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3 拝金主義者 王子から取り立てる。

 借りた金は返さないと、契約は守らないと

 さてここでダンジョンについて改めて話しておこう。

 そもそもこの世界には魔領域と地域が存在する。自然界の魔素が濃く植物や自然が活性化しやすく人間には危険な地域である。そこには魔物や魔族と呼ばれる存在が生活しており人間たちにとっては危険な領域だ。だが、人々は魔領域に足を踏み入れる。それは魔素の結晶鉱石であるダルを入手するためだ。魔素は魔物や魔族、あるいは地形などで凝縮し結晶となりそれは純粋なエネルギー源となり今では通貨として流通している。ダルが人類、魔族双方にとっても重要な資源なのだ。

 そして、ダルを効率的に採掘するために整えられた地形というのがダンジョンである。人為的あるいは超自然的にできた魔素の吹き溜まりを囲い管理する魔族と採掘を担う人間という構図が生まれたのは何千年も前と言われている。

「まあ、そういうのは魔族側の理屈なんですよねー。」

 キアラ―さんの言葉にうなづきながら俺は階段をずんずん登っていく。

「人間さんたちの中には魔族は世界を簒奪したアクマで、ダンジョンはその牙城だっていうの話もあるらしいな。」

 おそらくはヨワールの国はそういう情弱の国なんだろう。王位継承の条件がダンジョン攻略ってなんじゃそれって感じだ。

「でもでも、間違ってないといえば、間違ってないですよ、なんだかんだ、人間さんの死因第一はダンジョンだと思いますし。」

「いやいや、それはないから。」

 かなり先を歩いているキアリーさんに俺は訂正する。そもそも物騒なダンジョンにわざわざ行く必要はないし、病気とか飢えで死んでいる人のほうが多いはずだ。ダンジョンに挑んだ場合の生存率の低さは認めるけど。

「そーなんですか、マスターが自慢げに言っていたのでそうなのかなって?」

 なにゆえに魔族がダンジョンを管理しているのかは正直理解できないことが多い。だが人間の多くにとってはダンジョンは宝の山だ。だからいろいろと理由を付けてダンジョンに挑み、その多くは命を散らしている。俺自身、キアリーさんがいなかったら死んでいたわけだしな。

「まあ、マスターの命令だったので。」

「どっちでもいい借りは返す。差し当たっては無礼者を駆除する。」

 どうぞとキアリーさんが譲ってくれた道を駆け出し、目の前の扉を蹴破る様に中に入る。

「ヨワール君、取り立てでーーーす。」

 努めて明るくそれでいて躊躇なく扉を蹴破り。中に立っている4人の前に立つ。

「な、お前。ぐべ。」

 呆然と立っていたヨワールの顔面にまずは一発叩き込み壁際まで転がす。

「よ、ヨワール様、おのれー。」

 激昂して剣を抜こうとするミカゲだが、腹にワンパンで沈む。

「ダンジョンの中で悠長に武器をしまってんじゃねえよ。」

 体力さえ回復すればこいつら相手に武器すら必要ない。しかしあれだ、こいつら下水より臭い。

「ひ、っひいいいい。」

 と思ったら一連のやり取りで女どもが漏らしていた。なんなら壁際で並ぶ奴らの下腹部もなんだか湿っている。前者は恐怖で、後者は殴られたショックで漏らしたらしい。なんだというのだこいつら。

「ああ、なんでも前祝いだーってここで酒盛りをしていたみたいですよー。」

 扉の向こうからひょっこり顔だしたキアリーさんが説明してくれて、俺はがっくりと肩を落とした。

「何考えてんだ、ラスボスの手前で酒を飲むとか、正気を疑うぞ。」

 戦いの前に満腹になるやつはいない。動きが遅くなるしちょっとした攻撃が致命的になるからだ。だからダンジョンに入る前に満腹にならないように、こいつらに注意したのは俺だが、まさかこんなところで酒盛りをするか普通?

「う、ぐえ。」

「まあ、死なない程度には加減したからな。動けるだろヨワール、寝たふりしてんじゃねえぞ。」

 近づいて転がせばよろよろとヨワールは這いずって距離を取ろうとするが俺はその前にしゃがみ込む。

「ダンジョンのペナルティーを食らって死んでなくて安心したぞ。」

「ぺ、ペナルティー。」

 あきれた、そんなことも知らずに来たのかこの馬鹿、いや送り出したのか国は?

