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浜辺の粘菌 Slime on the beach  作者: 外山淑
第二部 邂逅
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Drawing a Map

 トリカブトを採取した次の日、エンマと共に、小屋に入りトリカブトの処理を行う。エンマは、トリカブトにも興味を示し、色々聞いてきたので、作業しながら説明する。

 トリカブトを直接触らないように、皮布を使って押さえながら、木の棒で擦り潰していく。花、葉、茎、そして、根も全部擦り潰してペースト状にする。

 出来たトリカブトのペーストを小さな蓋付きの壺に入れ、しっかり蓋を紐で固定する。

 トリカブト毒の取り扱いには注意が必要だ。うっかり素手で触らないようにしなければいけない。当分は、弓を射る者だけ使うことにしよう。

 矢を番えるときには、手に傷が付きやすい。傷から毒が入り込む可能性がある。それをどう防ぐか。

 そうだ、手袋を作ろう!皮の手袋で手を保護すれば良い。今、弓を使うものは、自分とインガそしてヒルダの3人だ。3人分の手袋を作るのに十分な皮はある。この前グエンと獲った鹿の皮もあることだし。

 そんな事を考えていると、戸口に人影が見えた。今は猛毒を扱っているので、人払いをしていたはずだが。何の用だろう?

 戸を開けると、鷺姫と千鳥だった。

 鷺姫が口を開いた。「わがかくろべごとうてぃあけるべち 」我が隠ろへ事打ち明けるべし 。私の秘密を打ち明けます。ということか。

 ようやく話す気になったようだな。

「われらおきとぅがものなり」我等息栖の者なり、か。これは既に分かっていることだ。

 片言の遣り取りで、なおかつ、立ち話では、中々、意志の疎通が難しい。いつも、インガ達に英語を教える際に使っている場所を指差し、「あてぃらで」あちらで、と言い、その場所に向かう。

 鷺姫達は頷いて、自分に付いてくる。

 鷺姫達の話だけから事情を理解していくことは、かなり時間が掛かるだろう。まず、自分の理解していることを提示して、それを確認し、情報を付け加えていった方が手っ取り早いはずだ。

 英語の文字の説明に使っている竹の棒を使って、茨城県と千葉県の太平洋岸の大雑把な地図を描く。鷺姫達は、自分が何をしているのか意味が分からないようだ。

 回りには、エンマだけでなく、他のみんなも興味を引かれて集まってきた。

 茨城県と千葉県の県境の位置に線を引く。「とね、かわ」利根川のつもりだが、通じるか?

 鷺姫と千鳥は、すぐ分かったようだ。

 利根川の河口に近い茨城県側に丸く印を付けて、「おきとぅ」息栖、と言うと、二人共大きく頷いた。そこから少し北に当たる位置に、別の丸を描いて「かぢま」鹿嶋、と言うとやはり大きく頷いた。

 利根川の千葉県川に大きく丸を描いて、「かとり」香取、と言うと、吃驚しながらも、頷いた。

 さらに、海に当たる場所に波線を引きながら、「うみ」海、と言うと、笑い出した。

 房総半島の南の山が多い部分に、山形の印を沢山書いて、「やまやま」山々、と言うと、声をあげて笑い出す。

 そして、山形の印の下、鴨川辺りに相当する位置に丸印を書いて、「ここなり」この場所だ、と言うと、急に真顔になった。

「なにかくわうるべちか」何か加えるべきか?と尋ねた。千鳥が、自分が手に持っていた棒を指し示す。

 その棒を千鳥に渡すと、千鳥は香取の丸の少し上流側に、新しく丸を描いた。「こまとぅ」こまつ、といった。小松?ああ、神崎(こうざき)神社のことか。神崎神社って、そんなに重要だったのか?

「ながわたりちみてぃちめつべてぃ」汝が渡りし道示すべし、お前たちの来た経路を示しなさい、と言った。

 千鳥は、息栖の印から線を描き始めた。海に出て、千葉県の海岸線に接したり離れたりしながら南に向かって線を続ける。たぶん、舟に乗って海岸の所々に寄港して来たということだろう。

 そして、勝浦辺りで、海から離れて山に中に入り、この場所の印に到達した。ということは、東端の向う岸の反対側辺りに上陸して、カルデラの縁に沿ってやって来たということか。

 千鳥は頭が良い。たぶん、初めて地図というものに接したはずだ。地図の理解にはかなり抽象的な思考が要求される。しかし、千鳥は、それを理解し、自分のいる場所、いた場所を直ぐに指摘できる。現代人でも結構難しいことなのに。

 それはさておき、ここからが本題だ。鷺姫の秘密とは何か?


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