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浜辺の粘菌 Slime on the beach  作者: 外山淑
第二部 邂逅
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After the Storm

 111 After the Storm


 朝飯を食べ終えた頃からまた風が強くなってきた。急いで火の始末をして家に入る。

 自分は家や小屋の様子を確認する。今のところ、被害は製鉄の炉の煙突だけのようだ。

 点検を終えた頃に風に雨が混じり始めた。風は西から吹いてくる。前日の風は東風だった。そうすると先程の無風状態は台風の目の中にいたということか。

 前日と同じ様に家の中で作業をしながら、言葉の学習を続ける。夕方になっても風雨は続いている。

 再び、中々寝つけない夜を過ごす。

 明け方、目覚めると明るい光が差し込んでいた。外に出ると多少風はあるが雨は止んでいて、青空が広がっていた。

 まだ風が強い。火を使う調理は昼まで待つことにして、鹿肉の燻製を齧り、壺の水を飲んで朝飯とした。

 家の回りの被害は、昨日確認した煙突が折れたこと以外に、大きな損傷は見られない。

 山を下りて、田畑の確認に向かう。アワやヒエ、イネは殆どが薙ぎ倒されている。後10日程で刈り取りの予定だが、それまでに立ち直るかどうか。あるいは、早めに刈り取ってはせがけで乾燥させたほうが良いのか。悩ましいところだ。

 畑の隅の方が掘り返されている。山芋のムカゴを植えておいた場所だ。少なくとも4,5本の山芋が掘り起こされ、その残骸が辺りに散らばっている。周囲には大きな獣の足跡が無数にある。

 イノシシだ。多分、1頭だけみたいだが、その足跡から見るとかなり大きい奴だ。

 みんなに警告を出し、弓や弩を携帯するように指示する。

 インガ、エンマ、アーデル、そして、鷺姫と一緒に、このイノシシを追跡することにする。

 留守番は、ヒルダを中心に、ヘルガ、グエン、そして、千鳥に任せる。

 ヘルガはまだ小さいハーゲンの世話をしなければならない。グエンは妊娠しているから、不要な危険は犯させたくない。千鳥の弩の腕はまだまだで、狩猟には足手まといになる。

 大雨の降った後だから、あまり遠くまで追うことはしない。ただ、巨大なイノシシが近場に潜んでいる場合は駆除しなければならない。

 雨のためイノシシの匂いを辿るのは難しいが、一応、ロムを連れて行く。レムはヒルダ達とお留守番だ。

 このイノシシを仕留めた場合、運搬が問題と成るので、ブラウンも連れて行くことにした。

 泥水が流れる斜面の獣道を、足跡をたどりながら進む。暫くすると、ロムが何かに反応した。40か50メートル程先の茂みの下にイノシシがいた。イノシシはその場に留まったまま動いていない。休んでいるだけなのか、それとも、寝ているのか。

 イノシシのいる方が風上で、嵐の後で沢の水音が大きいためか、イノシシが自分達に気づいている様子は無い。

 インガに手を使って、一緒に弓を射るという合図をし、他の子達には弩を発射できるように準備をするよう手で指示する。鷺姫はまだ手の合図には慣れていないが、他の子の様子を見て、それを真似ている。賢い子だ。

 インガとタイミングを合わせて、矢を射る。腹に当たった!インガの矢も尻に刺さった。だが、イノシシは直ぐに動き始めた。

 直ぐに二の矢を番えて、再び射る。これも腹に命中した。インガは、まだ二の矢を番えていない。インガは、二の矢、三の矢を手早く番えるようにすることが今後の課題だ。

 自分は三の矢を番えて、イノシシに近づく。みんなも自分に続く。

 イノシシは自分達に気がついて、自分達の方に向かって来た。自分達は右側の斜面に上がり、そこから一斉にイノシシに向けて矢を放った。イノシシはその場に崩れ落ちた。

 念の為、心臓の位置に矢を射込み、止めを刺す。かなりでかいイノシシだ。体長は150センチを越えている。

 急遽、近くにある木の枝でトラヴォアを作り、イノシシを括り付け、ブラウンに引かせて、家に戻る。

 戻った頃には、昼を過ぎていた。急いで、イノシシを処理し、皮を剥ぎ、肉を切り分ける。今日の昼飯兼夕飯はこの肉だ。

 もう秋になる。これからはイノシシやクマが出てくる可能性が高くなる。これらの警戒もしなければならない。

 警戒を強化しつつ、収穫の準備をしなければならない。ああ、台風で倒れた煙突を作り直すこともある。

 ああ、台風が通り過ぎた直後だから、ハマグリを採ることも暫くは控えなければならない。

 このイノシシがその間のタンパク源となるのか。特にグエンは、胎児の成長のためと、自分の手指の再生のために、これから沢山のタンパク質が必要となるはずだ。

 グエンと自分の子か。まだ実感が湧かない。

 出産は来年の6月辺りになるはずだ。普通ならば。

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