Kajima's Route
123 Kajima’s Route
いつも蛤を採っている浜辺で、夕飯を摂ることにした。ここまま進めば、山の家に着く時は夜になっているはずだ。明るい内に夕食の準備をする。夕飯は熊肉を焼いたものと蛤のスープだ。
食事の間、再び、鹿嶋の次の侵攻の可能性について考える。鹿嶋は、鷺姫の追跡の件で少なくとも15名の戦闘員を失っている。勿論、自分達が殺した15人だ。
息栖の集団は8人乗りの舟3艘の人員だから、24人か。その3分の1は鷺姫のお付として、護衛の戦闘員は15か16人だろう。この人数の護衛に対して、如何に大人数の部隊だったとしても、鹿嶋に1人も損害が出なかったとは考えられない。
息栖の戦闘員は、全滅する前に少なくとも同じくらいの鹿嶋の人間を殺すか大怪我を負わせているはずだ。自分達の倒した者と合わせると、30名以上が戦闘不能になったと考えて良いだろう。鹿嶋にとっては半数近い戦闘員を失ったことになる。
鹿嶋が有力な地方豪族であることは間違いない。多分鹿嶋が動員できる戦闘員は数百名はいるだろう。だが、その鹿嶋にとっても、30名以上の死傷者は大打撃のはずだ。
千鳥の話に寄ると、今の鹿嶋は、回りに敵を抱えている。南に位置する息栖とは、勿論、公ではなくても戦闘状態だ。でなければ、鷺姫の一行に戦闘員を向かわせるはずがない。川を挟んで西にいる香取とも、対立しているという話だ。北にも、当然、鹿嶋に対抗する勢力がいるだろう。
鹿嶋が、例えば、500名の戦闘員を持っていたとしても、その全てを自分達に向けることはできない。その500の戦闘員のほとんどを、息栖や香取などの回りの豪族に睨みを効かせるために、本拠地に常駐させておかなければならない。
鹿嶋が今回の鷺姫の追跡のために派遣した先頭集団が、今の鹿嶋が自由に動かせる戦闘員だったと考えることができる。鹿嶋にとっては、息栖とその同族集団が大和側に付くことが、自由に使える戦力を全て注ぎ込む程重大な脅威なのだ。
鹿嶋は何が何でも鷺姫を大和の元に行かせるわけにはいかないのだ。念には念を入れて鷺姫の行方を探すに違いない。ただ、鷺姫の護衛の殆どは討ち取ったことは確認しているはずだ。打ち洩らしたとしても1人か2人程だと考えているだろう。
そう考えると鷺姫の捜索隊の規模は大きくはならない。やはり、多く見積もって40人位か。それでも自分達にとっては大人数だ。
鹿嶋はどのルートでここにやって来るか?鹿嶋は、鷺姫を追跡して山に入った戦闘員が帰ってこないことをどう捉えているだろうか?
鹿嶋は基本的に舟の民だ。利根川流域の湿地帯を根拠地にして、川や海を使った交易で勢力を伸ばしている。だから、同じような形態で利根川下流に勢力を築いている息栖が目障りなのだ。鹿嶋の回りには、ここの山のような険しい山々は無い。
舟の民である鹿嶋の戦闘集団が慣れない険しい山岳地帯に踏み込み、現地の部族に襲われて行動不能に陥った。上陸した場所に残った鹿嶋の連中がそう考えても不思議はない。
鹿嶋にとって有利な方策は浜伝いに捜索することだ。この方策でこそ、舟の民である鹿嶋の強みを活かせる。
それに鷺姫やその護衛も、鹿嶋と同様、舟の民だ。いずれは海岸に出てくると鹿嶋は予想するはずだ。海岸に出なければ、大和の方に行くこともできないし、息栖に戻ることもできない。
そう、鹿嶋は必ず海からやって来る。収穫を終え、武器や糧秣を用意し、負傷者を健常な者に置き換える。鹿嶋の行動が早ければもういつやって来てもおかしくない。
収穫が終わって直ぐ、捜索隊が鹿嶋を出発したとしよう。捜索隊は海岸線を辿りながら鷺姫の消息を確認しなければならない。そのことを計算に入れても、遅くても1ヵ月以内にはここに辿り着くだろう。
竹ロケットは現在7個ある。40人が文字通り一団となって向かって来るならば、7個でも十分勝算はある。しかし、そんな甘い皮算用通りにはいかないだろう。
前回、竹ロケットを使用した時は1発で3人から4人に被害を与えることが出来た。その計算でいけば、竹ロケットは今の倍は必要だ。明日にでも洞窟に硝石を採りにいかなければならない。
食事を済ませ、暗くなりかけた道を通り、山の家に戻る。




