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33 拝金主義者 野営をする。

 内容が多くなり、遅れて申し訳ない。

 旅は道連れー世は金なり。

 快適なドライブで山を越えはすぐに終わり、次の目的であるサナダの街への街道に入ったところで俺たちは車とを止めて野営をすることにした。

「街まで一気に行かないんですかー?」

「ここからだと中途半場になるんだよ。」

 防衛のために各々街の門は夜にはしまる。最高速でかっ飛ばせば間に合わないこともないが、それをすると目立つ。圧倒的に目立つ。

「爪を隠すのも大変ですねー。」

 肩にのってあくびをしながらエーフィがそんなことをのたまう。目立つことで余計なトラブルを招くことをこの小動物はよくわかっているのだろう。

「ちなみにだがこの辺りは幻惑系を使うタイプの魔物がでてくるが、まあ大丈夫だな。」

 たき火の準備をしながら注意事項を言おうとしてやめる。うん、このメンツなら問題ないな。

「幻惑系ですか、ファントムバタフライとか、パラライズスピアとかですか?」

「そんな化物がでる場所で、野営なんかできるか?」

 さらっとダンジョンの奥地にいる上位魔物を例にだすエーフィに突っ込む。

 ファントムバタフライは、鱗粉で無数の分身を生み出しつつ幻惑作用のある毒を操る厄介な魔物で、パラライズスピアは麻痺毒で相手の動きを止めて生きたまま食らう災害級の化物だ。

「せいぜいスマイルトードと、フラリナナフシとかだな。」

 言いながら近くの木に薪を投げると、数本の枝がざわざわと揺れて逃げ出していく。フラリナナフシは木の枝に擬態し不用意に接触した敵に毒液を吐く厄介な魔物で、スマイルトードは人の笑顔のような模様を背中に持ったカエルだ。

 どちらも臆病な魔物で近づかなければ危険はない。が

「大丈夫だと思うが、車と火のそばからは極力離れないように。」

「「はーーい。」」

 ちゃんと注意しておかないと何をするかわからないんだよな、この二人。


 急ぎの旅ならば携帯食をかじりながら車を走らせればいいが、野営をするならば温かいものを食べたい。たき火に鍋を置き、乾燥野菜と道中で狩ったケモノの肉を放りこんでグツグツと煮込む。具材が柔らかくなったらルーを投げ入れてさらに煮立たせる。買い駄目しておいたパンを鍋の蓋に置いて温め直せば、なんちゃってカレーの出来上がりである。

「いい匂いですねー。」

「これは数種類のスパイスを配合したものでしょうか、実に奥深い香りです。」

 魔族は基本的に食事を必要としない。彼らの栄養素はダルと魔力だ。彼らで言うところの食事は嗜好品であり、体内でダルに変換されるという。

「カレーは一般的な野営食だな。火があればなんとかなるが、匂いが強いから場所によっては魔物を引き寄せてしまう危険がある。」

 よそいながら説明するのは、自慢ではなく、キアリーさんが興味を持っているからだ。ダンジョンから出たことのない彼女にとってはどれもこれも珍しく、その理屈に興味をもつので説明するのがすっかり癖になったのだ。

「なるほーど、このあたりは臆病な子が多いから匂いが強くても安心なんですね。」

「むしろ、人間さんの存在を示す、たき火やにおいで遠ざかっているように思います。」

 まったくもってその通り。基本的に魔物は明かりに集まる習性があるが、人間の気配が強い場所には寄り付かないことが多い。だからこそこうしてたき火をすることで夜の安全を確保することができる。

「盗賊とか知恵のあるやつがいるときは、逆効果だけどね。」

 盗賊からすれば、獲物の存在を示すものだ。だが、このあたりに山賊はない。月見のトンネルとサナダの周辺は幻惑系の魔物が多く潜伏するには危険だし、傭兵の往来も多い。狩場としてはハイリスクローリターンだ。

「そもそもサナダの街は結界魔法が優秀でな、危険な魔物は寄り付かないんだ。」 

「・・・確かに不思議な力を感じますねー。」

「だろ。」

 サナダの街へと続く街道には魔除けの結界が付与されているという。それは山越えで疲弊した旅人が少しでも安全に過ごせるようにと創設以来続いている街の名物らしい。

 だからほとんどの旅人は無理を通して、サナダの街の安全圏まで進んでしまい、この辺りで野営する人間は少ない。後ろ暗いことはないが、見られると面倒なことが多い俺たちからすると、ありがたい話だ。

「はふ、はふ、これ美味しいですねー。」

「野菜がとけこんでいますね、乾燥させているからこそしみ込みやすいんでしょうね。お肉も新鮮でいいかんじです。」

「「おかわり。」」

「うん、君たちは食い気だよね。」

 空腹もない代わりに満腹もないからな、こいつら。

 廃棄寸前の買い叩き野菜と狩った肉だからコストは低いからいいけど。むしろ経費は無効持ちで、アイテム袋で塩漬けになっていた食材が片付いていくので助かっているけど。

「ほどほどにな。」

 大なべのカレーの中身が飲み物のように消費されていく様子は、見ていてヒヤヒヤするのは貧乏性なゆえだ。街が近いからいいが、どうにも心臓に悪い。

「「おかわり。」」

「いや、まじで少しは遠慮しろ。俺まだ食ってないから。」

 なんとも騒がしい夕餉。傭兵としては間違っているような気がする。 

お金は大事。だがら騙すような奴は容赦しないゼムドさんの次の行動は・・・

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