93 拝金主義者 車から一歩も下りない。
山賊狩りは根元まで立つ、これ大事。
魔導車にはいろんなカスタムパーツがあるが、積載量を増やすための荷台を繋ぐこともできる。全部で10人程生き残った山賊と、グルだった商人3人と護衛の傭兵3人、あわせて16人の人間を収容しても余裕の積載量とパワー、うちの愛馬は強力だよ。
「だせー、わしをだれだと思っているー。」
「ふざけんなー、同業なのにこの仕打ちはないだろ。」
なんかうるさいけど気にしたら負けだ。
「いいんですか?あれー。」
荷台から聞こえる声をキアリーさんが気にしているようだけど、ほぼ確定でグルなので聞く気はない。
「あの状況で、山賊を相手をしているのに、様子見してたなんて傭兵とは言えないからね。」
痺れ状態のキャラバンに近づいたとき、商人たちは巻き込んだことに憤慨し、傭兵たちは助けろと騒いだ。それもおかしい。
本来なら同士討ちや誤解を招かないために名と職種を名乗り身分証を見せるのが礼儀だ。痺れていたとはいえ、それをしないで罵ってくる時点でかなり怪しい。
「なにより傭兵なのに、山賊は見つけ次第殲滅が基本がなってない。」
山賊を前にしり込みにしている時点で本来なら懲罰ものだ。わざわざ生け捕りにして護送している時点でだいぶ優しいよねー。
というわけで、この無駄なゴミを降ろすべく、ルートを変更して近くの街、マルムまで来たわけだが。
「た、助けてくれー。人さらいだー。」
「な、なんだと、そこの魔導車の運転手、どういうことか説明しろ。」
街の入口、検問所にて急に大声を上げる商人(笑)に、図ったようなタイミングでこちらを囲んでくる衛兵たち、長い槍にボウガンを構えたその数50人ほど。小規模な街のほぼ全員が出張っている。
「大根芝居が流行っているのか?」
「えーこれ演技なんですか?」
「うん、だろうね。」
車から降りることなく俺はアクセルを踏む。
「ちょ、ちょっとまってーーーー。」
「この街では昼間の検問はしないはずだ。それと文句は傭兵ギルドに言ってくれ。」
「ふざけるな。」
正面にいた衛兵長っぽい人間が怒鳴り声をあげるが、止まる理由はない。むしろ相手の進路妨害だ。
「うてー。」
傷害罪も追加だな。」
「ま、まって、俺たちは。ぐわ」
見事な射撃はなぜか荷台ばかり狙っているようだけど。あとでクリーニング代も請求しよう。
「うわ、見事にな口封じですね。山賊さんほぼやられちゃってますよ。」
後部座席から様子をうかがっていたグレイスの報告も予想通りだ。
「多少の犠牲はありきですかねー。」
「いや、そこまではないだろうな。だからあんな演技して、お互いに距離をとっていたんだろ。」
荷台の後ろの方でまとめて縛られていた山賊たちと這うようにして前によっていたそれ以外。おそらくはそこがグルだったんだろう。衛兵まで巻き込むとか馬鹿なのか。馬鹿だからねー。
「ぐべ。」
「あっやべ。」
避けないからひいちゃったよ衛兵長っぽい人。」
「ひ、引け―、引け――。こいつ正気じゃないぞ。」
「失礼だなー。」
これはの凶行ではない。魔導車や馬車は流通の基本である。そのため一般的な道でも人間よりも車が優先されるし、車専用の道に置いては進路を塞いでいる方が悪い。
「いいんですかー?」
「ああ、正当な理由がないのに、車を止めるのは重罪だ。特に町などの施設の入口付近ではな。」
それを決めたのはお偉いさんたちだ。この大陸では車に轢かれたほうが訴えられる。
「なんとも歪ですねー、道具はしょせん道具なのに。」
「人間さんの考えることはわかりませんねー。」
ダンジョン関係者にもわからないことだな。
「まあ、めんどくさいから適当に街に放り出して出発しちゃおうね。」
ボタン一つで荷車の中身は放り出せる。てか、やってしまおう。
「ぎゃああああああ。」
ちなみに勢いよく放り出すので、めっちゃ痛いぞ。
「グレイス、収納してもらっていいか。」
「了解。」
中身を放り出し、アイテム袋に収納する、全部車の中からできる仕様になっている。
「って、まって、なんだあいつら。」
街の門をくぐり、車道に従って街の中央にでる。これもまた混雑を避けるためのマナーなのだが。
「とまれー、犯罪者め。」
「スパイクを設置しろ、防壁もだ。急げ、やつらを逃がすな。」
街の大動脈、それも心臓にあたる中央広場には、100を超える兵士と物々しいバリケードが設置され通行が止められていた。
「ええ、メンドクサイ。」
見れば放り出された商人や傭兵がその集団に向かって逃げていた。
「シラーケさま来てくださったんですね。」
彼らの顔には明らかに希望の色があった。だめだろ、そんなことしたらグルってバレちゃうぞ。
「きさまあああ、シラーケ様の御前である。即座に停車して、土下座せぬかー。」
偉そうかつデカい声でこちらに指示をだす男は、それなりの大男だ。装備もかなり立派。山賊や衛兵ではなく、かなりの地位のやつだろう。
「仕方ない。」
「あれー、止まるんですか。」
「強硬してもいいけど、汚れそうだし。」
スパイクやバリケード、なんなら兵士達を薙ぎ払ってもこの魔導車には傷一つつかないだろう。その上で、社会的なルールで俺が罪に問われることもない。
だけどさあ。
「血糊ってさあ、落ちにくいんじゃん。」
「確かに。」
というわけで、集団の先頭、ブサイクな神輿の前で俺は車を止める。
「とまったなー、さあ、降りろ。」
「やだ。」
うっさい兵士に石を投げて黙らせたところで、車から降りる気はない。
「なにか用か、急いでいるんだが。」
運転席から顔をだして、ブサイクな神輿に乗っているブサイクに声をかける。
「ぐふふふ、不敬だな傭兵、わしを知らんと見える。」
豚に知り合い、いやこの例えはぶたにも失礼だな。
太ってダルダルになった皮膚にブクブクと太った身体。無駄に豪華な服で着飾っているので無駄にでかい。肉がつまっているの、ぐふふふと笑う上に、くぐもった声。何より欲にまみれた汚い視線。ゴミだってもう少しまともな姿をしていそうなものだが・・・。
「ヨワールとミカーケが世話になったようだな、傭兵。」
だれ?まったく記憶にないんだけど。
「キョーエイ国が真なる王子にして、次期王、「シラーケ」である。傭兵ゼムド、我がだれかわかったなら、今すぐ降りて、許しを請え。」
いや、まじで誰?
こんな気持ち悪くてインパクトがある存在なんて、みたら忘れないと思うんだけど。
真面目に思い出せないだけど。
ゼムド「俺の前に立つのが悪い。」
キアリー「極悪人だー。」
シラーケ「ふふふ、真打登場だ。」
一同「マジでだれ?」
キョーエイ国や、ヨワール、ミカーケについては、最初のころのお話を参考にしてください。作者も割と忘れてました。




