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弓矢を作る

 天蚕糸という強靭な糸が手に入った。これを使って弓矢を作ろう。

 本来は、カラムシのような麻紐で作れば良いのだが、自分が作った麻紐は強度に不安がある。

 元の麻糸が不揃いであるため、弓に張る位の強さを持たせるためにはかなり太い紐にしなければならないのだ。

 天蚕糸で作った紐は、釣り糸に使われたくらいだから、細くても十分な強度を持っている。


 まず弓を作る。

 竹を割って、長さ2メートル程、幅2センチ程の竹材を2本作る。竹材の外側同士をくっつけて、両端と中央部分を麻紐でしっかりと固定する。竹の両端に切れ込みを入れる。竹の下端の切れ込みに天蚕糸の紐を結びつけ、竹に力を入れて弛めながら、上端の切れ込みに天蚕糸紐を引っ掛け固定する。

 弓の握りの位置を、弦の長さが下から5分の2のところに設定する。これは、和弓の握りの位置だ。

 この位置に弓の弦の振動の節が来るため、握り手に来る振動が少なくなり、手や腕にかかる負担が洋弓の場合より軽いということだ。これから、何回も弓の練習をしなければならないので、手への負担は少なければ少ないほどよい。

 とりあえず、これで弓は出来た。


 次は矢だ。

 矢の材料となる竹はそこら中に生えていた。浜辺から沢に至る道のそこここに、矢の材料に適しているヤダケの藪がある。なるべく真っ直ぐで長い竹を選んで30本位刈り取る。皮を剥き、自分の右肩から伸ばした左手の先までの長さに切る。先端に石を割って作った鏃を取り付け、麻紐で固定する。矢柄には、罠で捕まえたキジやヤマドリの尾羽を松脂で接着する。

 竹に割れたものがあったり、羽が足りなかったりしたため、結局、20本程しか作れなかった。


 弓矢が出来上がったので、すぐに練習を始めた。

 20メートル程離れた木の幹を狙い、目いっぱいに弓を引き、矢を放った。

 矢を放ったと思った瞬間、胸に激痛が走った!

 痛ーーーーーい!痛い!痛い!痛い!

 自分に大きな乳房があることを完全に忘れていた。

 ブラジャーを外すと、左の乳房の内側、真ん中ほどのところに縦に一直線に赤い線が引かれていた。

 左胸全体が激しく痛む。

 完全に油断していた。

 ブラジャーを着けていることで、以前より、乳房を意識することが減ったためか?

 いや、ブラジャーを着けたからではなく、乳房があることに慣れたということだろうか?

 乳房の痛みが引くまで、暫くかかった


 古代ギリシャの伝説にある女だけの部族アマゾンの戦士は、弓を引くのに邪魔になるとして、左の乳房を切り落としていたという。この経験から考えると十分肯ける話だと思う。


 放ったと思った矢は、弓の弦が乳房に当たったことで矢に加わる力が削がれ、ほとんど飛ばなかった。


 弓の練習を再開するためには、乳房が弓の弦に当たらないようにしなければならない。

 日本の弓道では、女子に胸当てが用意されている。その胸当ては皮で作られていたはずだが、今のところそんな皮は無い。取り敢えず、手元にある背負い籠の当て布を使って、代用品を作った。


 翌日、弓の練習を再開した。一応、胸当ては着けたが、矢を射る時は胸をあまり反らさないようにすることを常に意識した。

 やはり、最初はなかなか当たらない。当たらないどころか、ほとんどの矢は、的の木のところまで届かない。

 何度も練習を重ねることで、ようやく的の木に当たるようになった。しかし、まだ矢の力が弱く、幹に食い込むまでには至っていない。

 10日程練習を重ねて、矢がしっかりと幹に食い込んで刺さるようになった。やはり、命中精度や威力を上げるためには練習あるのみだ。

 ただ、石の鏃を使っているため、木の幹を的にして練習を重ねると鏃の損傷が著しい。どうしても、鏃を着け直す作業が多くなる。これが地味にこたえる。


 矢が的にしっかりと刺さるようになったので、鹿などの大きな獲物で試すために森に入ろうと考えていた矢先、3度目の出血が始まった。

 浜辺で目覚めてから84日目、おそらく、8月18日だ。


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