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23 拝金主義者 「壊群」のダンジョンへ挑む2 第3層

 サクサク攻略3層目

 さて、「壊郡」のダンジョンは建築資材として優秀なビルドブロック、そして調理しだいで美味しくなるダンジョンラビットのウサギ肉が有名だ。駆け出しの傭兵や商人お抱えの採掘屋は第一階層と第二階層を周回してそれらのドロップを持ち帰り、その収益でダンジョン周辺は潤っている。

 だが、第三層になるとその雰囲気は一変する。苔むした石造りの壁ではなく、地面を直接掘りぬいたような壁にびっしりと這えたツタ。そしてこちらをうかがう。

「ダンジョンスパイダー、結構な数ですねー。」

「ああ、ここからが本番、探知スキルがないと一瞬だって気が抜けない。」

 茶色の壁に隠れるように存在する無数の視線。それらに目を凝らせばそれは馬ほどのサイズの蜘蛛だった。とげとげの8本足にスコップのようなあご、地面を掘り巣をつくり獲物を誘い込む蜘蛛型魔物。第三層はこいつらの巣窟なのだ。

「ちなみにドロップするのはダンジョンスパイダーのあごで、これまたスコップや農具に加工すると長持ちする高級品になる。」

「なるほど、厄介なだけじゃないんですねー。」

「まあ、クモ自体は厄介じゃないけどね。」

 厄介なのは、ダンジョンスパイダーの習性によって日々変化するダンジョンの構造だろう。隙あらば穴を掘って、埋めるを繰り返えすダンジョンスパイダーたちによって奥へと進むほど複雑になり、過去のマッピングは当てにならない。

「だから潜っても三層の入口付近まで、4層以下まで進んだやつがここ数年以内らしい。」

「その数年前がゼムドさんたちなんですよね。」

「うん、まあね。」

 リーに付き合わされて第七層の見学会に参加したことが懐かしい。まあ結果として今に役立っているのだから世の中わからないものである。

 と言いながら基本的に攻略は変わらない。過去の地図を頼りに大まかな方角を決めて蜘蛛たちの縄張りに触れないようにルートを変えながら慎重に進む。避けられない戦闘は奇襲を主にして仲間を呼ばれる前に無力化する。なんだかんだ武器商人のパパからもらったボーガンがここで大活躍だ。

「なんというか、あれですね?」

「地味?」

「はい、そう感じます。」

「まあ、ここは長いからね、試練の塔のように休憩ポイントがあるわけじゃないから。体力は温存しないと。」

 落ちた矢とドロップ品を拾いながらキアリーさんに肩をすくめてみせる。派手な戦闘が嫌いなわけではないが、こんな場所でそれをすればあっという間に蜘蛛に囲まれて方角を見失ってしまう。

「言いながら、キアリーさんも楽しんでない。」

「ふふ、このボーガンというのはいいですね。非力な私でも簡単に魔物を狩れます。」

 言いながらノリノリでボーガンを構えるキアリーさんも楽しそうだ。それでいて警戒していない蜘蛛の頭を確実に射貫いているのだからほんと目がいい。俺一人だと対処しずらい場面も手数が多いので安全だ。

 ちなみにダンジョンスパイダーはかなり鈍重だ。近づかれると顎は足のとげが危険だが、動いてない状態で柔らかい頭部をボーガンで撃ち抜けば簡単に倒せる。

 以前の攻略のときは、力押しで次々に倒してえらい目にあったが、俺も成長したものだ。

「これならルートを変えても大丈夫そうだ。」

 想定していた安全優先のルートから接敵が想定されるルートを再設定してルート考える。

「というわけで、よろしく。」

「はい。」

 方針を伝えてキアリーさん頼み。ここに来てそれに躊躇いもなくなっている。うんキアリーさんが優秀すぎて居なくなったときがつらい。

「矢は惜しまなくていいよ、この階層でしか使わないから。」

「おー、はりきっていきましょう。」

 勢いづけばそれまで、流れに乗ってしまえば第三階層はむしろ短時間で攻略が可能だった。

 まあ、一歩間違えれば即アウトな綱渡りだったけど、そこは傭兵の性だ。

「まあ、最初二つの回想はゲスト迎えるための接待的なフロアーですので。うちもそうでしたよ。」

「あれで、普通に死にかけたよ。」

「だから、最初の二つの担当は人気がないんですよー。全然本気が出せないって。」

 人間には想像もつかない次元の話だなと思いつつ。やっぱり試練の塔のやばさだけがやばい。

 それを攻略したからだろうか、不思議とこのダンジョンに脅威を感じなかった。うん危ない、気を引閉めてかからないと次の階層でリタイアしてしまう。

 改めて気を引き締めつつもあまりにもサクサクな攻略に俺は苦笑するのだった。


 キアリーさんがか弱い設定だったはずなのに、どんどんノリノリになっていることが悩ましい今日この頃

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