採集場所に着くと、析出した硝石を採集し、壺に詰める。

 壺が一杯になった。急いでこの場から走り出したいが、洞窟の床は、岩が凸凹している上に、蝙蝠の糞尿で滑りやすい。ゆっくり、足元を足で確認しながら洞窟の入り口に戻る。

 洞窟の外に出た。壺を地面に置き、川に向かって飛び込もうとした。その時、千鳥が持っていた松明を火の点いたまま、地面に放おった。その側に、硝石を入れた壺がある。

 自分は慌ててその松明を壺から引き離そうと手を伸ばした。しかし、付着した蝙蝠の糞尿のせいで、足が草の上で滑った。自分は、松明に右脇腹を押し付ける形で倒れ込んだ。ジュっという嫌な音と共に、皮膚が焼ける。激痛と皮が焼ける匂いが襲ってくる。

 自分は歯を食いしばったが、口からはくぐもった呻き声が洩れる。ヒルダとエンマが自分に駆け寄る。千鳥は大きく開けた口に手を当て、立ち尽くしている。

 自分は身を起こしながら、松明を確認する。松明の火はほとんど消えていたが、念の為、松明を川に放り入れる。自分は、ヒルダとエンマに抱えられながら、川に向かって歩く。

 川で汚れを洗い落とした後、火傷の具合を確認する。右の乳房の横から腹に掛けて、大きく焼けただれている。右手を動かすと引きつて痛みが増す。

 嗚咽の声が聞こえる。千鳥が川岸に平伏して、自分に向かって頭を下げている。エンマに向かって、千鳥に体を洗わせてから、早く舟に乗り込ませるように、小声で指示した。大きな声を出すと火傷に響くような気がしたのだ。

 壺を舟に載せ、自分は最後に舟に乗り込んだ。僅かな動きでも火傷した部分が引きつり、痛む。


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