Picking Persimmons
次の朝、熊肉で朝飯を済ませた後、柿の収穫に取り掛かる。
柿の木の下には、熊の食べ散らかした柿の実が転がっている。その中からグエンが手のつけられていない実を見つけ出し、ヘルガとアーデルに手渡した。
三人で一緒に齧り付いたが、直ぐに顔をしかめて、口の中の実の欠片を吐き出した。干し柿を食べていてその甘さに慣れていたので、この生の柿も甘いと思ったのだろう。残念だが、これは渋柿だ。干し柿にしなければ甘くはならない。
グエン達は、自分の方を見て、何故?という顔をしている。まあ、熊もこれだけ食べ散らかしているから、食えないほど不味いとは予想できないだろう。熊と人間の味覚は異なっていて、渋柿でも平気で食べる。
鷺姫と千鳥は、グエン達の様子を見て笑っている。彼女たちにとっては当たり前のことだからな。
木の回りに落ちている柿は、ほとんど熊に食い荒らされていた。食い荒らされた柿を片付けた後、アーデルとヘルガが木に登り、柿の実を棒で叩き落とす。
グエンも登りたがったが、みんなが引き止めた。妊娠中の体で、転げ落ちたら大変だ。グエンは左手が元通りになりかけているので、今まで出来なかったことを何でもやりたがる。
収穫した柿の実は背負い篭2つに一杯になった。その中にはグエン達の齧りかけの柿も含まれている。
本来ならば背負い籠4つ分は採れたはずだが、半分ほど熊に食い散らかされたことになる。
柿の収穫の後、東端の海辺に向かう。
海辺に到着すると直ぐ、自分は回収した毒矢を海で入念に洗う。特に鏃の部分は時間を掛けて磨くように洗った。自分と、インガ、そして、ヒルダの皮の手袋も同様に洗う。トリカブトの毒は猛毒だ。その扱いは常に慎重を期すことが要求される。
念には念を入れ、毒を塗っていない回収した矢も洗っておく。
東端に来たので、この場所について、鷺姫と千鳥に、ここを知っているかどうか聞いてみた。二人共知らないと言う。水路の先のカルデラ状の入江についても尋ねてみたが、やはり、知らない、見たこともないと答えた。
そうすると、鷺姫達は、カルデラのさらに北側の山の中を通って来たということになる。
新たな鹿嶋の追手は来るのかどうか。来るとしたらどれくらいの人数が来るのか。これも聞いてみたが、見当が付かないようだ。
この前自分達を襲ってきたのは、多分、鷺姫達を舟で襲ってきた連中の一部だろう。鷺姫達の護衛に阻まれて、護衛との戦闘に手間取った。その間に鷺姫達が遠くまで逃げてしまい、その足取りを見失ってしまった。
鷺姫の護衛を殲滅することを優先して、その後鷺姫の追跡を再開したから、自分達の場所への到着のズレが生じたか。その場合、山に入っての追跡は、舟の集団の全員ではないはずだ。必ず、残った者がいる。
残った者が、山に入った者が帰還しない場合、一旦、鹿嶋の方に連絡をするはずだ。
鹿嶋の方も、ここと同様に収穫期のはずだから、直ぐに大人数を出すことはできない。しかし、一月もすれば、捜索隊を出すことは十分あり得る。
この前の侵入者は15人だった。自分達の持っている舟と同じような舟であれば、… そうだ、鷺姫達に彼女達が乗ってきた舟について尋ねなければ。
鷺姫と千鳥に彼女達の舟は何人乗りか聞いてみる。8人乗りで3艘だったという。たぶん、鹿嶋の舟1艘の乗員も8人程だろう。
侵入者の15人は約2艘分だ。追手の全員が鷺姫達との戦闘で無傷だったとは考えられないから、半分は何らかの手傷を負って追跡を継続できなかったと考える。
それでも、さらなる追跡に15人も割けるということは、鹿嶋の手勢は息栖の3倍位だったか。つまり、70から80人位の軍勢だ。船だと10艘位か。
鷺姫の護衛はほとんど倒したことは、鹿嶋も分かっているはずだ。だから、捜索隊はそんなに大人数にはならないはずだ。精々、半分位か。それでも、30人から40人にもなる。この前とは比較にならない。
竹ロケットを増産しなければならないな。
熊との戦いの高揚感は早くも失せた。自分は悩みを新たにして、帰路に就く。みんなは熊の皮を撫でながらはしゃいでいる。




