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浜辺の粘菌 Slime on the beach  作者: 外山淑
第二部 邂逅
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Morning Sickness?

 次の朝、早めに朝飯を済ませ、硝石採りに向かう。今回のメンバーは、自分、ヒルダ、エンマ、グエンだ。

 グエンは以前から硝石採りに自分がグエンを連れて行かないことに不満を持っていた。自分がグエンを連れて行かない理由は二つあった。一つは左手の手指が欠損しているため櫂を上手く扱えないことだ。二つめは体がまた小さいため、漕ぎ手に強い力を要求する硝石採りには不適格だったためだ。

 だが、グエンは妊娠してから状況が変わった。グエンの左手はもうほとんど元通りに再生している。左手の動作には全く問題が無くなった。そして、体格も、倒れて回復してから、劇的に向上した。グエンが回復してからまだ一ヶ月半にもならないが、身長は3センチ程は伸びて、ヒルダとほぼ同じくらいになっている。肉付きも良くなっていて、乳房もかなり大きくなった。体の大きさが増えただけでなく、筋力も強くなっている。これなら、硝石を載せた舟を漕ぐことに問題はない。

 そして、インガを残すことにも理由がある。鹿嶋の集団がいつ来てもおかしくない状況だ。インガには、辺りを警戒すると共に、急いで防衛体勢を強化する作業を指揮してもらわなければならない。

 インガが指揮する作業は、扇状地の下の土地を泥田の状態にすることだ。この土地を泥田にすることによって、敵が川の方向から侵入してくる場合、敵の通り道が限定されることになる。敵が狭い通路を密集して行進してくれれば、竹ロケットの破壊効果が最も効率的に働く。

 敵が、竹ロケットを避けるために泥田に入った場合、その動きが鈍くなり、矢の格好な的になってしまう。

 下の土地を泥田にする作業には、小川の水を狙った場所に引き込むこと、土地を犁を使って耕すことなどが必要だ。土地を耕す作業は、アーデルが引く馬を使って行うが、他の作業との連携を図る能力が必要だ。この任に当たれるのは今のところインガしかいない。

 それから、フレイヤを人質にした集団が来襲した時に作成した防御設備は、そのまま維持している。その時は、枯れ草を敷いて隠していたが、今は自然の草が生えて、回りの部分との違いが分からなくなっている。ここに埋めた竹串の点検と補修もしなければならない。

 インガには、崖の上に必ず1名海を見張る者を配置することも指示した。


 舟に硝石を入れる壺、松明、自分とヒルダの弓、エンマとグエンの弩、各々の矢筒を載せ、出発する。今回も、最初から衣服は身に着けない。グエンは、急速に発達している自分の体を見せることに少し抵抗があるようだが、自分達はそんなことを気にしていられない。

 一旦、あの洞窟に入ってしまったら、蝙蝠の糞尿の匂いが着ているものに染み付いてしまって暫く使い物ならないことを、文字通り、身に染みて分かっている。

 満潮に乗り、洞窟を目指す。洞窟の前に付くと、以前はインガがやっていた、ともづなを結びつける作業をヒルダが行う。インガのやり方をきちんと見て覚えていたようで、何の問題もなく、以前の上陸地点に舟を着けた。

 グエンに松明を持って最後尾にいるように指示し、洞窟に入る。以前の採集場所より奥に進み、松明の灯りに淡く白く光る硝石を集めていく。

 途中、灯りが暗くなった。振り返ると、グエンがいない。作業を中断して、洞窟を出る。洞窟の入り口でグエンが朝食べたものを戻していた。流石に、妊娠している身で、この悪臭の中に長時間いることは耐えられなかったようだ。

 グエンは今まで悪阻らしい様子は見せなかったが、さすがにこの強烈な匂いで悪阻を誘発してしまったか。グエンはその場所に寝かせておいて、グエンの持っていた松明と壺をエンマが引き受けて、3人で洞窟に戻る。

 自分が硝石を採集し、いつもはエンマがやっていた壺の交換なども自分が行い、何とか前回と同じ量の硝石を採集し終えた。

 洞窟を出て、硝石を地面に置くと、自分とエンマ、ヒルダは川に飛び込む。一通り匂いを洗い流すと、川から上がり、洞窟の入り口で、気分悪そうに蹲っているグエンを引き立て、川に入るよう促す。

 グエンの体を洗い、そのまま舟に乗り込ませる。自分達3人は、洞窟の入り口から壺を運び、舟に載せる。自分達も舟に乗り、ともづなを外す。帰りはほとんど漕ぐ必要はない。そのまま、船着き場に向かう。


 その日の夕飯、グエンはあまり食べなかった。最近のグエンの旺盛な食欲に慣れていたみんなは驚いていた。

 これも悪阻と言うべきなのだろうか?

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