「ダンジョンにはそれぞれルールが存在する。このダンジョンのルールはシンプル。各ボスとの戦ったものだけが最深部に行けるだ。」

「はっえ?」

「お前ら一ミリだって戦ってないだろ。だからこのままダンジョンマスターに会ったら即リタイア。たぶんペナルティーで殺されてたな。」

「ひいいい。」

 ごんと拳とともに事実を教えてやれば四人が四人とも震え上がる。そりゃそうだ。こんな兵糧も知恵も必要なく腕力だけでどうにかなるダンジョンで同じことを考えない奴がほかにいないわけがないだろうに。

「だ、だずけて。」

 痛みで涙をだらだらろ流す一同だが、正直臭い。いや、臭いのは俺もか。

「とりあえず返してもらうぞ。」

 俺はヨワール残しに結び付けてあった革袋を取り出し、欠片ダルを取り出す。

「金利発動。」

『スキル「金利」の発動を確認しました、御用件をお申し付けください。』

「預金と引き出しだ。確か消臭効果ってあったよな。」

『はい、指定フロワーの消臭ですと30万ダルが必要です。」

「まじかよ、どんだけ臭いんだここ。」

『実行しますか。』

「ああ、次いでに100万ダル預金だ。」

『了解です、預金と引き出し、消臭効果を発動します。終始を含め預金は100万ダルとなります。』

 途端に青白い煙が部屋の中に広がり、晴れる頃には匂いがなくなりさわやかな香りが残る。

「おお、すごい匂いがさわやかになりましたね。」

「キアリーさん、とりあえずさっきの返すな。」

 若干軽くなった袋から白ダルをだして俺はキアリーさんに渡す。

「ええ、ちょっと多すぎじゃないですか?」

「いや、さっきの欠片ダルはこれぐらいの価値があったからな。」

 今回稼いだ分も含めてかなり財布は軽くなったが命あってのものだねだ。百倍返しならダルでも充分なのだが、そのあたりは俺の気持ちだ。

「うーーん、もうかってしまいましたね。」

「まああれだ。何か頼みがあればそっちも引き受ける。そういう契約だったからな。」

「律儀な人ですねー。」

 契約は大事、契約を守るのは信用につながるし、信用がなければ仕事はもらえない。

「だからな、ヨワール。公式に契約したことを反故にしようとしたり、一時的とはいえ俺の財産に手をだしたんだ、これは高くつくぞ。たしか200万ダルだったよな成功報酬。」

 再びヨワールに近づき、その襟首をつかんで持ち上げる。

「わ、わるかった。俺がわるかったから。」

「謝罪はいい、それよりも報酬はどうなるかと聞いてるんだ。まさかと思うけど踏み倒す気じゃなかったろうな。」

「ひょ、ひょれは。」

 ああ、踏み倒す気でしたかー。まあ公式の契約だから王家に取り立てれれば問題ないな。

「そ、そこまでだ、ヨワール様を放せ。」

「あっ、ゼムドさんすいません。」

 振り返るとミカゲのバカがキアリーさんに対してナイフを突きつけて俺を睨んでいた。

「ヨワール様を解放しろ。」

「いいぞ。」

 おれはあさりとヨワールを手放し。どうしたものかとミカゲを見る。せめてはキアリーさんの動きを止めた状態で脅せバいいものを。へっぴり腰でナイフを構えてキアリーさんの近くにたっているだけだ。

「困りました。レプラコーンに戦闘能力ってないんですよねー。」

「ああ、うん。そこは期待しなくていいよ。」

 実際どうしたらいいんだろう。この脅しにもならない脅し、せめて腰が抜けて動けない女性陣にも何か指示を出せよ。

「ははは、ゼムド、形成逆転。ぐが。」

 まずはうるさいのでヨワールを蹴飛ばし。

「なっきさ。うぼらああ。」

 一呼吸でミカゲの顔面に拳を叩き込む。こいつら、数分前にワンパンされたことをわすれてないか? 

