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浜辺の粘菌 Slime on the beach  作者: 外山淑
第二部 邂逅
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Gwen Is Down!

 グエンの浮かれた陽気さは次第に落ち着いていった。だが、以前の不満げな様子が再び現れることもなかった。

 竹ロケットを作り終えたのは8月6日だ。9月に入ると粟、稗、そして、稲の収穫が始まる。これらの穀物の収量は大幅に増えるはずだ。

 増えた穀物を入れる容器が大量に必要となる。麻袋は数が足りない上に、どうしても虫や鼠の被害に弱い。蓋付きの壺などがまだまだ足りない。

 鉄ももっと必要だ。鷺姫の件で、自分達は常に外敵の侵入を警戒しなければならなくなった。敵を撃退するためには、自分達の主力兵器である弓や弩の矢が大量に必要になる。

 火薬や竹ロケットがあれば全ての敵を撃退できるわけではない。火薬の類は、あくまで、最終手段として取っておかなければならないのだ。

 こういった問題に対処するためには、陶器、木炭、鉄、塩などを収穫が始まる前までに作っておく必要がある。しかし、日にちが限られているので、これらを作る作業を同時並行的に行わないといけない。

 そこで、それぞれの作業ごとにグループを作ることにした。

 陶器製作には、ヒルダをリーダーにして、ヘルガ、そして、鷺姫を当てる。

 木炭作りには、馬で木材の運搬を行うアーデルを中心に、グエン、そして、千鳥を配置する。

 製鉄は、自分の指導の元に、インガとエンマが担当する。エンマには製鉄の仕組みをもっと学習してもらわなければいけない。

 塩作りは、一昼夜を使って海岸で全員が対応する必要があるのでグループ分担にはしない。

 陶器製作と製鉄のための高炉作りは、常に粘土を扱わなければならない。そのため、この2つのグループは、服を身に着けずに作業を行う。何かを身に着けるのは、経血の出欠時だけだ。

 陶器グループのヒルダとヘルガの出血は8月26日から始まる予定だ。その時までに、水を使って粘土を整形する作業は終わっているはずだ。ただし、鷺姫の出血時期はまだ分からないが、始まったら、水を扱う作業から外せば、問題は無いだろう。

 インガとエンマの出血は8月8日から始まり11日に終わる。製鉄の最初の作業は穴掘りと整地が主な仕事だ。インガとエンマは、始め、穴掘りを主に担当して、水を扱う作業は自分が行うことにしよう。

 炭焼は、水を扱うことはない。ただし、炭の搬出は煤まみれになるため、やはり服は身に着けないで行う。アーデルとグエンの出血時期は17日からだから、まだ炭を取り出す時期ではないから、これも問題ないだろう。

 みんな、それぞれに割り当てられた作業を一生懸命にこなしている。自分とインガそしてエンマの間の気不味い緊張は、高炉作りのきつい作業を行っている内に、次第に薄れていった。

 8月17日、アーデルと鷺姫の出血が始まった。グエンの出血は無い。アーデルとグエン、そして、フレイヤの月経の周期は、これまで同じで、かつ、規則的だった。グエンの妊娠は確定した。

 インガ達との間の薄れかけていた緊張が再び高まった。インガ、ヒルダ、そして、エンマの自分に対する物問いたげな視線が痛い。

 自分とインガ達との緊張関係は、他の子達にも伝わったようだ。アーデルとヘルガが、時折、ヒソヒソと話をするようになった。自分を見ながら。

 鷺姫達も何か分からないが、何かが変だと感じているようだ。

 ただ、グエンだけは何事も無かったように振る舞っている。

 自分も、高炉作りの作業に集中して、他のことは考えないようにしていた。


 自分が高炉の煙突を作る粘土を捏ねていると、アーデルが駆け込んできた。

 "Gwen is down!" グエンが倒れた!と叫びながら。

 自分は、泥の付いた手足のまま、裸で山を駆け下りた。

 グエンは、窯の側の地面に横たわっていた。グエンの体は激しく痙攣していた。


 浜辺で自分が目覚めてから1183日目、温泉の件から20日目、8月22日のはずだ。


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