Search for Wolfsbanes
嵐が去ってから8日目にようやく煙突は完成した。砂鉄も順調に貯まり、今回の作業には充分だ。さあ、製鉄の開始だ。
今回の製鉄作業の指揮は、エンマに任せる。エンマの指揮の元、全員が交代で、砂鉄と木炭を炉に投入していく。
鷺姫と千鳥にとっては初めての作業だ。これから何が出来るのかをエンマに尋ねている。エンマは"Iron!" 鉄!と答えるが、鷺姫達には通じない。
しかたなく、エンマは矢を取り出し、その鏃を指差して、"This is iron!" これが鉄!と教える。
鷺姫は、「ああ、くろがね!」と、ようやく分かったようで、千鳥と頷きあう。
朝から始めた製鉄作業も、夕暮れが近づき、そろそろ終わる。砂鉄と木炭の投入を止める。暫くしてから、炉の中から、赤く光る鉄を取り出し、平らな岩の上で金槌を使い整形し、切り分ける。
切り分けた鉄を鏃に整形する作業をインガとヒルダに交代でやらせる。まだ柔らかい鉄を、鏃に整形するにはかなりの腕の力を必要とする。
インガとヒルダは、弓を使うようになってかなり腕の力を付けてきている。しかし、まだまだ、筋力が弱い。これは彼女達の筋力を伸ばす良い機会だ。それに、自分達で鏃を作る能力を持つことは大切だ。
今回の製鉄は、鏃の製造に特化する。これまで、外部からの侵入者が頻繁にやって来ている。平均すると、3ヶ月に1回だ。
今の自分達には接近戦は不利だ。自分達の強みである弓矢を使った戦い方を展開するためには、潤沢な量の矢が必要だ。
ただ、まだインガ達の弓は威力が足りない。彼女達はここに来てから、半年位しか経たないのに、体格が大幅に向上した。だが、女の子であるため筋力がまだまだ弱い。
筋力の弱さをどう補うべきか。そうだ、毒矢がある。鏃に毒を塗って射れば、矢の力が多少弱くても敵に大きなダメージを与えることが出来る。
この場所で採取できる矢毒は、トリカブトとアカエイだ。
トリカブトは、山に自生しているはずだ。今は9月だから、ちょうどトリカブトの花が咲く時期だ。
アカエイは、遠浅の浜にいる。まさに、目の前の浜辺みたいな所にいるはずだ。穀物の収穫が終わったら、鳥避けの網を改造して投網を作って試してみよう。
製鉄作業は、前回同様、2日間行った。エンマの指揮で何も問題が起きなかった。やはりエンマは優秀だ。
製鉄を終えた次の日、ヒルダ、エンマ、アーデル、そして、鷺姫を連れて、トリカブトを探しに山に向かう。
沢伝いに山を登りながら、日陰になりやすい場所を注意して進む。
"What are we looking for?" 何を探すの?とエンマが聞いてきた。
"Wolfsbane." トリカブトだ、と答えた。
エンマは首を傾げる。ピンとこないようだ。トリカブトを知らないのか、それとも、単に言葉がわからないのか。
"A flower which can kill wolves." オオカミを殺すことが出来る花だ、と説明した。エンマは驚いた顔をした。
その時、アーデルが叫んだ。
"How beautiful!" なんて綺麗なの!アーデルが紫色の花が幾つも連なった総に手を伸ばそうとしている。
"Do not touch it! It kills you!" それに触るな!死んでしまうぞ!自分が叫ぶ。アーデルは吃驚して慌てて手を引っ込めた。
"This is a wolfsbane! This one can kill one hundred men!" これがトリカブトだ!これだけで100人も殺せるんだ!
エンマもヒルダも、怯えた表情を浮かべる。鷺姫は何が起こっているか分からずキョトンとしている。
自分は皮の布でトリカブトを包んで慎重に引き抜く。引き抜いたトリカブトを蓋の付いた壺に入れ、蓋をする。
辺りにはまだ数株生えている。それらも、皮を使って注意深く採取する。ただし、全部は採らない。次の年も採集できるよう少しは残しておかなければ。
トリカブトはこれで十分だろう。アカエイはイネの収穫が終わってからだ。