「わあ、お見事です。」

「うん、俺が言うのもあれだけど、もう少し緊張感を持てない。」

「いやーだってゼムドさんの強さは知ってましたし。」

 のほほんと緊張感のないキアリーさんに俺は脱力をする。

「まあいいや、もう少し待っててくれ。」

 そういって再び欠片ダルを取り出しスキルを発動する。

『スキル「金利」の発動を確認しました、御用件をお申し付けください。』

「引き出しと貸し付けだ。こいつらのケガを治せ。」

〚資産します、フロアーにいる四人の治癒には20万ダルかかります。』

「かまわん、費用は貸し付けの金額に上乗せしろ。基本はこの契約だ。」

 懐から取り出すのは公式に発布されて契約書。試練の塔の攻略に協力しその成果に関らず500万ダルというもの。これは国家レベルの契約書で信用度は確かだ。

〚条件を確認しました。なお条文条項により契約者ヨワール様とパーティメンバーの貸し付け額は1200万ダルとなります。』

「まあ、そんなもんか?」

〚取り立てが非常に困難な可能性がありますが、よろしいですか?』

「かまわん、保証欄は国になっているな。」

〚確認が終了しました。では引き出しと同時に各所への通知を行います。』

 そしてあふれる同じの黄金の光、やむころには四人のケガ(ヨワールとミカゲだけだけど)の傷はいえる。

「な、なんだ。今のは。」

「治療だ。治療費も請求させてもらうけどな。」

 新たに生まれたスクロールを手に取り、契約の更新を確認して俺はヨワールに渡す。

「1200万ダルだと、ふざけるな。払えるわけがない。」

「払うんじゃなくて、取り立てだ。契約を反故するなら、ペナルティーな。」

 俺のスキルはこの世界の金融システムとリンクしている。公式の契約の更新もできれば各所に通知することもできる。今頃はヨワールの国の上層部が腰を抜かしている頃だろう。

「これは公式の契約だ。契約を踏み倒せると思うなよ。」

 がっくりと膝をつくヨワール。まあこういうバカなカモだから依頼を受けたわけだけども。ここまで馬鹿だとは思わなかった。回復に使ったダルや消費したアイテムや武器のせいで収支はぎり黒字といったところだ。

「ふ、ふざけるな。こんなの払えるわけないだろ。」

 収支計算をしていたら、急にヨワールは激昂してスクロールを破く。ああ、やちゃった。

「契約の反故、ペナルティーで請求額が倍になった。

「このやろう。殺してやる。」

 がむしゃらにヨワールは俺に向かってとびかかるが俺はもうよけることすらしない。

「この。」

 持っているのは先ほど使われたパラライズソード。今の俺なら痛くもかゆくもないがそもそも。

『強制徴収として装備品を回収します。』

 どこからともなく聞こえるシステム音声とともに、ヨワールのパラライズソードが消える。なんなら装備一式も来て肌着だけが残される。

「えっ。」「きゃあああ。」

 残りの3人も同様だ。強制徴収。契約を反故する不良債権者には世界のシステムから制裁がくわえられる。

「な、なんだこれは。」

 盛り上がっていた筋肉もうつくしかた美貌も今となっては跡形もない。アイテムによるドーピングもアイテムもなければろくに鍛えていない素人だ。

『資産完了、200万ダル分の徴収が完了しました。』

「4人で200万って相変わらず査定が厳しいねー。」

 まず強制徴収されたアイテムや装備はその価値の10分の1の価値にしかならない。しめて2000万ダル分の装備がゴミとなったわけだ。

「な、なんだ。これは。知らない、知らないぞ。」

「世の中は金を中心に回ってるんだ。それを誤魔化そうなんて甘いんだよ。」

 そういって俺はヨワールにデコピンをする。拳でなぐっらた殺しかねない。

「ぐあ。」

 ついで残りの3人にも同じようにデコピンをして気絶させる。なんか女性陣がいろいろ言っていたけど基本は無視。

「うわ、えげつない。まるで魔族ですね。」

「いや、キアリーさんがそれを言う?」

 伸びた四人を見ながら感心するキアリーさんの顔がなんとも印象深かった。

スキル「金利」 

預金   手もちのダルを預金として預けることができる。スキル発動中ならどこでも引き出せる。

引き出し ダルを引き出す。必要に応じて回復やバフなどの効果にも変換が可能。

貸し出し 契約などをもとに対象のダルを貸し出すことができる。借り受けた相手は返済するまで契約を遵守しなくてはならず、反故した場合は強制的に徴収が行われる。

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