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浜辺の粘菌 Slime on the beach  作者: 外山淑
第二部 邂逅
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The Season of Harvest

 千鳥の話が終わった。秘密を打ち明けられたかと言って、自分達に出来ることは無い。

 自分達は鷺姫達を大和勢力の元に送り届けることはできない。そんなことをすれば自分達が奴隷に落ちてしまうことになる。自分達は、見た目では女ばかりの10人に満たない集団だ。彼等にとっては格好の獲物だろう。

 鷺姫が息栖の名代という主張も受け入れられるかどうかも疑わしい。立派な護衛がついていればこその名代だ。

 息栖に送り返すことも同じ理由で不可能だ。自分達はまず自分達の身の安全を確保しなければならない。この場所を出ていくことは、自分達の身の安全を危険に晒すことになるのだ。


 グエンが倒れてから20日程になる。グエンの左手の指は、全てほぼ第一関節辺りまで再生している。身長も1センチ以上、いや、2センチ近く伸びた。乳房も目に見えて膨らんできた。

 髪の毛にも変化が見える。髪の根本の1センチ程の部分が鮮やかな赤になっている。これまでのグエンの髪はやや茶色がかった赤だったのだが、根本の部分だけが鮮やかな赤に変わっている。

 それに、瞳の色も、より鮮やかな緑色になったようだ。髪と違って、比較できる元の要素が残っていないので、断言はできないが、明らかに緑色が濃くなった。

 グエンの成長がこのままのスピードで進めば、出産する頃には、インガやヒルダより背が高くなるだろう。自分は、グエンの体が小さいため、出産が難しいかもしれないと考えていたが、このまま成長してくれれば、その心配は無くなるだろう。

 自分の遺伝子の特殊能力は、自分の子供が無事に産まれるように、その母体のあらゆる身体的問題を解消するということだ。この身体的問題には、怪我や病気だけでなく、体格も含まれるということか。

 自分がグエンの妊娠を宣言してから、グエンは公然と自分に体を密着させ、甘えるようになった。最近では、毎日、左手の再生具合を見せにやって来る。他の子達、特に、インガとヒルダはあまりいい顔はしないが、グエンは気にしていないようだ。

 明日からヒエの収穫が始まる。嵐が過ぎてから12日程経った。晴天が続き、心配した倒れた穂もしっかり乾燥している。


 朝、早めに朝飯を済ませてから、ヒエの収穫に向かう。この前のイノシシの一件があるので、インガとヒルダが山の方角を監視してる。

 ヒエの収穫はエンバクの場合と大差ない。まず、鳥避けのために掛けておいた網を外す。ヒエを根本から刈り取り、竹で組んだはせがけに掛け、乾燥する。

 乾燥したヒエの束を、竹で作った千歯こきを使って脱穀する。ヒエの畑全てを刈り取り、さらに脱穀するのに丸4日掛かった。

 ヒエの収穫から2日置いて、アワの収穫に入る。アワの収穫の場合は、アワの穂の下の部分を手一掴み分残して刈り取る。五、六本の穂を纏めて縛り、乾燥する。

 ヒエの場合もアワの場合も、乾燥する際に、一々、鳥避けの網を掛けないといけない。これが結構面倒くさい。

 収穫の際に、どうしても零れ落ちる実を狙って、雀などが寄ってくる。そういった鳥を、ロムとレムが、獲ったり、追い払ったりして、そこらじゅうを駆け回っている。

 アワの収穫と後処理に、やはり4日ほどを要した。

 ヒエもアワもインガ達にとっては初めての穀物だ。勿論、朝飯や夕飯の粥の材料として目にしていたが、実りの様子は初めて見たし、収穫も初めてだ。だが、収穫の方法を一二回やって見せるとほとんど問題なく収穫していった。

 グエンの左手は、指の第一関節を過ぎて、第二関節まで後半分程まで再生したが、まだヒエなどの束を握れるほどではない。他の子が上手に収穫する様子を悔しそうに見つめていた。


 また中2日開けて、イネの収穫を行う。水田の水は既に抜いていて、地面は固くなっている。イネは、インガたちにとって一番珍しい穀物だ。水の中で育つ穀物という存在が彼女達にとっては驚きなのだ。

 収穫の手順自体はヒエの場合と全く同じなので問題は無い。ただ、ヒエより低い背丈にも拘らず、実が大きいことにも驚いていた。

 イネは、ヒエやアワより、丈が短いにも拘らず、収量が多く、粒が大きく扱いやすい。他の穀物を駆逐していくわけだ。

 収穫に勤しむ自分達の回りを、ロムとレムが駆け回っている。

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