Passion in the Spring
次の朝、朝飯を済ませた後、グエンと二人、狩りの支度をして出かける。インガとヒルダには狩りに行くと告げたが、自分達が二人だけだと知ると、訝しげな表情を見せた。
狩りの支度と言っても、自分は褌を着けているだけだ。自分はまだ乳が出る状態なのでブラジャーを着けない。グエンも、腰布を巻いているだけだ。
グエンに、"Where to?" 何処に?と聞く。
"To the hot spring." 温泉へ、と答えが返ってきた。
温泉までの道すがら、グエンに話し掛けたが、グエンは言葉を返さない。
温泉に着いた。
グエンは、"Let’s take a bath." 温泉に入ろう、と言って、腰布を取る。
自分も褌を取り、湯船に入る。湯船は、二人なら何とか一緒に入ることが出来る。
湯船に入ると、グエンが、開口一番、"I am useless!" 私は役立たずだ!と叫んだ。
"No! You are not!" 違う!と自分が返す。
"Yes! And I am crippled!" そして、片端だ!とグエンが、左手を突き出し、右手で右目を指差しながら、更に続ける。
"You are neither!" どっちでもない!と返す。
"And I am ugly!" そして、醜い!とグエンが、涙を浮かべながら、叫ぶ。
"No! You are not!" 違う!と自分が、再び、否定する。
"Really?" 本当に?とグエンが尋ねる。
"Really!" 本当だ!と答える。
"You have two new members." 新しく二人仲間が加わったわね、と話題が変わった。
話がどう進むか分からず、黙って頷く。
"They are beautiful! Especially, Tsagi!" 彼女達は綺麗よね、特に、鷺姫は!と、言い放つ。
どう答えて良いか分からず黙っていると、
"You will dump me! Like Freya!" わたしを捨てるんでしょ!フレイヤみたいに!と自分に詰め寄る。
"No! I will not!" いや、そんなことはしない!と答える。
"Do you love me?" わたしのこと好き?と尋ねる。
"Yes! I love you!" ああ、好きだ、と答える。
"Show me!" 証拠を見せて!と言うので、グエンを抱きしめようとすると、
"Not that way! Use this!" そうじゃなくて、これで!と言いながら、自分の陰茎を掴む。
"Using this makes you hurt!" そうしたら君が傷つくぞ!と言いながら、グエンの手を陰茎から引き離す。
"I know you do not love me!" やっぱり、わたしを好きじゃないのよ!と、グエンは泣いていた。
グエンはこの集団から見捨てられるという恐怖感を抱いている。その恐怖を言葉、それも片言の言葉で打ち消すことは難しい。
だが、グエンの抱いている恐怖を無くさなければ、グエンの自分達に対する愛情や信頼は、ベクトルを変えて、憎しみに変わってしまうだろう。フレイヤみたいに。
自分はフレイヤに対する対応をどこかで間違ってしまったのだろう。そのときに正しい選択をしていれば、フレイヤは自分の側に仲間として立っていたはずだ。
グエンを第二のフレイヤにしてはならない。
自分はグエンの左手を引き寄せ、グエンを抱きしめた。自分の乳房とグエンの乳房が重なる。自分はグエンの顎を少し上に傾け、唇を重ねた。
グエンの左手が、自分の髪を優しく撫でる。指のない掌が。あの悪夢の夜と同じく。
温泉を後にして、自分達は暫く、狩りの獲物を探した。
若い鹿を見つけた。まずグエンに弩で撃たせた。グエンの矢は鹿の尻に当たった。鹿が直ぐに逃げようとしたところを、自分が腹を矢で撃ち抜いて仕留めた。
グエンは鹿に矢が当たったことを素直に喜んでいる。その笑顔にもう曇りはなかった。
自分が鹿を担いで家に帰る。




